本文へスキップ

Hiraga Lab, Division of Earth and Planetary Materials Science, Earthquake Research Institute,The University of Tokyo

東京大学 東大 toudai東京大学地震研究所

〒113-0032 東京都文京区弥生1-1-1

研究内容RESEARCH

平賀研

と、元応用セラミックス研究所所長・ジルコニア超塑性を世界で初めて実証した若井さんに言ったら、きょとんとされた。多相系の限りであり、それにちょっとの説明を加えたら、たちどころに理解・賛同された。素直にうれしかった。二相系の粒成長は、基本、第二相粒子のオストワルド成長である。その成長は、自由表面を持つ場合には、まさに自由に成長できる。しかし、多結晶体であると、常に周囲は粒子で囲まれており、これをどうにかする必要がある。そのどうにかが、第一相粒子の変形であり、第一相粒子の変形が岩石の変形を支配するならば、粒子成長と岩石変形は同じメカニズムに支配されるかもしれない。粒子内圧力差(界面エネルギー)に駆動された粒子変形が粒成長、外力(応力)に駆動された粒子変形がクリープ。前者は、1ミクロンで~0.5 MPaと極めて小さな値なので、拡散クリープで進行するであろう。アセノスフェアでも、その程度の応力レベルと考えられている。この2相系での粒成長とクリープが同じ拡散メカニズムで進行することを、岡本が実験的に証明した(Okamoto & Hiraga, 2022 JGR)。ここでの味噌は、フォルステライト(Mg2SiO4)+ぺリクレース(MgO)、2相系を実験に用いたことである。第二相(=少ない相)であるぺリクレースには、フォルステライトを構成するMg,Oは含まれるものの、最も拡散が遅いSiが含まれていない。クリープはフォルステライトの変形が間違いなく必要で、それはSiの拡散で律速されている。しかし、粒成長は?MgOの拡散だけでことが足りるのであれば、粒成長速度から推定される拡散係数は、クリープより格段に大きくなるであろう。粒成長にフォルステライトの変形が必要であれば、粒成長速度およびクリープ速度を説明する拡散係数は同じになる。これには、少し確信めいたものがあった。というのは、フォルステライト+エンスタタイト(MgSiO3)、2相系とフォルステライト+ぺリクレースで、後者のクリープと粒成長が著しく固い・遅いことを経験的に知っていた。同じフォルステライト+エンスタタイト系において、クリープおよび粒成長速度がSiの自己拡散係数(Fei et al. 2016)でよく説明できること(Nakakoiji & Hiraga, 2018)も研究の後押しした。かくして、岡本の詳細なる博士研究で、粒成長速度およびクリープ速度が同じ粒界拡散係数で決定されていることが証明された(下図参照)。「珍しく」「たまには」狙いが当たった。第二相粒子のサイズとそれに至るまでの時間が分かれば、拡散クリープ速度を決定する拡散係数が分かる。その拡散係数と粒径で粘性率が決まる。我々は、grain size-time viscometerと名付けた。 粒内包有物の相転移(コース石->石英)や粒内析出物のサイズ変化は粒内変形を必要とし、その現象は破壊靭性値、格子拡散係数、転位の生成・移動、と粒内すなわち鉱物レオロジー支配である。それに対して、岡本の証明は、粒界(粒間)にあるもののサイズ変化は岩石レオロジー支配である。岩石が固ければ、何も変化が生じないことになる。石という構造体の理解が進み、新たな地平線感アリアリ研究となった。

フォルステライト+エンスタタイトおよびフォルステライト+ぺリクレース2相系の拡散クリープ速度および粒成長速度から推定された拡散係数(左)とその拡散係数をSiの自己粒界拡散係数に変換し、お互いを比較したもの(Okamoto & Hiraga 2022 JGRを改変)。

将来テーマ
コアから地殻まで、地質学、岩石学、鉱物学、鉱物岩石物理学、地球化学、地震学的なもの多々あるので、興味があれば是非聞いてください。


バナースペース

平賀研究室

〒113-0032
東京都文京区弥生1-1-1
東京大学地震研究所2号館
413号室 平賀 岳彦

研究室ご希望の方

受け入れについて、こちらをご覧ください

アクセス

ACCESS MAP
東京大学 弥生キャンパス内