最近の成果

ここでは、最近の研究成果をイラストとともに紹介しています。 より詳しい研究成果や報告書、過去の計画の成果などはこちらをご覧下さい
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令和元年度の成果

これらの図は下記の報告書に掲載されているものです。


【山形県沖の地震直後の臨時観測】
左に山形県沖の地震発生直後に設置した海底地震計の設置方法を示す。水深が比較的浅く,水産活動等が活発な海域のため,係留ブイ方式を用いた海底地震計を設置した。右は7月5日から7月13日までの臨時観測から求められた震源分布である。丸の大きさでマグニチュード,色で深さを表現している。地震は深さ3kmから12kmに分布して,傾斜角40度程度の南東に傾斜する面状分布を示し,発震機構解と調和的である。

【考古発掘調査による地震痕跡と歴史記録との対応】
平城京・京跡や藤原宮・京跡における発掘調査から砂脈や噴砂の痕跡が発見された。歴史資料にある近畿地方の大地震と対応させると,これらの痕跡は827年(天長4年)京都地震,または855年(斉衡2年)奈良地震によって発生した可能性があることがわかった。

【南海トラフ沿いで検出された浅部SSE】
南海トラフの過去の観測データを統計的に解析することで複数の観測点で検出されたSSE由来と考えられる非定常な変動。定常変動からの差として表示。左上の挿入図は,変位量のデータ(黒丸)を定常変動と非定常変動を表す折れ線で回帰したものである(Yokota and Ishikawa, 2020, Sci. Adv.をもとに作成)。

【「階層的地震破壊」の概念図】
地震時の断層破壊は大きさの異なるパッチの連鎖破壊と考えられることが,大小様々な規模の地震の観測波形を用いた解析から示された.大地震の波形の立ち上がり部分が中小地 震と同じである事例が多く発見された。複雑な入れ子構造をもつ断層系(左上)を単純化したイメージ(中央上)に置き換えて考えると,階層的なパッチが連鎖破壊する(右上)ことで上記の観測事例を説明できる(カスケードモデル)。小パッチの破壊で終われば小地震, 中パッチの破壊まで連鎖すれば中規模地震,より大きなパッチにまで破壊が至れば大地震となる。それぞれの地震の規模は異なるが,地震波形の立ち上がり部分は地震間で共通する (右下)(Ide, 2019, Nature をもとに作成)。

【中部日本の3次元レオロジーモデルの構築】
地温勾配の分布(a)から推定した温度構造,水の分布,既存の地質構造を考慮し,東西方 向に短縮させて,中部日本におけるひずみ・応力集中過程を再現した。新潟地域のリフト構造(強度の弱い領域)等を考慮することで,(b)に示す新潟から飛騨山脈周辺までのひずみ集中帯を再現した。((c)は深さ 14 ㎞でのミーゼス応力場と震源分布。低応力の延性領域で地震活動は低く,高応力の脆性領域で地震が発生する傾向にある。

【3次元比抵抗構造から推定した草津白根火山の熱水系】
草津白根火山で広帯域MT観測を行い,3次元比抵抗構造を推定した。左図は3次元の比抵抗分布,右図は低比抵抗領域の平面図と東西断面を示す。山頂地域の深さ1~3kmに電気が通りやすい低比抵抗層が広がっており,深部から供給される熱水により形成された熱水系と考えられる。ここから,北側に位置する湯釜火口湖や東西に位置する万座温泉及び草津温泉へ熱水が供給されていると推定される(Matsunaga et al., 2020, JVGR をもとに作成)。

【測地観測データに基づく内陸地震長期評価手法の開発】
左は南海トラフの固着による弾性変形を取り除いたひずみ速度場を示す。右は測地ひずみの14%が弾性的に蓄積すると仮定して計算した,M6以上の内陸地震の30年発生確率である。

【スロー地震の総合解析による南海地震の固着域へ向かうスロースリップの長距離移動】
左上で示すように鹿児島沖から四国沖にかけての南海トラフのプレート境界で複数の種類のスロー地震を捉え,それらが深部と浅部,別々の時間スケールで長距離移動する様子がわかった。左上の図で示すa~kの領域について,深部低周波微動,GNSS 観測から得られた変位,繰り返し地震の滑り量,浅部超低周波地震の回数を時間変化として右上に並べると,1ヶ月程度で南から北に向かって移動している様子がみえる。これらの南海トラフ沿いのスロースリップの移動についてまとめたイメージを下に示す(Uchida et al., 2020, EPSLをもとに作成)。

【火山活動のアンレストに伴う熱消磁の事例収集と VUI への対応付け】
各種観測データに基づいて,数年~数十年スケールの火山活動評価,特に非噴火時における火山活動の高まり(アンレスト)の定量的評価を目指している。今年度はニュージーランドで開発されたVUI(火山活発化指数)を我が国の火山に適用するための具体的検討を始めた。右図の火山で過去に観測されたアンレスト事象について,地下の昇温の指標となる磁気モーメント消失率とその深さを調べると,グラフの左上側に行くほど,アンレスト後に実際に噴火した事例(円で囲ったイベント)が多かった。そのため,右下から左上に向かってVUI値が大きくなるよう基準を設定した。

【地震危険度評価結果表示システムの開発】
災害リスクの評価結果には想定シナリオや地盤効果の計算手法の違いによるばらつきがある。ばらつきを含む結果を防災計画に反映させるための表示システム開発を進めた。異なる地震シナリオ毎に,異なる震源要素を持つ地震を仮定し,その地震による工学的基盤での揺れ,表層地盤(地表)での揺れ,建物倒壊率を計算する。大阪府と高知県を例として,10,000回の数値試行実験で得られた「表層地盤(地表)での揺れ(最大速度)が100cm/s 以上となる度数(左図)」及び「建物倒壊率が30%以上となる度数(右図)」の表示例を示す。

【リアルタイム観測実記録に基づくデータ同化津波予測実験】
鳥島で発生した火山性の津波地震に対し,震源情報に依存しない津波データ同化に基づく現況把握からの予測実験。左:震源(右下の丸),同化に利用した観測点(赤),予測ターゲット地点(黄)。右:縦点線の時点における津波予測と観測記録との比較(Wang et al., 2019,JGR をもとに作成)。

【「江戸大地震之図」の震災を描く絵巻から江戸の社会を読み解く】
国宝である島津家文書の絵巻「江戸大地震之図」(東京大学史料編纂所所蔵)から安政江戸地震(1855年,安政2年)の様子を読み解き,文献資料と照合すると,事実と良く符合しており,当時の状況を忠実に描いているものとして,資料としての信頼度が高いことが明らかになった。当時の地震や火事による被害や人々の対応,復興過程の実態を見る手がかりとなり,今後の防災施策や復興施策の検討にも活用可能な事例である。