最近の成果

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平成25年度の成果

これらの図は下記の報告書に掲載されているものです。


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上図:2011年東北地方太平洋沖地震の発生前に見られたゆっくり滑りの概念図。赤枠で囲まれた様々な場所でゆっくり滑りが繰り返し発生した後,最終的な破壊に至る様子が推定された。下左図:海溝軸方向に投影した本震直前の地震活動の時間的推移。赤色の陰を付けた領域で,ゆっくり滑りが伝播したと考えられる。赤色と緑色の☆印は,小繰り返し地震と小繰り返し地震に類似したイベントを表す。下右図:海底圧力計で捉えられた海底面の上下変動の時系列。

左図:上から,桜島島内のひずみと火山灰放出量,桜島島内の東西成分の変位,亜硫酸ガス放出量,噴出物のガラス中の二酸化ケイ素(SiO2)含有量。 2009年末から2010年前半と,2011年末から2012年初頭の2つの時期に,桜島島内へのマグマ貫入イベントが発生した(薄黄色の帯)。右上図:桜島火山のマグマ供給系の概念図。桜島へのマグマ供給は,島の北側に位置する鹿児島湾(姶良カルデラ)の地下に推定される深部マグマ溜まりから行われていると考えられている。右下図:水準測量から推定される深部マグマだまりの増圧。

インドネシア・スメル火山及び諏訪之瀬島における,噴火直前の山体膨張の大きさと噴火強度の関係。(左)ガス噴出とブルカノ式噴火に先行する傾斜変動の例。ブルカノ式噴火に先行する傾斜変動は,ガス噴出に先行するそれよりも長い時間をかけて進行する。傾斜 変動の開始時間はブルカノ式噴火の強度によらない。(右)スメル火山における噴火強度と傾斜変化速度の関係。先行する傾斜変動が大きいと噴火強度も大きくなる。
参考文献:Nishimura, T., M. Iguchi, H. Yakiwara, J. Oikawa, R. Kawaguchi, H. Aoyama, H. Nakamichi, Y. Ohta, and T. Tameguri (2013) Mechanism of small vulcanian eruptions at Suwanosejima volcano, Japan, as inferred from precursor inflations and tremor signals, Bulletin of Volcanology, 75, 779, doi:10.1007/s00445-013-0779-1.

地殻変動観測により,東北地方太平洋沖地震発生時のプレート境界の最大滑り量は50mを越える非常に大きな滑りであったことが明らかになった。この推定には宮城県沖に設置されていたGPS-音響測距結合方式による海底地殻変動観測が大きな役割を果たした。また,巨大津波の発生から,海溝付近のプレート境界浅部での滑り量が50m程度以上の非常に大きいものであったと推定された。

上図:即時津波予測手法の概念図。下図:東北地方太平洋沖地震を対象として,仮想的な観測津波波形を用いた津波予測実験の結果。 (a) ケーブル式海底圧力計と沖合GPSブイの海水位の時間変化を示す。黒線は観測データ,赤線は最初の20分間の観測データ(緑の縦線まで)のみを用いた津波の予測波形を表す。(b)地震時の海面変動分布。赤い☆印は本震の震央を示す。(c)予測対象点(水深100 m)における海水位の時間変化。黒線は観測データ,赤線は予測津波波形を示す。

2014年1月頃,房総半島沖のフィリピン海プレート上面でゆっくり滑りが発生した。地殻変動データから断層滑りのモデル(図中の矩形)が推定された。前回のゆっくり滑りは2011年10月~11月に発生しており,その発生間隔が徐々に短くなっていることが指摘されている。右図(a) この地域の地震発生数の積算値(気象庁一元化震源),(b) M-T図(気象庁一元化震源),(c) 八郷から見た千葉大原の地殻変動(東西成分,単位はcm,国土地理院GNSS観測点),(d) 八郷から見た千葉大原の地殻変動(南北成分) 。

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左図:GPSデータから推定された余効滑りの空間分布。赤線は海溝の位置と地震活動から推定された本震時滑り域を示す。黄色星は本震の震源。右上図:左図の点(宮城沖)で示した位置における余効滑りの時間変化。青丸はデータからインバージョン解析により得られた余効滑りの積算曲線。速度依存する摩擦特性モデルから推定した余効滑り時系列(赤線)が,定常的な速度強化の摩擦特性モデルによる推定(緑線)よりもよく一致している。右下図:滑り速度と定常的動摩擦力の滑り速度依存性。通常は動摩擦力は滑り速度の対数に依存する(緑)と仮定するが,余効滑りの観測データを説明するためには,赤線のような動摩擦力の速度依存性を仮定する必要がある。なお,ここでは媒質の粘性は考慮していない。
参考文献:Fukuda, J., A. Kato, N. Kato, and Y. Aoki (2013) Are the frictional properties of creeping faults persistent? Evidence from rapid afterslip following the 2011 Tohoku-oki earthquake, Geophys. Res. Lett., 40, 3613-3617, doi:10.1002/grl.50713.

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インドネシアスマトラ島のシナブン火山の噴火シナリオ(確率を付した噴火事象分岐図)。2010年に地質調査に基づいて作成した噴火シナリオを用いて,2013年の活動評価を行った。2013年に再開した噴火は,水蒸気爆発から,マグマ水蒸気爆発に移行し,最終的に溶岩崩落による火砕流が発生した。

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濃尾地震断層域では,電磁気学的及び地震学的な構造調査から,地下深部の太平洋プレートから脱水した水がマントルを上昇し断層直下にまで到達していることを示唆する結果が得られた(左図)。これらの水が地震発生と関係していることが考えられる。1891年濃尾地震を起こした断層(赤線)と電磁気探査の測線(白線)(右上図)。その電磁気探査で得られた比抵抗構造(右下図)。
参考文献:上嶋 誠, 山口 覚, 村上英記, 丹保俊哉, 吉村令慧, 市原 寛, 小村健太朗 (2012) 濃尾地震断層周辺におけるネットワークMT観測について, 日本地球惑星科学連合大会, S-SS31.

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日向灘~南西諸島北部域における小繰り返し地震活動と非地震性滑り速度の時空間変化。(a) Rタイプ(◆)とそれ以外のタイプ(◇)の小繰り返し地震群の震央分布。青星印: 1923年以降に発生したM7.0以上の地震。(b) 小繰り返し地震から推定された滑り速度の分布。大赤星印:1911年の巨大地震(M8.0) の震央,ピンク色矩形領域と濃いピンク色領域:津波シミュレーションから推定された同地震の震源断層とアスペリティ,小赤星印:2009年の地震(M6.8)の震央。(c) 小繰り返し地震から推定された各領域(B~F)における滑り速度の時間変化。

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(左上)釜石沖繰り返し地震のマグニチュードの時系列。右側は東北地方太平洋沖地震後の部分を拡大して示したもの。(左下図) 釜石沖繰り返し地震の滑り量分布。色は時系列の色に対応。コンター間隔は5cm。(右図)地震ごとの滑り量分布。星はそれぞれの地震の震央。
参考文献:Uchida, N., K. Shimamura, T. Matsuzawa, and T. Okada (2015) Postseismic response of repeating earthquakes around the 2011 Tohoku-oki earthquake: Moment increases due to the fast loading rate, J. Geophys. Res., 120(1), 259-274, doi:10.1002/2013JB010933.

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南アフリカ金鉱山において採掘前線の前方20mの地点で観測された微小地震発生領域の拡大。震源分布の時間変化を示す。

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東北地方太平洋沖の地震では,建物を揺らす原因となる周期が短い地震波の主な生成域と巨大津波を発生させた大滑り域の場所が異なることがわかった。周期が短い地震波は主に陸に近いプレート境界深部から生成され,過去に発生したM7クラスの地震の震源域やアスペリティに対応する。大滑り域は海溝軸に近いプレート境界浅部に位置する。

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(上)火山爆発指数(VEI)ごとの,インドネシア,チリ,日本,世界における火山噴火の頻度分布。(下)インドネシア,チリ,日本,における16世紀以降の火山爆発指数3以上の噴火の発生比較。

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宇宙線を用いて火山浅部の内部構造を透視できる。薩摩硫黄島火山で噴煙が高く上がった期間とその直後の火口直下の構造を比較した。噴火により火口直下のマグマ物質が放出され密度が減ったことが捉えられた。噴煙の高さは気象庁の観測による。

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東北地方太平洋沖地震前後に発生したプレート境界地震の発生レートの変化。地震の増加域を暖色系,減少域を寒色系で表し,発生レート比が2倍となるところを黄線で示す。東北地方太平洋沖地震及び1994年三陸はるか沖地震の主な滑り域をそれぞれ緑,紫で示す。東北地方太平洋沖地震後にプレート境界地震が減少した領域が本震滑り領域とよく一致している。
参考文献:中村 航 (2014) テンプレート地震を用いた東北日本弧における発震機構の時空間変化の推定, 東北大学修士論文, 173p.