スロー地震学

スロー地震学 - 低速変形から高速すべりまでの地震現象の統一的理解に向けて

集会等トピックス2016年

  1. 2019年
  2. 2018年
  3. 2017年
  4. 2016年
  5. 新任者紹介
  6. 若手海外報告

2016/12/26-27
C02班第2回集会を開催しました。

日時 12月26日13:00-17:00
12月27日10:00-12:00
会場 京大防災研地震予知研究センター棟200号室(セミナー室)
プログラム 12月26日
13:00 - 14:30
C02班分担研究者の進捗状況(波多野、山口、住野、鈴木。一人20分)
14:30 - 15:00
休憩
15:00 - 16:00
宮澤さん「スロー地震・スロースリップの誘発現象」
16:00 - 16:30
討論
16:30 - 17:00
連携研究者の研究報告(大槻、桂木。一人15分)
12月27日
10:00 - 11:00
伊藤さん「スロー地震を海底で観測する」
11:00 - 11:30
討論
11:30 - 12:00
C01班から:矢部優さん

前回のイベントである11月の地質巡検で、メンバーの話題に何となしに上っていたキーワードは「合宿」であった。様々な雑念を振り払い密度の高い研究時間を享受するために、本務地から遠く離れた場所での合宿が最適であることは論を俟たないであろう。その際場所の選定は重要であるが、今回我々は古都京都を選んだ。
観測全般にパワフルにご活躍されているだけでなく最近は地質学的な研究もされているオールラウンダー伊藤さんと、誘発研究で世界をリードする宮澤さんという二人の若手准教授(京大防災研)をゲストスピーカーとしてお迎えして忌憚のない意見を交わすことが目的であった。実際にはお二人に加えてC01班の井出さん(班長)と矢部さん(大学院生)というゲストも参加し、二日間に渡って大変充実した議論をすることができた。伊藤さんからは観測データから様々な情報を引き出す妙味を、宮澤さんからは誘発現象のイロハから最新の成果までを系統的にご紹介いただいた。物理班の面々にとっては大変勉強になるだけでなく今後の研究に生かされる内容であった。また、物理班メンバーの進捗報告にはこれらのゲストから有意義なコメントを多数いただき、その点でも班間交流を促進できたのではないだろうか。
しかしこのような異業種交流の国内押しかけワークショップは端緒に着いたばかりであり、スロー地震学の5年間を通じて今後も継続的に開催する予定である。ホストを務められた伊藤さん宮澤さんにはこの場をお借りして改めて感謝の念を表したい。この文を読んでいる研究者にもC02班からの押しかけワークショップ依頼が来る日が近いであろう(第3回に続く)


2016/12/22
中島淳一教授らの、西南日本の低周波地震と構造不均質に関する論文が Nature Communications に掲載されました。

URL : http://www.nature.com/articles/ncomms13863
東工大プレスリリース : http://www.titech.ac.jp/news/2016/037010.html
Nakajima, J. & Hasegawa, A. Tremor activity inhibited by well-drained conditions above a megathrust. Nat. Commun. 7, 13863 doi: 10.1038/ncomms13863 (2016).


2016/12/14
井出教授がAGUフェローに選ばれました。


2016/11/07~12/11
Natalia Poiata博士滞在

A01班において、深部低周波微動カタログ構築における新たなシステム開発の検討のため、ルーマニア国立地球物理研究所研究員であるNatalia Poiataさんが11/7~12/11の期間、東京大学地震研究所に滞在しました。Nataliaさんは、2008年より東京大学大学院博士課程学生として地震研に在籍し、2011年に博士号を取得、その後、フランスのパリ地球物理学研究所(IPGP)にてVilotte博士らとともに開発した多重周波数帯域アレイ手法により、深部低周波微動等の検出に関する論文発表を行なっており、今回の来日で、微動カタログ構築のシステム化を進めました。

Natalia Poiata博士

2016/12/07
Stuart Henrys博士 と Martha Savage教授による特別セミナー開催

東京大学地震研究所に滞在中の、Stuart Henrys博士(GNS Science)と Martha Savage教授(Victoria University of Wellington)によって、12月7日に特別セミナーが開催されました。セミナーでは、11月14日にニュージーランド南島北東端に発生したMw7.8のKaikoura地震と、それに引き続いて北島のHikurangi沖や北島南西のKapitiなどの広域で同時に発生しているスロースリップイベントに関して現状報告がなされ、活発な議論が行なわれました。


2016/11/29
スロー地震カタログワーキンググループ キックオフミーティング

2016年11月29日に、東京大学地震研究所において、スロー地震カタログワーキンググループのキックオフミーティングが行なわれました。このミーティングには、微動、低周波地震、超低周波地震、スロースリップイベントなど、様々なスロー地震のカタログを構築している機関から約20名もの研究者が集まり、これらのカタログの現状や、今後の公開・共有について議論を行ないました。今後、カタログ収集・公開システムの構築体制を整備し、可能な範囲で、順次、各機関のカタログ収集を開始し、プロトタイプを作成する予定です

ミーティング参加者所属機関:東京大学、広島大学、琉球大学、神戸大学、気象庁、気象研究所、防災科学技術研究所、産業技術総合研究所、海洋研究開発機構


2016/11/11-13
キックオフ巡検の報告

波多野恭弘(東大地震研、C02班代表者)

11月11日から13日にかけて、徳島県牟岐町から美波町にかけての海岸線に露出する牟岐メランジュをターゲットとしたキックオフ巡検が開催された。参加メンバーはB02、C01、C02班を中心とした14名で、「スロー地震学キックオフ巡検」と呼ぶのはあまり適切でないかもしれないが、「数理的な研究をする者ほど巡検に出かけて現物をよく知らねばならぬ」という(筆者が統計物理分野から地震研究所へ着任後ことあるごとに言われた)教えに基づけば、C01、C02のメンバーこそ優先的に巡検に行くべきなのであろう。特にC02班は初めて断層露頭を見るメンバーもおり、強い印象を受けたようである(彼らのコメントは末尾を参照)。B02班の氏家さん・森さんが講師となって懇切丁寧に地質の解説をして頂いたことに深く感謝したい。
今回の露頭はメランジュが受けた様々な剪断構造の宝庫で、ダクタイル変形に伴う各種の褶曲構造から、高速変形に伴うシュードタキライトやベインへのガウジ貫入などを至近距離でじっくりと観察できた。個人的には数cmから数m程度まで約二桁に及ぶ断層の非平面構造を観察できたことが大収穫であった。実空間のトポグラフィから暗算でフーリエ変換をできる訳ではないし、何らかの自然言語化もできていないが、ミクロンオーダーの摩擦面プロファイルとは何かが大きく違う気がした。グルーヴ消失(Candela & Brodsky, 2016)と関係しているのだろうか?
なお今回はあくまで「キックオフ」巡検であり、今後も継続的に開催される予定である。氏家さんの頭の中には色々なプランがすでに出来上がっているようなので、今回参加できなかった皆様も次回以降は積極的に参加して頂きたい。巡検はまた合宿でもあり、期間中昼夜問わずに議論を深められる素晴らしい機会でもある。私個人は今回の議論を通じて今後の研究の大まかな方向性まで決まってしまった。改めて、皆様に感謝したい。

シュードタキライト露頭前で撮影した巡検参加者の記念集合写真
巡検参加者からのコメント1
住野豊(東京理科大、C02班分担研究者)

まず第一に地球が生命体だと強く認識した。これまで机上であり、退屈に感じていた岩石へのイメージが一新された。それは、岩石は実に多様でマルチスケールの構造を持つ対象であることを実感したためである。また、氏家さんから直接お話をいただくことで、その多様な構造から実に多くの情報が引き出せることを知った。まさに目が開かされる思いであった。岩石を直接目にすることで、岩石が生まれ、歪み、積み重なっていく様子が見て取れるようであった。まさに生き物そのものと感じた。
次に、地質学者の熱意を感じた。岩石と岩石の狭間に見られる数cm程度のシュードタキライトを発見する上で、実に広範な地域を探索していることに驚いた。巡検として海岸線を歩くと、捜し求める対象および自分自身が自然に比べて実に微小なスケールであることを実感させられた。普段、実験室で化学物質や細胞を扱う際、あるいは数値計算で計算機を扱う際には決して感じられない感覚であった。まさに熱意がないと行えない研究であると実感するとともに、このような地質学者・地震学者と共同で研究することに対して私自身にも熱意を注入された気分である。
最後に、地震イベントが地球のスケールからは身近な時間スケールで起こるイベントであることを感覚として得た。通常物理学では、時間スケールの分離を行うことで対象を簡略化する。ところが、我々は身近な時間で起こる破滅的な地震イベントに興味がある一方、そのような早い過程はノイズとして平均化することで無視してしまう。ここに地震研究の困難さがあると感じた。また、地震は我々の人生スケールでまれなイベントである一方、地球の時間スケールでは幾度と無く繰り返されるイベントであることも、地質のいたるところに見られる地震の痕跡から実感できた。このような広範なタイムスケールで起こる現象は、他の物理学でも類が無く、興味深い研究対象であると再認識した。
以上のように、今回の牟岐キックオフ巡検は私にとって非常に有意義な巡検であった。

fluidizationを記録した断層岩露頭を前に白熱した議論をする巡検参加者
巡検参加者からのコメント2
大槻道夫(島根大、C02班連携研究者)

今回初めて巡検に参加したが、非常に強い感銘を受けた。普段の研究では日常スケールの実験やシミュレーションを主に対象にしていたが、メランジュに残された大規模スケールの剪断の痕跡を見ることで、これまで暗黙に仮定していたスケール不変性などに思いを馳せざるを得なかった。また、物理学と地質学の研究スタイルの違いに関しても刺激を受けた。物理学ではできるだけ切り詰めたシンプルなモデルや実験を設定し、その解析から現象の本質を探るという方針をとるが、今回の巡検での議論を通じた交流から、地質学においては、大規模現象の痕跡を探索し、実際にあり得るストーリーを絞り込むというスタイルをとることを初めて認識するとともに、そこに科学としての別の可能性を感じた。特に、断層中の岩石を目の前にして、そこから何が読み取れるかという話を地質学者の方々から教えていただくことで、その方法論の有効性を目の当たりにすることができた。ただ、そういった地質学的な現象でも、物理的なスタイルの入り込む余地も十分あり得るとも感じ、今後のプロジェクトでの協同的な発展に対する期待を強く感じている。

シュードタキライトを間近で見るべくロープを使って崖を登る波多野C02班長

2016/11/07-11
日本・チリ学術フォーラム2016@パタゴニア

井出 哲(東大大学院理学系研究科、C01班代表者)

11月7日から11日まで南米チリ(パタゴニア)において、東京大学、チリ大学、チリ・カトリカ大学共同主催の日本・チリ学術フォーラム2016が開催されました。2日間にわたって行われた地震学関連のワークショップでは、巨大地震、津波、そしてスロー地震に関連する議論が盛り上がりました。また氷河地形を観察するエクスカージョンも行われました(写真)。チリは巨大地震とスロー地震の関連を研究するのに最適な地域のひとつであり、近年地震観測網の新展開など急速に研究環境が整いつつあります。本新学術領域研究では、今回の研究者交流をきっかけとして、今後の共同研究へつなげるべく各種企画を検討中です。

Chile-Japan Academic Forum 2016 at Patagoniaのサイトはこちら


2016/09/13-15
スロー地震合同研究集会

2016年9月13日から9月15日まで、東京大学地震研究所においてスロー地震合同研究集会が開催されました。
・当新学術領域「スロー地震学」のキックオフミーティング
・東大地震研共同利用研究集会「スロー地震の発生メカニズムを探る:観測・調査・実験・理論・モデリングからの情報の統合化と巨大地震との関連性の解明を目指して」
・京大防災研特定研究集会「我々は南海トラフ巨大地震とスロー地震の関連性をどこまで理解できているのか?
の3つを柱とし、海外研究者も交え多彩な発表・議論が行われました。

プログラムやアブストラクトは、Joint Workshop on Slow Earthquakes 2016のウェブサイト(https://sites.google.com/site/wssloweqs2016/)を、また、キックオフミーティングの概要につきましては、ニュースレターVol.1にも掲載しています。