グループ3 災害に強い社会基盤の構築 の研究実施計画

代表者 東北大学大学院工学系研究科 今村文彦 BPPT: Mulyo Harris Pradono

日本側メンバー インドネシア側メンバー

本課題においては災害に強い社会基盤を,津波ハザードマップ並びに地盤災害ハザードマップの作成を通じて実現すると共に,これらの利活用を含めた耐震技術を広く普及する社会制度を提案する.

津波については,植生を利用することが被害軽減に効果があることが実証されつつあることから,「植生を利用した津波被害の軽減」グループは,2004 年インド洋津波と2006 年ジャワ島南方沖津波地震の被災地をサイトとして,植生の倒伏,抜根や破壊の基準についての現地調査をインドネシア側と共同して行う.また,津波減勢効果の定量的な評価方法を確立するため,植生域での津波の流れの実験を行うと共に,数値解析法の開発を行い,純林・混交林・複層林の利用方法の提案を行う.

「津波ハザードマップの作成と利活用」グループは,上の成果を取り入れつつ,これらの地域における津波ハザードマップの機能の高度化を図る.このため,空間認知心理などのアプローチを利用して効率よく有用なハザードマップを作成する手法を開発するとともに,津波解析から推定される浸水域や到達時間などのハザードを載せるだけでなく,二次的影響,避難経路・手段,避難時の諸注意を追加してマップを活用度の高い情報とする.さらに津波の影響については構造物への波力や浮力を考慮するための設計入力の検討を行う.

耐震性の向上については,設計入力地震動,地盤災害ハザードマップ,建物に対する対策の3点について研究を行う.まず,「設計地震動と建物を強くする技術・制度」グループは,インドネシアの構造物の耐震設計の基礎となる設計入力動を,最新の観測記録と過去の地震記録,表層地盤の影響から見直す.次に,「液状化を含む地盤災害の軽減」グループがインドネシアに適した地盤調査と液状化の面的予測法を開発し地盤災害ハザードマップの作成に生かす.また,組積造建物の耐震性を向上させるための適切な耐震技術(耐震基準,安い梱包用材料(PP-バンド)等を使った壁補強工法,耐震評価法)を開発するとともに,この耐震技術を活用して建物の耐震性を具体的に向上させる社会制度を提案する.

グループ3


3-1 津波ハザードマップの作成と利活用

課題担当者 東北大学: 今村文彦 UNAND: Febrin Anas

日本側メンバー インドネシア側メンバー

グループ3-1

ハザードマップ

空間認知心理学を考慮した可視化技術(facilitation graphics)を適用してより効果的で安全な避難を実現する津波ハザードマップを作成するガイドラインを開発する。住民参加でマップを作成する過程でハザード予測や地理的情報に加えて心理学的なアプローチを導入するのがポイントである。可視化手法を活用した住民参加のワークショップによって、津波遡上域や遡上時間に加えて避難路や避難方法、注意事項など地域固有の情報が盛り込まれたマップを作成する。


3-2 植生を利用した津波被害の軽減

課題担当者 秋田大学: 松冨英夫 DKP Diposaptono Subandono

日本側メンバー インドネシア側メンバー

グループ3-2 植生の破壊(移動、抜根、切断等)条件の現地調査、数値シミュレーション法の開発と検証実験を行い、植生による津波エネルギーの削減効果を定量的に評価する手法を開発、植生の活用に関するガイドラインを作成する。植生による津波対策のインドネシアに適した技術基準と植生を設ける場合の技術資料の作成、津波エネルギー削減効果の詳細予測、多様な植生条件における津波遡上速度の推定などなどの提案を行う。


3-3 液状化を含む地盤災害の軽減

課題担当者 東京工業大学: 時松孝次 LIPI: Adrin Tohari

日本側メンバー インドネシア側メンバー

グループ3-3

地盤の側方流動の影響を再現した杭基礎の
遠心載荷振動実験
京都大学防災研究所 構造物震害分野ホームページより

表層地盤の地質学的ならびに地球物理学的特性を推定し液状化などの地盤災害危険度を予測する諸方法を検証し、地盤災害を軽減する技術を実証する。ジャワ島バントウール(Bantul)とスマトラ島パダン(Padan)で物理探査を含む表層地盤の地盤工学的調査を行い、液状化の可能性のある地層、岩盤の深さ、おぼれ谷構造と盆地構造を推定、その結果を基に液状化危険度マップを作成する。振動台実験によって地盤と基礎の破壊のメカニズムを分析し、基礎の効果的な設計のための数値モデルを作成する。


3-4 設計地震動と建物を強くする技術・制度

課題担当者 京都大学: 清野純史 BPPT: M. Harris Pradono

日本側メンバー インドネシア側メンバー

グループ3-4

地震観測と地盤調査を行い、最新の地震記録、歴史地震データ、地盤工学的調査を取り入れたインドネシアにおける設計地震動を設定、標準的な地盤調査法の提案を行う。津波荷重の調査を実験により行い、設計津波荷重の提案を行う。

一方で、インドネシアの地震に弱い住宅を強化する技術と社会的な仕組みの開発として、梱包に使われるPP-バンドによる組石造補強法の地域事情を考慮したカスマタイズを行う。さらに、地域レベルで実現可能な設計と施工の品質保証方法と罰則規定、技術者と施工者の教育プログラム、開発技術の社会実装方法、少額融資と少額保険制度の提案を行う。