グループ 2 火山噴火予測と活動評価手法 の研究実施計画

代表者 京都大学防災研究所: 井口正人 PVMBG: Surono

日本側メンバー インドネシア側メンバー

本課題では火山爆発機構の解明と予測を3つの小グループで実施すると共に火山活動評価の手法について提言を行う.

「火山爆発機構の解明と発生予測」グループは,東ジャワのスメル火山を対象に傾斜変動観測や広帯域地震を行い,桜島,諏訪之瀬島などわが国の火山噴火と比較することにより,爆発機構モデルを構築し,直前予測を行う.数分から20-30 分の間隔で爆発を繰り返すスメル火山の山頂に既設の広帯域地震計に加え,傾斜計のアレイを新設して観測を行い,圧力変動源の深さの変化求める.その上で,火山体内部圧推移予測モデルを構築し,爆発発生の時期と規模の直前予測を行う.

「火山噴火の中長期予測と周辺のテクトニクス」グループは,現在噴火していないが火山性地震の活動が活発であり,マグマの蓄積期にあると考えられる西ジャワのグントール火山では火山性地震の観測とGPS などの地盤変動観測によりマグマの上昇・蓄積過程を明らかにするともに,広域地震観測を行うことにより広域応力場や周辺のテクトニクスとの関連を明らかにする.そのため,既設の地震観測網に加え,GPS 連続観測網を構築する.また,複数点で地震観測を新たに行い,周辺の地震活動を詳細に把握する.マグマの蓄積率を見積もるとともに,周辺の地震活動図を作成する.

「大規模噴火の頻度と発生過程の地質学的評価」グループはリンジジャニ,バツール,ブロモカルデラにおいて巨大噴火の時空間頻度分布とその発生に至るプロセスを解明する.

これらの研究成果および従来からの共同研究,我が国の最近の火山活動の事例に基づき,「火山活動評価手法」グループは日本の火山噴火予知連会長の協力を得て,インドネシア側に火山活動評価方法の聞き取り調査と助言・提案を行う.

グループ2


2-1 火山爆発機構の解明と発生予測

課題担当者 東北大学: 西村太志 PVMBG: Sri Hidayati

日本側メンバー インドネシア側メンバー

グループ2-1

スメル火山

数分から20-30 分間隔で噴火を繰り返すジャワ島東部のスメル(Sumeru)火山に3 カ所傾斜計を設置、山頂付近に既設の広帯域地震計のデータと共に日本の火山噴火時のデータと比較し、噴火圧供給源の深さ変化と噴火の関係を分析する。次に噴火の発生時刻と規模を予測する火道内の分加圧供給源モデルを構築し、短期間に多数のデータが得られることから統計的に予測モデルを検証する。


2-2 火山噴火の中長期予測と周辺のテクトニクス

課題担当者 京都大学防災研究所: 井口正人 PVMBG: Muhamad Hendrasto

日本側メンバー インドネシア側メンバー

活発な活動歴がありながら過去160 年間休止しているジャワ島西部のグントール(Guntur)火山で、近年、火山性微動の増加や山頂域の隆起などマグマの上昇を伺わせる兆候が見られる。このグンツール火山の山頂と山腹に3 台のGPS を配置し、他のプロジェクトで設置される地震計データも活用してマグマの蓄積と上昇の状況を明らかにし、特にGPS による地表変位の経年測定結果からマグマの供給率を推定し、噴火の中長期予測を行う。

グループ2-2

グントール(Guntur)火山 防災研究所技術室通信No.62 より


2-3 大規模噴火の頻度と発生過程の地質学的評価

課題担当者 産業技術総合研究所: 高田 亮 PVMBG: Supriyati Andreastuti

日本側メンバー インドネシア側メンバー

グループ2-3

ロンボク島リンジャニ(Rinjani)火山 Google Map より

日本では有史以来発生していないカルデラを形成する大規模噴火がインドネシアでは過去1000 年の間に3 回発生している。カルデラを形成しているロンボク島リンジャニ(Rinjani)火山、バリ島バツール(Batur)火山とブラタン(Bratan)火山、ジャワ島東部ブロモ(Bromo)火山について噴火歴と規模を推定する地質学的調査を行い、大規模噴火の長期予測と環境、都市、交通、社会基盤への影響の基礎的資料を取得する。


2-4 火山活動評価手法

課題担当者 京都大学防災研究所: 石原和弘 PVMBG: Surono

日本側メンバー インドネシア側メンバー

グループ2-4

ケルート火山の溶岩ドーム

インドネシアでは多くの火山噴火の経験に基づいて避難が実施されているが、過去に例のない火山活動の事例として、火口湖に溶岩ドームが出現したケルート(Kelud)火山、火砕流を起こしたメラピ火山、2004 年スマトラ・アンダマン地震以降の異常火山活動などについて調査を行う。この調査と他の研究チームの成果、日本の研究成果を統合し、両国の研究者の交流を活かしたディスカッションにより、火山活動の評価手法を開発する。