人工知能と自然知能の対話・協働による地震研究の新展開 | SYNTHA-Seis

PROJECTプロジェクト概要

人の目と脳で深化を進めてきた地震学。
その長い歴史の中、AIによって進化が加速する。

SYNTHA-Seisプロジェクトの概要

 今世紀初頭に始まった現在の第三次人工知能ブームは、いまだに止まるところを知らず、人間社会および生活様式を一変しつつあります。特に、定められたルールの下で明確な目的を達成する場合において人工知能は大きな威力を発揮し、地震分野においても深層学習による地震波形データからのP 波やS 波の検出能力は、時に経験豊かな地震学者の目を上回ることもしばしばです。しかしながら、地震研究において取り扱う地球内部起源の振動現象には、通常の地震以外にも多種多様なものが混在しており、それらを分類しながら検出する人工知能技術は、まだ確立されたとはいえません。例えば、現在の地震学におけるホットトピックであるスロー地震研究では、観測限界に近い規模の小さな深部低周波微動(以下「微動」という)までを対象としており、通常の地震やノイズ等も含まれる観測データから微動を網羅的に検出するための人工知能技術の構築が喫緊の課題となっています。一方、地震研究においては現象の検出だけではなく、検出された現象の情報に基づく地震活動の時空間分布や地球内部構造等のモデリングにより、地震の発生環境や発生メカニズムの解明を目指すことが地震防災・減災の観点からも重要です。この地震学におけるモデリングでは、「自然知能」と言うべき人間の頭脳によるところがまだ大きく、人工知能が自然知能を凌駕するまでにはまったく至っていません。これは、現在の人工知能は人間が理解可能となるように思考過程を示すことができず、得られたモデルの妥当性の検証やそれに基づくモデルの更新が困難であることが大きな要因であり、長期間にわたり自然知能によって蓄積されてきたモデリングのノウハウが人工知能に取って代わるまでには、まだ相当の時間を要するものと思われます。そのため、人工知能に基づくモデリング手法の開発と同時に、自然知能に基づく従来のモデリング技術の高度化も重要であり、両者を常に比較検討していくことが地震研究に新たな展開をもたらすでしょう。
 東京大学地震研究所が中核機関として実施する本プロジェクトでは、「人工知能と自然知能の対話と協働」をテーマに、人工知能と経験者の目による地震・微動検出手法の深化、および人工知能と自然知能による地震モデリング手法の共進化をねらい、地震研究の新展開と地震防災に貢献します。また、参画者全員が大学の教員であることを活かし、講義やセミナーを通じた国民への「情報×地震」の啓発活動、ならびに本分野の将来を担う若手研究者の発掘と育成にも力を注いでいきます。

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