左図はアムールプレートに対する各観測点の年間移動量を,方向とともに赤矢印で示す。南海トラフより外側(南東側)では,これまで知られているプレート相対運動と同じであるが,内側(北西側)ではその約6割程度の移動が観測された。右図は千島海溝根室沖に設置された観測点のオホーツクプレートに対する年間移動量を赤矢印で示す。海溝より内側(北西側)でプレート収束速度と同程度の年間約7 cmの移動が観測された。これらの結果は,いずれの領域でもプレート境界浅部ではプレートが固着しており,この固着域の周りではひずみが蓄積していることを示す(右下図参照)。
草津白根山の湯釜火口北側の噴気について,3He/40Ar比に基づきマグマ発泡度の変化が検出された。発泡度変化のタイミングは浅部熱水だまりの膨張・収縮とよく一致しており,同火山の活動の活発化を駆動するマグマ~浅部活動の物質科学的なつながりが確認できた。3He/40Ar*比(40Ar*はマグマ由来の40Arを意味する)というこれまで使われていなかった指標が火山活動活発化と関係していること,さらにマグマの発泡で説明できることを示した。草津白根山のような熱水が卓越している火山の活動活発化にマグマ(おそらく熱水系より深部)の寄与を示唆した意義もある。希ガスなので複雑な反応を考える必要がなく,今後,火山活動モニタリングの指標の一つとして活用が期待できる。