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Hiraga Lab, Division of Earth and Planetary Materials Science, Earthquake Research Institute,The University of Tokyo

東京大学 東大 toudai東京大学地震研究所

〒113-0032 東京都文京区弥生1-1-1

研究内容RESEARCH

平賀研


仲小路(ナカコウジ)必死に出してくる高温変形実験の結果が変であった。低応力側で応力指数が有意に1を超え、80 MPaあたりの高応力になってくると1を取り始めるのである。低応力では応力と歪速度の関係が線形である拡散クリープ、高応力ではベキの関係になる転位クリープが頭にある(凡庸な)指導者は、何度も実験のダメ出しをしてしまった。それでも、仲小路は毎週のラボミで執拗に同じような新データを発表し続けた。これは「マジ」かも、そうラボのメンバーが認め始めた頃であろう、過去のセラミックス・金属材料の高温変形特性の研究成果を改めて見直し、そこでようやく低応力におけるベキ乗クリープの一般性に気付いたのである。仲本工事じゃなくて仲小路よ、疑って本当に悪かった。 低応力ベキ乗クリープは、界面反応拡散クリープとも呼ばれ、粒界・界面での空孔生成・吸収速度が変形を律速するメカニズムと考えられている。低応力に加えて、粒径が小さいことがその出現条件。そういえば、である。Tasaka(JGR 2013)でのオリビン+輝石系の実験において、輝石分率の多い試料の変形実験結果において、どういうわけか、応力指数が1.4、粒径指数も2という「変」だけどロバストな結果を得ていた。オリビン超塑性の発見論文(Hiraga et al. 2010 Nature)論文でも、応力指数2に近い値を報告していた。実験結果は確かだけど、理論モデルも確かだけど、たまには両者が合わねーこともあるんでね、とゴニャゴニャ誤魔化していた。輝石が多いと、粒界ピンニングの効果で粒成長が阻害され、輝石の少ない試料と比べて粒径が小さくなる。超塑性も、粒径が小さいとよく伸びるということで、試料中の粒径を小さくする努力をしていた。粒径効果により界面反応クリープが発現したと考えると、測定された応力指数や粒径指数がよく説明できる。その後、谷部の鉄入りオリビンでの詳細なる研究(Yabe et al. 2020 JGR)により、オリビンの界面反応クリープの存在は確実になった。 界面反応クリープが発現することで、拡散クリープから期待される低応力・粒径小での歪速度と比べより遅くなる。計算してみると、界面反応クリープの発現は、マントル流動においては、かなり稀な条件を満たした場合のみであることがわかった(これもこれで、面白い分野が控えているのだけど)。しかし、室内実験では、粒径の小さい試料を用いることが普通であり、実験条件では、界面反応クリープの発現は容易に満たされてしまう。これまで長らく(30年以上)、世界中で多くの物質・人材が投資され続けたオリビンの変形特性研究に、まさか(未知の)変形メカニズムが残されているとは思いもよらなんだ。加えて、ベキ乗クリープ=転位クリープと教科書的知識以上の勉強を怠ったことが、その発見を遅らせてしまった。(できの悪い指導教官に対峙した)仲本工事じゃなかった仲小路(+谷部)の真摯な研究姿勢がそれを打開した。

将来テーマ
コアから地殻まで、地質学、岩石学、鉱物学、鉱物岩石物理学、地球化学、地震学的なもの多々あるので、興味があれば是非聞いてください。


バナースペース

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〒113-0032
東京都文京区弥生1-1-1
東京大学地震研究所2号館
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