火山絵図紹介

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福嶋縣岩代国 ばんだいさん一ツトセぶし

 (ふくしまけんいわしろのくに ばんだいさんひとつとせぶし)

 この木版冊子は、明治21年(1888)の磐梯山噴火を素材とした数え歌である。数え歌は一つ、二つと数を追って歌っていく歌謡の一種であり、江戸時代以降、地方ごと時代ごとに様々な種類のものが作られた。磐梯山噴火の惨状を織り込んだ数え歌を作って流行らせることで、磐梯山噴火について世間に広く伝え、被災地への義援金を集める目的があった。

※参考文献:内閣府中央防災会議 災害教訓の継承に関する専門調査会編『1888磐梯山噴火報告書』(2005年)


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福嶋縣岩代国 ばんだいさん一ツトセぶし
   明治二十一年八月三日印刷
   同年同月六日出板
   著者兼発刊人
  下谷区御徒町一丁目四十三番地
  佐野金之助

一つとせ
 人の噂に聞くよりも
 哀れは福島岩代よ
 この磐梯山

二つとせ
 不思議な雨風のその中に
 にわかに破裂の磐梯山
 この恐ろしや

三つとせ
 見るも哀れは福島で
 山も砕けた岩代の
 崖も破裂の大騒ぎ

四つとせ
 夜中にまたもや山響き
 磐瀬若宮へ破裂して
 立木も根扱ぎの恐ろしさ

五つとせ
 一生懸命に逃れ出し
 親子散り散り檜原の
 村も埋もれ小野川よ

六つとせ
 馬や牛まで埋没し
 鳥も翼を失いて
 声も細野(の)かあさ□こふ

七つとせ
 泣く泣く訪ねる妻や子の
 死骸も散り散り血の涙
 袖でふくし(ひ)ま絶え間なき

八つとせ
 山は動かぬものなりと
 たとえに岩代も時節では
 はっと砕けて破裂する

九つとせ
 心細野(の)のその声も
 哀れ雉子沢も泥水と
 なって長坂(なかなか)とどまらぬ

十つとせ
 東西南北分かちなく
 一度に崩れて鳴動し
 ふくこくつく息目も瞠る


(被害)地戸数  四百六十三戸
死傷人口  約五百十八人
埋没戸数  約百戸
(死)牛馬   約五十七頭
(被)害地人  二千八百九十一人
埋没地  約一万千三十二町二反十七歩

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【参考文献】

・萩原進編『浅間山天明噴火史料集成1:日記編』(群馬県文化事業振興会,1985年)
・萩原進編『浅間山天明噴火史料集成3:記録編(2)』(群馬県文化事業振興会,1989年)
・内閣府中央防災会議 災害教訓の継承に関する専門調査会編『1888磐梯山噴火報告書』(2005年)
・内閣府中央防災会議災害教訓の継承に関する専門調査会編『1783天明浅間山噴火報告書』(2006年)
・北原糸子・他編『日本歴史災害事典』(吉川弘文館,2012年)

資料はすべて東京大学地震研究所所蔵

※このWebサイトは2015年の東京大学地震研究所一般公開で展示した“地震研究所図書室所蔵資料展示 火山絵図展”を基に作成しました。

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