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Hiraga Lab, Division of Earth and Planetary Materials Science, Earthquake Research Institute,The University of Tokyo

東京大学 東大 toudai東京大学地震研究所

〒113-0032 東京都文京区弥生1-1-1

研究内容RESEARCH

平賀研

Miyazaki (2013 Nature)が世に出てまもなく、アメリカPD時代のビッグボスKohlstedtからオイオイメールが来た。彼は我々が報告したメカニカルデータを解析し、そのクリープの異常に高い活性化エネルギーを指摘したのである。もちろん、こちらはそれを知っているが、その時点ではまったくもって理由不明。論文ではその点に触れないでいた。が、ビッグボスには隠せなかったのである。ちなみに、彼、今年(2023年)地球科学のノーベル賞と呼ばれるVetlesen Medal(そんなもんあるの知らなかった)を受賞しました。この場でパチパチ。お祝いメールを送ったら、優秀なPDがいてくれたおかげだ、と実にアメリカンな返事。賞金の10分の1でいいから下さい(注:賞金3000万円!)。話が逸れた。その後、データが増えるにつれ、法則性が見えてきた。CaやAlを添加すると高い活性化エネルギーが発現し、低温では低い活性化エネルギー。同じころ、武井グループがボルネオール+ジフェニルアミンという有機物系において、高温での高い活性化エネルギー、低温での小さな活性化エネルギー、さらには高温での弾性波の大きな減衰を見出し、それらを粒界での前駆的融解現象で説明し始めていた(Yamauchi & Takei 2016 JGR)。そういえば、我々もMiyazaki (2013 Nature)で、コロコロオリビンからノビノビオリビンに変わる粒子形の相転移みたいな現象を粒界前駆的融解の結果?と議論していた。すべてが繋がる予感モリモリ状態であった。 谷部は、自分の実験結果のみならず、これまでのオリビンの拡散クリープの結果をまとめ、試料のソリダスの0.92倍までの温度では、「ふつう」のオリビン粒界拡散クリープ、その温度以上になると、高い活性化エネルギーをとる「異常」なオリビン粒界拡散クリープになることを示した。不純物モリモリの天然オリビン結晶由来の実験試料は、ソリダスが非常に低く、「ふつう」の実験では、「異常」なオリビン粒界拡散クリープを見てしまう。きれいなオリビン多結晶体で、ようやく「ふつう」のオリビン粒界拡散クリープが実験的に見えるのである。きわめて「純粋」なオリビン多結晶体から、添加物を加えて「きたない」試料まで作れる我々の試料合成技術の賜物であった。と、簡単に言うが、「純粋」な「鉄入り」オリビン試料を合成できるまで、というか谷部の異常な実験試料に対するこだわりで、実験に使ってOKと彼が納得する試料の合成まで3年かけた結果である(Yabe et al. JGR 2020)。スゴ、杉。 ドライな試料のみならず、(過去の研究での)ウエットな試料の拡散クリープ速度の結果まで、0.92倍の法則で説明できてしまった(Yabe & Hiraga JGR 2020)。すなわち、オリビンのクリープの対する水の効果は、「水」ではなく、「水」が融点降下を通して誘発した粒界前駆的融解現象(粒界無秩序化とも呼ぶ)である、という従来の「定説」を覆す内容になってしまった。これは、オリビンレオロジーに一生を捧げた先ほどのMedalistビッグボスの主張とは大きく異なる。そんなことはガン無視。彼に谷部へのAGU Graduate Research Award(アメリカ地球物理学会・岩石鉱物物理部門)への推薦文を依頼した。古き良きアメリカン、快く引き受けてくれた。見事、谷部はその年の受賞者に選ばれた(ちなみにその年は受賞者一人)。スゴ、杉。 地震研から「メルト」でも「水」でもない、新しいアセノスフェア存在理由「粒界無秩序化(粒界前駆的融解)」が提案された。山内さん(武井グループ)による見事なマントルアセノスフェア低速度の説明、オリビン拡散クリープの高速化(低粘性化)およびオリビンノビノビ形+拡散クリープによる地震波速度異方性が美しく説明される。今後の展開にこうご期待。

上部マントルリソスフェア‐アセノスフェア構造と成因モデル


将来テーマ
コアから地殻まで、地質学、岩石学、鉱物学、鉱物岩石物理学、地球化学、地震学的なもの多々あるので、興味があれば是非聞いてください。


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