鯰絵紹介
鯰絵について
日本列島のような地震多発地帯には、大地を支えている動物が身動きすると地震が起きるという内容を持つ神話や信仰が多くある。日本にも仏教の影響を受けて同じような考え方があり、遅くとも鎌倉時代のはじめには、日本は巨大な龍に取り囲まれているとされており、その龍が動くことで地震が起こると考えられていた。江戸時代のはじめになると、地震を起こす原因は地中にいる鯰へと変化し、鯰は姿形が目に見えない地震を表現するものとして用いられた。
安政江戸地震の際に、地震鯰と鹿島大明神の俗説を題材として描かれた鯰絵が江戸市中に出回った。この鯰絵は無許可で発行されており、地震発生から約2ヶ月後には幕府によって発売禁止となった。その期間に出回った鯰絵には、地震直後は地震の鎮静化を期待して、鹿島大明神が地震鯰をおさえ込んでいる鯰絵などがあるが、江戸市中で再建工事が始まると、一時的に復興景気が生じて地震鯰は世直し鯰として描かれている。
鯰絵紹介(画像をクリックで拡大されます)
-
しんよし原大なまづゆらひ
新吉原は地震とその後の火災によって甚大な被害を受けて、遊女や客に数多くの犠牲者が出た。そのため、遊女たちは地震の原因とされた大鯰に乗って懲らしめているが、大鯰は遊女に乗られて喜んでいる。地震後に復興景気の恩恵を受けている職人や鳶たちは、懲らしめている人々を止めに入ろうとしている。
東京大学地震研究所図書室特別資料データベースレコードID:L000512 -
あら嬉し大安日にゆり直す
今回地震を起こした大鯰がこれ以上地震を起こさないように、鹿島大明神が大鯰を要石でもっておさえつけている。その前には,これまで地震を起こしてきた鯰たちが、もう地震を起こさないと謝罪している。
東京大学地震研究所図書室特別資料データベースレコードID:L000505 -
江戸鯰と信州鯰
安政江戸地震を表す「江戸」と1847年に発生して長野で甚大な被害を生じた善光寺地震を表す「信州」の2匹の大鯰が、地震で被災した人々に懲らしめられている。その一方で,地震後の復興景気で儲かった職人たちは、懲らしめている人々をなだめている。右上にはこの騒動に駆け付ける鹿島大明神が描かれている。
東京大学地震研究所図書室特別資料データベースレコードID:L000513 -
鯰をおさえる恵比寿
安政江戸地震が発生した10月は神無月で、神々は出雲へ出かけており、留守を預かる恵比寿が瓢箪でもって、地震を起こした鯰をおさえようとしている。鯰の頭は丸くヌルヌルしており、瓢箪の底は丸くツルツルしている。さて、これで本当に地震鯰をおさえることはできるのだろうか。
東京大学地震研究所図書室特別資料データベースレコードID:L000504
資料はすべて東京大学地震研究所所蔵
※このWebサイトは2017年の東京大学地震研究所一般公開で展示した“地震研究所図書室所蔵資料展示 大江戸の大地を揺るがす地震鯰”を基に作成しました。
出版物等に画像の掲載を希望される場合は当研究所への申請手続きが必要です。詳しくはこちらをご覧ください。
東京大学地震研究所図書室
113-0032 東京都文京区弥生1-1-1
Tel: 03-5841-5669
Fax: 03-5800-3859
Mail: sanko@eri.u-tokyo.ac.jp(@は半角)