海底地震計を利用したレシーバ関数解析
レシーバ関数解析とは、遠くで起こった地震のP波波形データから、モホ面やプレート境界面に由来するPs変換波の情報を抽出するための信号処理技術です。この手法は1970年代にはすでに確立され、現在は陸上の地震計で記録された波形データに対して広く使われています。しかし、海底地震計の波形データには特有の難しさがあり、レシーバ関数解析はあまり行われてきませんでした。海底地震計のデータで正しくレシーバ関数解析を行うための手法開発を進めています。
OBS上下動成分に現れる海面多重反射波
海底地震計(OBS)で記録された遠地P波の上下動成分には、陸上観測点と異なり、海面と海底面で多重に反射される波が記録されます。このような海面多重反射波がノイズとして上下動成分記録に混入してしまうと、レシーバ関数が正しく計算することが難しくなります。図1の上から4つの波形は、紀伊半島沖に設置された海底地震計4台で捉えた遠地地震波形です。一番下の段は、同じ地震について、日本の陸上で観測された記録を足し合わせた波形です。両者を比較すると、海底地震計の記録では、赤い三角で指し示された時刻に、顕著な海面反射波が到達していることがわかります。
図1: 海底地震計で記録された遠地地震波形
海面多重反射波を除去するフィルターの開発
海面多重反射波は、いくつかの仮定を挟むことで、数学的には単純な形で表現することができます。ここで言う単純とは、必要な変数の数が少ないことを指しています。図2に、実際の式の形を示していますが、実際に用いる変数はたったの2つで済んでいます。1つ目は海底面におけるP波の反射効率、2つ目はP波が海水中を往復するのにかかる時間です。この数式は、海面多重反射波を疑似的に再現するためのフィルターと解釈してもよいでしょう。反対に、海底地震計の記録から、このフィルターを取り除くことで、海面多重反射波の影響を取り除いた波形を生成できます。
参考文献: Akuhara, T., and K. Mochizuki (2015), Hydrous state of the subducting Philippine Sea plate inferred from receiver function image using onshore and offshore data, J. Geophys. Res. Solid Earth, 120(12), 8461–8477, doi:10.1002/2015JB012336。
図2: 海面多重反射波を表す数式
海面多重反射波の影響を取り除いたレシーバ関数
遠地P波の上下動成分から、上で説明した方法で海面多重反射を取り除くと、レシーバ関数を正しく計算することができるようになります。このことを、コンピュータ上の数値実験によって確かめました。図3では、コンピュータ上で再現した海底地震計のデータについて、従来の手法でレシーバ関数を計算した場合(灰色の線)と、海面多重反射波を取り除いて計算した場合(赤色の線)を比較しています。青色の縦線は、理論的に予想される変換波や反射波の到達時刻を示しています。新しい手法で計算された赤色の線は、青線の時刻に対応する波形のピークを再現できています。一方、従来の手法(灰色の線)では、うまく再現できていません。新しい手法の有用性が分かります。
参考文献: Akuhara, T., K. Mochizuki, H. Kawakatsu, and N. Takeuchi (2016), Non-linear waveform analysis for water-layer response and its application to high-frequency receiver function analysis using OBS array, Geophys. J. Int., 206(3), 1914–1920, doi:10.1093/gji/ggw253。
図3: レシーバ関数の数値実験
謝辞
本研究はJSPS科研費 JP14J10221の助成を受けたものです。