スロー地震学

スロー地震学 - 低速変形から高速すべりまでの地震現象の統一的理解に向けて

集会等トピックス若手海外報告

  1. 2022年
  2. 2021年
  3. 2020年
  4. 2019年
  5. 2018年
  6. 2017年
  7. 2016年
  8. 新任者紹介
  9. 若手海外報告

2021/10/17〜2021/11/06
スロー地震学若手研究者海外派遣報告
東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻 修士課程2年 鈴木 琳大郎


バークレー校でのセミナー発表の様子

2021年10月17日から11月6日までの3週間、カリフォルニア大学バークレー校・カリフォルニア工科大学に滞在し、Weiqiang Zhu博士との共同研究およびバークレー校のRoland Burgmann教授、平貴昭博士、カリフォルニア工科大学のZachary E. Ross助教、金森博雄名誉教授をはじめとした現地の研究者・学生の方とのディスカッションを行いました。Zhu氏は機械学習を用いた地震波形からの初動自動検知のプログラム(PhaseNet: Zhu and Beroza, 2019)の開発者であり、北カリフォルニアの地震波形に対する初動検知においてPhaseNetが高い性能を発揮することを示されています。私は渡航前に、PhaseNetをS-netを含む東北日本のデータに適用し、この地域に適した推定モデルを構築(学習)しました。また、宮城県沖のS-net連続波形記録への適用においてPhaseNetによる初動検出数の向上を達成し、未知の地震の検出を実現していました(Suzuki et al.,2021: JpGU 2021)。事前研究の成果を踏まえて今回の渡航では、この推定モデルをさらに長期間かつ広範囲のデータに適用して東北日本の小地震活動を明らかにするにあたって、処理の効率化と性能向上に向けた議論、検討を行うことを目的としていました。
はじめに訪れたバークレー校では、海域を含む東北日本のデータを用いて更新した推定モデルの性能に関して、現地の研究者の方の前でセミナー発表をする機会をいただきました。英語での発表は初めての経験で拙さもありましたが、興味を持って聞いていただき、これまでの研究成果への自信につながりました。セミナー外でも現地の学生の方から私の研究と類似する別地域での機械学習を用いた地震波初動検知の事例を伺うなど、自身の研究の改善に向けて知見を深めることができました。また、現地に滞在中の指導教員の内田直希准教授とも対面で議論し、新たに得た知識や手法の工夫も踏まえて修士論文に向けての方向性を明確にすることができました。1週間という限られた期間の中、多くの研究者の方との議論を通じて、英語・日本語問わず能動的にディスカッションする能力をつけながら、確実に研究を前進させることができました。


共同研究者のZhu氏(左)と

渡航期間の後半はカリフォルニア州を南下し、Zhu氏の所属するカリフォルニア工科大学に2週間滞在しました。Zhu氏とは毎日のように活発に議論を交わしながら、現状の解析手順の改善に向けて迅速に作業を進めることができました。私が扱っているデータを処理する上では、日本特有の地震波形の特徴(S-netにおける多重反射の影響など)による性能面に加えて、日本独自の波形ファイルフォーマットを利用することによる計算コストの面でも従来にはなかった難しさがありました。システム開発に関しても造詣が深いZhu氏にサポートいただきながらデータの読み込み方法を試行錯誤的に検討し、初動検知に関して渡航前の1/6まで処理速度を向上させることができたのは大きな成果でした。日本帰国後も検知した初動から震源を決める上で必要な初動のグループ化作業(association)の効率化と性能向上に向けてZhu氏と密に連携を取りながら研究を進めています。


カリフォルニア工科大学のあるPasadena市の街並み

アメリカへは初めての渡航だったため、他にも刺激的な経験ばかりでした。カリフォルニア工科大学では学生部屋に滞在していましたが、同室の学生がオンライン、オンサイト問わず日々活発に議論していることが日本での私の研究スタイルとは異なり非常に印象的でした。また、食べることが大好きな私にとっては、アメリカン、メキシカンからアジア系まで多様な食文化が根付いていることに驚き、毎日の夕食選びを滞在中の楽しみにしていました。バークレー校周辺で平博士におすすめしていただいたBongo Burgerのペルシアンバーガーはお気に入りです。

新型コロナウィルスによる難しい時勢の中での渡航に際し、渡航の調整に当たってご対応いただきました東北大学理学部・理学研究科教務課の皆様、滞在の許可から滞在中も何かと気にかけてくださったカリフォルニア工科大学Seismological Laboratoryの秘書の皆様には大変お世話になりました。また、内田直希准教授、北佐枝子博士には渡航前から滞在中まで生活面でも手厚くサポートをいただきました。本当にありがとうございました。
最後になりましたが、このような貴重な機会を設けていただき、イレギュラーな時勢下での渡航に当たって多大なるご支援をいただきましたスロー地震学プロジェクトの皆様に厚く御礼申し上げます。

2021/9/27〜2021/10/01
"EARTHQUAKES (3rd edition) nucleation, triggering, rupture, and relationships to aseismic processes"
東京大学大気海洋研究所 博士2年 奥田 花也

2021年9月27日から10月1日まで、フランス・コルシカ島のInstitut des Etudes Scientifiques de Cargèseで行われたサマースクールに参加しました。私自身は約1年半ぶりの対面での学会となり、久々にスピーディかつ多くの議論を交わすことができました。 今回のサマースクールでは断層滑りのシミュレーションやスロー地震の観測の話題が多く、またDASなどの最先端の技術に関する話題提供もあり、地震学における世界の最先端の流行りを感じることができたほか、自分が行っている摩擦実験によって得られる物性値がどのようにモデルや議論に組み込まれるかを知る良い機会にもなりました。一方で、地震がほぼおこらないヨーロッパの研究者たちも世界中に観測網を張っており、沈み込み帯における地震活動を詳細に研究しており、またケーススタディにとどまらずモデル化・一般化を行うという観点に関して非常にハイレベルであるとも感じました。 ポスター発表では世界各国の研究者・学生・ポスドクと議論をする機会に恵まれ、また一日の終わりには世界中の同世代の学生と夕食(+酒)をともにし、とてもよい刺激を受けることができました。また偶然同じ宿に宿泊していたWhitney Behr (ETH)やChris Marone (Penn state)などとは毎日の朝食時から研究の話や雑談をする機会があり、今後の研究室訪問の約束をするなど最近のオンライン学会ではなかなか得られなかったオフラインのつながりを得る非常に大きなチャンスとなりました。 コロナ禍でなかなか海外に行くことも難しくなっている中で、今回のサマースクールは自分の研究をさらに発展させていくうえで貴重な経験となったように思います。このような機会を提供してくださったスロー地震学関連の皆様にお礼申し上げます。


2021/9/27〜2021/10/01
"EARTHQUAKES (3rd edition) nucleation, triggering, rupture, and relationships to aseismic processes"
東京大学地震研究所 特任研究員 伊東 優治


口頭発表の様子。

スロー地震学プロジェクトから渡航費用の助成を頂き、フランスのコルシカ島で開催された国際サマースクールEarthquakes 3rd Editionに参加しました。世界的パンデミックが継続する中での海外出張とあって、予定していたフライトの結構に伴う変更や入国・帰国要件の確認などで様々な気苦労がありましたが、最終的には大きなトラブルなく渡航できました。 サマースクールでは、GPSデータに基づく2003年十勝沖地震前のプレート間固着のモデル化に関する口頭発表を行いました。後述の様に大半の参加者にはあまり馴染みのない内容だったと思われますが、想定したよりも多くの質問を頂けた他、発表後の休み時間にも様々な議論を行うことができ、同分野の研究者との交流を深めることができました。他の参加者の発表では、口頭発表、ポスター発表ともに摩擦則を用いた地震サイクルや断層破壊の数値シミュレーション研究が多く目につきました。これは中規模〜大規模な自然地震の観測データが得難いヨーロッパならではの事情と考えられ、観測データに基づくアプローチで研究に取り組む身としては、日本を拠点とするアドバンテージを感じました。観測を基にした研究では、地殻変動とスロー地震活動や地震活動等の多種のデータを統合することにより、現象論に留まらずその背後にある物理過程の大枠を観測から理解しようとするものがあり、とても刺激的でした。 また、今回の渡航ではサマースクール終了後の一週間弱に亘って同国内にあるUniversité Grenoble AlpesのAnne Socquet博士の研究グループに滞在し、サマースクールでの発表内容とは別に進めているGPSデータを用いたスロー地震研究に関する議論を行いました。こちらも大変実りあるものとなりました。 最後に、このような貴重な機会を下さったスロー地震学プロジェクトの皆様に御礼申し上げます。


2019/8/15〜2020/3/15
スロー地震海外派遣報告
東京工業大学理学院地球惑星科学系 修士1年 土山 絢子


AGU2019中にサンフランシスコのドイツ料理店
にて,Rolandさんと研究グループの博士課程学生と
一緒に.

2019年8月15日から2020年の3月15日の期間,カリフォルニア大学バークレー校に滞在し,Roland Burgmann教授および平貴昭博士との共同研究を行いました.現地では,卒業論文から継続していた深発地震の発生メカニズムに関する研究についての議論に加え,新たに「Ridgecrest地震の余震から低周波地震を検出する」というテーマの共同研究を始めました.Ridgecrest地震は2019年の7月4日(Mw 6.4)および5日(Mw 7.1)にカリフォルニア南部で発生した地震で,アメリカ国内で非常に関心が高まっている地震です.これまでの解析は,震源周辺の観測点における地震波スペクトルから低周波成分が相対的に卓越している余震を検出する方法の適切な閾値を検討している段階で,試行錯誤を繰り返しながらも現時点では「低周波余震」の候補がいくつか見つかっている状況です.


大陸横断鉄道からの景色

現地の研究グループでは,Rolandさんやポスドクの方と一緒に,地震学的視点のみならず地殻変動などのテクトニックな視点も交えて議論を行うことができました.また,私はこれまで海外の波形データを扱った経験がなかったため,現地の観測点に詳しい平さんのご教授のもとで他国の波形データの扱いに少し慣れることができました.帰国後も共同研究は継続しており,まずは5月の連合大会で成果を発表できればと思っています.また,日本では沈み込み帯に注目して研究を進めていましたが,滞在中はこれまでと異なるカリフォルニアの横ずれ断層帯と浅部の地震活動についての知見を深めることができ,「Earthquake of the week」というセミナーへの参加を通じて,世界各国で発生している地震活動を俯瞰的に眺めながら研究するという貴重な機会をいただくことができました.また,地震研セミナーでは講演を聴くだけでなく,講演者との個別ミーティングや懇親会などにも参加させていただきました.


現地でお世話になった
Roland Burgmann教授.

長期の滞在であったため,滞在中はバークレーのみならずカリフォルニア州内の他大学をいくつか訪問しました. 長期休暇では大陸横断鉄道に乗車して,サンフランシスコからシカゴまで3日間かけてロッキー山脈を越えてアメリカ大陸の雄大な景色を楽しむことができました. 3月に入ってから,新型コロナウイルスの影響で生活状況が急速に変化していきました.カリフォルニア州の対応はとても迅速で,大学はすぐにオンライン授業に切り替わり,帰国前日には外出ができなくなりました.このような緊急事態の中で,平博士やUC Davisの松井博士など現地の日本人研究者の方々には大変お世話になり,予定通りの日程で無事に帰国することができました.この場をお借りして感謝申し上げます. 7ヶ月という長期の滞在であるにも関わらず,ご支援いただき本当にありがとうございました.このような貴重な機会を提供してくださったスロー地震学関係者のみなさまに深く感謝申し上げます.留学先で得られた成果を還元できるよう,帰国後も研究に精進いたします.


2020/2/10〜2020/3/19
スロー地震学若手研究者海外派遣報告
神戸大学大学院 理学研究科 博士課程1年 佐藤 圭介


青地先生(右)と研究室にて

2020年2月10日から3月18日にかけて、フランス地質調査所(BRGM)の青地秀雄博士の研究室に滞在し、断層の動的破壊モデリングについて学びました。私は現在内陸地震を対象に断層の動的破壊モデリングを行っていますが、動的破壊モデリングは非線形性が強く、観測記録を再現するような動的破壊パラメータの空間分布を求めることは大変骨が折れる作業です。また、時空間の刻みの設定にもよりますが、一般に計算コストが大きいのも難点です。
今回は、パラメータの空間分布や詳細な値にこだわったモデリングではなく、すでに得られている運動学的知見(運動学的震源インヴァージョンや地殻変動データを用いた静的インヴァージョン)を利用して、破壊の大まかな描像を得るアプローチについて詳しく学びました。ミスフィットの計算には限られた観測点のみを用いて、探索する動的破壊パラメータの範囲も絞ることにより、計算回数を抑えながらも、破壊シナリオを得ることを目指します。現在は内陸地震を対象に行っていますが、今後は沈み込み帯で発生した地震も対象とする予定です。動的破壊モデリングによって推定したcoseismicなすべりの位置や量と、先行研究によって得られているスロー地震の破壊域との比較を行うことにより、レギュラーの地震とスロー地震との時空間的な関係に関する考察を得たいと考えています。
滞在中にヨーロッパで新型コロナウイルスの感染が拡大したため、急遽帰国を1週間早めることとしました。帰国後も所属の神戸大から14日間の自宅待機を要請されるなど、不運なことが重なってしまいましたが、なかなか得難い体験と今はポジティブにとらえています。異国での生活と研究という、大変貴重な体験を今後の研究生活に活かしていきたいと思います。最後に、受け入れてくださった青地先生、採択してくださった先生方、事務手続きを担当してくださった皆様、その他関係者の皆様に深く感謝を申し上げます。今後ともご指導ご鞭撻のほど、どうぞよろしくお願いいたします。


2019/8/21〜2019/9/14
スロー地震学若手研究者海外派遣報告
九州大学大学院工学府機械工学専攻 修士課程2年 福留 泰平


Paul A. Selvaduraiと

2019年8月21日から9月14日までの期間、スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETH Zurich)にてPaul A. Selvadurai博士のもとで、AEセンサを用いた高温下での衝撃波測定実験を行いました。私も彼と同様に室内実験を行っているため、異なる物質や観測手法の室内実験を通して我々の実験系との比較をし、より洗練された実験系の構築を図ることが本派遣の目的でした。短い期間でしたが、AEセンサの作成から始まり、室温から200℃近い高温に至る温度条件下における複数のAEセンサの信号をもとにした地震波形の観察や地震モーメントの算出、またこれらの結果の比較を行ったことで、より実際の地震に近しい発生環境での観測および解析を経験することができました。今後もPaulとは連絡を取りながら、さらなる解析・考察を続けつつ、我々の実験系での結果との比較や改良を重ねていく予定です。 また、今回Nicholas D. Spencer教授との対談の機会も頂きました。


Nicholas D. Spencerと

彼には主に我々の実験系に使用している高分子ゲルの摩擦に関してご助言いただき、我々の結果と地震との関連性や異なる物質を超えた普遍性についてPaulも含めた3人で議論しました。学会とはまた違った踏み込んだ議論ができ、非常に有意義な時間を過ごせました。 他にも、関連する研究発表を聞きに行ったり、学内に常設されてある博物館を見学したりすることができ、研究以外の時間も日々勉強になりました。最後に、この度はこのような貴重な機会をくださったスロー地震学関係者の皆様に心から感謝申し上げます。


2019/6/3〜2019/6/20
スロー地震若手海外派遣報告
東北大学大学院理学研究科 博士課程1年 寒河江 皓大


谷本先生と

2019年6月3日から6月20日にかけて、アメリカのカリフォルニア大学サンタバーバラ校(UCSB)の谷本俊郎教授の研究室に滞在し、ノイズの特徴について学びました。私は、地震計アレイを用いた深部低周波微動の検出、震源決定を行っていますが、震源決定したイベントの中にはノイズが含まれている可能性が残っています。今回の滞在では、微動とノイズを適切に区別した、微動検出の正確性の向上を目指す研究に大いにつながる知見を得ることができ、今後の研究の進展が期待できます。
セミナーの一環として、修士論文までの内容を発表する機会をいただくことができました。セミナー発表では、日本におけるスロー地震の背景やアレイ解析の技術面などに関する様々な質問を、教員だけでなく学生(特にPhD)からもいただくことができ、有意義な議論を行うことができました。


セミナー発表の様子

また、学生部屋では、学生同士で研究紹介を行うことで交流を深めるとともに、興味深い研究内容 (例えば、Rotation Seismometer を用いた脈動解析等) を多数聞くことで、知識の幅が広がりました。
滞在した期間が卒業シーズンであったため、大学内は大変にぎわっており、Award Ceremony や日本とは異なる卒業式の様子を体験することができました。また、週末にはサンタバーバラのダウンタウンやソルバングを研究室の学生と観光し、カリフォルニアでの生活をエンジョイすることができました。
しかし、滞在中はセミナー発表や学生との会話など、あらゆる場面で自分の英語力の足りなさを痛感しました。
日頃から英語力を鍛える努力を怠らず、今後の研究に精進したいと思います。


Award Ceremony後の懇親会の様子

貴重な機会をくださったスロー地震学の関係者の皆様に心からお礼申し上げます。ありがとうございました。


2019/3/4〜2019/3/29
スロー地震海外派遣報告
東京大学地震研究所 修士2年 小澤 創

3月4日から29日までの4週間,Stanford大学に訪問学生研究員として滞在して,Eric Dunham准教授との共同研究として非平面断層における地震サイクルのモデリングを行いました,Ericの研究室で開発している動的破壊シミュレーションのコードと僕が開発している地震サイクルシミュレーションのコードを併用することで,非平面断層での塑性変形を考慮した地震サイクルシミュレーションが可能になりました.帰国後も共同研究を継続しています.
Ericとはこのプロジェクトだけでなく震源物理全般について日々議論しました.僕が温めている研究ネタについても有益なコメントをもらえました.gitリポジトリを使ったソースコードの共同開発など研究手法の面でも学ぶところが多かったです.また,彼のグループには地震以外にも火山や津波のモデリングをしている学生もいて,彼らの話を聞くことで地球物理全般に関する見識が少しだけ広がりました.

日頃のセミナーやランチなどではStanfordの地球物理学科の学生たちと交流しました.セミナーは食事しながらがあたりまえだったり,教員が”jump in"する前に学生専用の質問タイムがあったりと日本(東大)と異なる文化に驚きました.StanfordではInduced seismicityとMachine learningが流行テーマなようで,これらの話題を頻繁に聞きました.また,研究グループのミーティングで修士での僕の研究について発表する機会があり,論文の宣伝ができました(スロー地震学のことも宣伝しました).
今回,初めての海外の大学の滞在という大変貴重な経験ができました.研究だけでなく,日々の生活ではシリコンバレーの車社会と物価の高さを実感し,週末にはサンフランシスコやヨセミテ国立公園など観光客としてカリフォルニアを楽しみました.このような機会を提供してくださったスロー地震学の関係者の皆様に感謝申し上げます.


2019/2/21〜2019/3/22
スロー地震海外派遣報告
東京大学地震研究所 修士2年 馬場 慧


IPGPの外観

2019年2月21日から2019年3月22日にかけて、フランスのInstitut de Physique du Globe de Paris (IPGP) に滞在して、Jean-Pierre Vilotte博士およびNatalia Poiata博士と共同研究を行いました。Poiata 博士は、地震波形の統計学的特徴を複数周波数帯で評価することによって、地震や低周波地震の検出および高精度な震源決定を行う手法を開発しました。そのPoiata博士の手法を、スロー地震の一種で微動よりも長周期の現象である超低周波地震(VLFE)に応用することを目指し、共同研究を行いました。Poiata博士は、2012年の5月〜6月の四国のEpisodic Tremor and Slip (ETS)の期間で、低周波地震(LFE)の検出を行なっており(Poiata et al., 2018)、また私は昨年、マッチドフィルター法を用いて、四国で超低周波地震(VLFE)の時空間分布を調べる研究を行なっていた(Baba et al., 2018)ので、最初に2012年5〜6月のETSの期間で、Poiata et al. (2018)の手法の周波数帯域などを変えることによって、Baba et al. (2018)で検出されたVLFEのうち、マグニチュードが大きいイベントの検出ができることを確認しました。


セミナー発表の様子

現地では、Vilotte博士・Natalia博士をはじめ、IPGPの研究者の方々と、コードの改良や、四国におけるLFEとVLFEの時空間分布の相関性に関してほぼ毎日議論を行いました。滞在期間は1ヶ月と短い間でしたので、今後は、マグニチュードが小さいイベントも含めて網羅的な検出が行えるようコードを改良し、他の期間や他の地域でもVLFEを検出できるように、メールや学会などで連絡を取りながら共同研究を続けていく予定です。新しい研究に取り組めただけでなく、海外で英語の議論を頻繁に行うという貴重な経験をすることができました。今後も、地震学に関する知識をつけ、英語力の向上にはげみ、研究に励んでいきたいと思います。スロー地震学の関係者の皆様に心より感謝申し上げます。ありがとうございました。


Vilotte博士と議論する様子


2018/9/30〜2018/10/23
スロー地震学海外派遣報告書
京都大学大学院理学研究科 修士1年 井上 智裕


OBP投入直前

10月6日から10月19日にかけて、ニュージーランド北島ヒクランギ沖にて、R.V. Tangaroaに乗船し、海底観測機器を設置、回収を行いました。9月30日から10月5日、10月20日から10月23日までは陸上で準備や片付けを行いました。 今回、私は海底圧力計(OBP)、地震計(OBS)などの観測機器を間近で組み立て、それを海に投入する所までしました。今回の航海で印象に残っているのは、海底圧力計の組み立てと自分の英語力の欠如に痛感したということです。海底圧力計データは僕が扱っているデータでもあるので、特に関心を持って仕組みや組み立てを教わり、海底圧力計がこんな風に組み立てられているのだなと体験を通して感じることができ、大変有意義な時間を過ごすことができました。


デッキから撮った夕焼け

特にOBPの準備作業の多さには驚きました。ガラス球を拭いたり、電子基板をセットするであったり、電池作ったり、投入直前には通信のチェックやボルトの緩みがないかなど、様々なことに気を使い、準備致しました。作業量に驚いたと同時にデータを取るためにかなりの労力がかかっているのだなと感じました。普段何気無く使っている様々なデータを取ることの大変さを痛感しました。そのような様々な準備作業を終え、いざ投入するとなった時は機器の最終チェックをするのでより一層甲板の雰囲気が緊迫し、その中での作業は私自身とても緊張しました。投入し終えると、すごく達成感を感じました。かなり疲れましたが、船上からの景色を見て力を受け最後までやりきることができました。

また、自分の言いたいことが言えないもどかしさを大変感じました。甲板や食堂などで、美味しいご飯を食べながら、外国の方と研究に関する会話やたわいもない会話をしましたが、上手く聞き取れず聞き返すことが多々ありました。なんとかその場はジェスチャーなどを混じえて伝えることができたのですが、もう少ししっかり話すことができたらもっと情報を交換することができるなと思いました。船上での事務的な連絡も英語で、重要な連絡事項をすごく速く喋るので聞き取るのに大変苦労しました。苦労しながらも、目の前に広がる美しい景色を見て力を受け、自分を奮い立たせることができました。これからは自分の英語力向上のために、留学生と話したり、本を読んだりなど英語に触れる機会を増やしていきたいと思います。 今回のNZ渡航は私にとって、刺激的な経験となり、とても有意義な時間を過ごすことができました。また機会があれば行きたいです。最後になりましたが、このような経験ができたのもスロー地震学関係者の方々の支えがあったおかげでございます。本プロジェクトのスロー地震学関係者の皆様に感謝申し上げます。


2017/10/2〜2017/10/6
"EARTHQUAKES: nucleation, triggering, rupture, and relationships to aseismic processes"
東京大学地震研究所 修士1年 馬場 慧


ポスター発表で議論する様子。

2017年10月2日から、2017年10月6日まで、フランスのコルシカ島Cargeseで行われた研究集会” EARTHQUAKES: nucleation, triggering, rupture, and relationships to aseismic processes”に参加しました。
私はポスターセッションで発表および参加者との議論を行うとともに、世界各国から参加した研究者による講義や口頭発表を聞き、地震学に関する知識の習得に励みました。5日間という短い期間でしたが、世界中の研究者の方々の話を聞くことができ、時には議論したりアドバイスをいただけたりして、大変貴重な経験ができました。 参加者はヨーロッパの方が多かったのですが、講義およびポスター発表を通じ、ヨーロッパの参加者は理論・モデルの研究をしている方の割合が多いと感じました。日本は沈み込み帯の近くに位置し、地震が頻繁に起きるため、観測に力を入れている印象がありますが、ヨーロッパでは地中海沿岸東部を除くと地震の発生は多くないため、理論やモデルに力を入れている方が多いという話を聞きました。私自身は地震波データの解析を行っており、理論・モデル面の知識は浅く、話についていくのに苦労しましたが、地震学について自分とは異なるアプローチを行なっている方々の話を聞くことができ、大変有意義でした。


Institut d'Études Scientifiques de Cargèse
の全景。庭の奥に、講義や口頭発表が行われた
講義室が存在する。

また、日本で行われる学会や研究集会では、日本近辺の地震および沈み込み帯の話を聞くことがどうしても多くなります。今回、参加者の方々が研究対象として扱っている地域は、チリ・メキシコ・カスケード・ニュージーランドなど多岐にわたり、日本以外の地震の研究についても見聞を広めることができました。 コルシカ島スクールに参加した感想として、多くの論文を読んで地震学に関する知識を広げる必要があると思いましたが、それだけではなく英語力の向上にも励まねばならないと感じました。 初めて多くの日本人以外の方々を相手にポスター発表を行ったため、相手の言っていることが聞き取れず何回か聞き返してしまったり、自分の思っていることをうまく英語で伝えられなかったりした場面が多々ありました。 食事の場面での雑談も基本的には英語なので、大変苦労しました。


ポスター発表の会場の風景。ポスター発表は
このように庭にポスターを吊り下げて行われた。

今後は日常生活でも英語に触れる機会を増やし、英語の力も上げていきたいと思います。 最後になりますが、この度はこのような貴重な機会を与えてくださり、ありがとうございました。スロー地震学の関係者の皆様に深く感謝いたします。


2017/10/2〜2017/10/6
"EARTHQUAKES: nucleation, triggering, rupture, and relationships to aseismic processes"
東京大学地震研究所 修士1年 疋田 朗

2017年10月2日から10月6日までの5日間、フランスのコルシカ島で”EARTHQUAKES: nucleation, triggering, rupture, and relationships to aseismic processes”をテーマとして開催されたサマースクールに私は参加しました。このサマースクールでは、各国からの教授陣の講義に加えて学生の口頭発表やポスター発表があり、私はポスター発表を行いました。 今回のスクールで一番痛感したことは、自身の英語の拙さと、知識の浅さ、幅の狭さでした。例えば口頭発表を聞いているとき、私が専門として研究を行なっているスロー地震の観測についての話題にはついていけても、シミュレーションの話題になるとフレーズが聞き取れず、スライドに書いてある単語の意味を調べているうちに、次のスライドへ移ってしまうようなこともしばしばありました。もっとこれから、多様な論文を読み英語に慣れ親しむ必要があると感じました。 理解しきれない発表が続いた時には自信を無くして落ち込んでしまいそうなこともあったのですが、コルシカの美しい海を見ながらそこで知り合った学生の人達と学問に止まらない多様な話をすることで、気持ちを奮い立てることができました。

私のポスター発表では多くの人が見にきてくださり、日没後も多くの議論を行いました。様々な人から貴重な意見をいただくことができ、非常に有意義な時間となりました。 今回のサマースクールに参加することで、日本で会うことが難しい方々からお話を伺うことができたほか、英語を使わざるを得ない状況に放り込まれることで、自身の英語の弱さと向き合うことができました。このような貴重な体験ができたのも、ひとえにスロー地震学関連の皆様のおかげです。心より感謝を申し上げます。誠にありがとうございました。


2017/10/2〜2017/10/6
"EARTHQUAKES: nucleation, triggering, rupture, and relationships to aseismic processes"
東京大学 大学院理学系研究科 博士3年 佐藤 大祐

10月2日から10月6日にかけて、フランスコルシカ島Institut d'Etudes Scientifiques de Cargèseにて、サマースクール: EARTHQUAKES: nucleation, triggering, rupture, and relationships to aseismic processesに参加しました。


Baoning Wuと議論

世界中の地震研究者総勢約80名が一同に会して地震発生の観測、実験、理論、さらには地震検出アルゴリズムまで様々な研究成果が示されていくなか、日本勢としては7名が参加し、恥ずかしながら私も自分の低速摩擦やシミュレーションアルゴリズムに関する研究について議論する機会を得ました。滞在時は朝の8時半から発表が始まり、日の暮れ始める6時ごろに発表が終わるやいなや、夜は0時を回ってもsante!を掛け声にひたすらに議論を続ける毎日でした。
滞在中は様々な研究者(質問を含めるとほぼ半数)と研究について議論を重ね、幅広い知見を得ることができました。まず、折しも摩擦実験の第一人者であるChris Maroneが参加していたため果敢に議論を挑みましたが、完敗しました。私の提案した速度状態依存摩擦則の発展則と実験との整合性のアピールについて、結果が通じなかった悔しい思い出です。他方、同様の路線で摩擦の研究を進めていた(そして先を越された!)Hugo Perfettiniには結果の内容についてかなりエンカレッジングな言葉をいただき、大きく勇気付けられました。また、PMMAを用いた室内実験をしているPaul A. Selvaduraiには是非パブリッシュ時には俺のデータを使ってくれとの熱いメッセージをもらい、実験との比較についてかなり立ち入った議論ができました。現在は博士論文に追われていますが腰を落ち着けたら、先方から持ちかけられた共同研究にとりかかれたらなと思っています。世界的には思っていたよりシミュレーション人口が多いようで、そちらについてもNadia LapustaグループのValère Lambert、北京大学出身のBaoning Wuなど年の近い人たちと突っ込んだ(口を悪くした)良い議論ができました。特に、以前来日していたHarsha S. Bhatの学生のPierre RomanetとはFMM, H-matrixベースのBIEMアルゴリズムについてかなり建設的な議論ができました。


Paul A. Selvaduraiと

また、境界積分方程式法(BIEM)では広く知られたRaul Madariagaと議論する機会を得ました。非平面断層のシミュレーション、特に地表断層はシミュレーションの次の乗り越えるべき課題の一つのようです。他にも、世界的にはすでに断層の細部(たとえばマイクロサイズミシティ、断層ダメージ、断層形状)の研究が始まっているようで、興味深い研究をいくつも聞くことができました。ただ、議論の詳細を詰めていくにはもう少し僕の英語の練習が必要なようです。
会自体のテーマの都合で発表内容が非常に幅広く、研究の似た者同士で詳細を詰めるというよりは様々な方面から今後の研究の全体的な展望を議論し合うという感じで、個人的には大変新鮮な体験でした。あとで井出さんに聞いたところでは今回のスクールの発表レベルは世界トップクラスだったとのことです。このような貴重な会に参加する機会を与えてくださった本プロジェクト「スロー地震学」関係者のみなさまに心より感謝致します。


2017/7/12〜2017/9/13
海外派遣報告 2017年度前期海外若手派遣者
京都大学後期博士課程1年 片上 智史

知識、経験、技術を取得し、困難、戸惑い、焦りを感じた2ヶ月でした。
石油採掘で誘発される低周波微動の可能性。
第一の訪問先Miami Universityでお世話になったMike Brudzinski博士とは理学的な研究内容のみならず、上記のような工学的な内容についても議論を行いました。


Mike Brudzinski
at Miami Univ.

現段階ではまだ、石油発掘に伴う流体注入のノイズが大きく低周波微動の発見には至っていないとのことでしたが、私が修士課程で目指したノイズレベルの低周波微動の検出に近い目標を持つ本話題で、今後の研究の進歩に大いに役立つ議論を行えたと感じています。University of California, Riverside (UCR)では、Cascadiaにおけるスロー地震に関する研究に携わりました。日本ではやったことのなかった解析手法に携わり、なかなか理解できないところも多々ありましたが、Abhijit Ghosh博士と彼の大学院生の助けもあり、帰国後もこの研究を続けていくことができています。 今回のアメリカの滞在で最も印象に残っていることは、日本との研究環境の違いでした。特に、計算サーバやデータのストレージに関しては日本の研究機関がどれほど恵まれているかを実感しました。私が日本で研究している際は、研究成果を保存するときにストレージの容量に悩まされることはほとんどありません。しかしUCRの学生たちは、学生が共有して使用するlinuxの計算サーバやストレージの容量を日々気にしており、容量をできるだけ使わないコードの作成を常に心がけている様子でした(コードを最適化することを”sexy”と呼んでいましたのも印象に残っています)。そのような環境でも後世に残る重要な知見を報告している彼らと比べると、恵まれた環境にいる私はより多くの成果を残す必要があると強く感じました。 さらにMiamiでもUCRでも感じましたが、これらの機関に所属する学生は自分が行う研究内容に関して誇りを持っていました。


UCR geology department

もちろん日本の学生も持っているのですが、彼らはその誇りや考え、信念を臆することなく同大学の教員や学生に話し、飲み屋での雑談が一転急に議論へと発展します。その意見のすべてが筋が通っているわけではありませんが、臆することないその姿勢や自らの考えを知らしめようとする意識の高さに驚きを隠せませんでした。結果として、彼らとの交流が自らの研究姿勢や研究の最終目標を見直す良い機会になりました。また議論をする上で英語力の乏しさを痛感しました。いくら議論したくても話せない、聞けないでは意味がない。特に彼らの話すスピードは議論が盛り上がるにつれ速くなります。この悔しい気持ちを忘れずに英語力を向上させる努力を続けていきます。 最後になりましたが、「スロー地震学」海外若手派遣より、大変貴重な経験を得ることができました。このような貴重な機会を与えてくださったスロー地震学の関係者の皆様に心からお礼申し上げます。ありがとうございました。


2017/8/9〜2017/9/8
「スロー地震学」 海外渡航レポート
東京大学地震研究所 博士1年 栗原 亮

2017年8月9日から2017年9月8日にかけてアメリカ合衆国ジョージア州アトランタ市にあるジョージア工科大学に一ヶ月間滞在してZhigang Peng 教授と共同研究を行いました。


8月25日にGeorgia Institute of technologyで
行なわれたセミナーの風景

1ヶ月という短い期間でしたが,教授を含め多くの方と議論ができ,今後の研究活動に応用可能な様々な知見を得ました。 研究内容は遠地地震の表面波によって誘発される深部低周波微動 (誘発微動)についてであり,これは私の研究テーマであるとともにPeng 教授は誘発微動研究において世界的な研究者の一人です。 滞在前半は,主に自分の今までの研究の紹介や最近の興味深い誘発微動の観測例などについての議論を行いました。特に8月17日・18日はPeng 教授の研究室の卒業生であるNorthwestern university の Kevin Chao 博士が来てくださり,研究室の他のメンバーも含めて丸2日濃密な議論をすることができました。この時に発見した興味深い観測例もあり,今後も共同で研究を進めていく予定です。 滞在後半では,誘発微動を自動で検出する方法の開発に取り組みました。

実はこのテーマは2年前の研究集会で私が発表していた内容でその後は別のテーマの解析を行っていたためしばらく触れていませんでしたが,Peng 教授はその集会での発表を覚えてくれていたようで,この手法開発について取り組みました。 ここでは,機械学習などのコンピューターサイエンス関連の出身の方などとも議論を行い,機械学習の技術を使用した検出法開発の検討を行いました。滞在期間は短かったので,これらの研究内容に関しては日本に戻ってからも時々メールや学会等で連絡を取りながら進めていく計画です。 この度はこのような貴重な機会を提供してくださり、ありがとうございました。
「スロー地震学」に関係する皆様へ感謝申し上げます。


2017/3/4〜2017/3/20
「スロー地震学」若手海外派遣事業による海外渡航報告
広島大学大学院理学研究科 北 佐枝子

2017年3月4日から3月20日にかけて,カルフォルニア大学デービス校(UC Davis)およびワシントン大学(University of Washington)にて在外研究を1週間ずつ行いました. 先方とのスケジュール調整などの理由から,当初の予定より短い滞在となりましたが,受け入れ研究者の協力で有意義に過ごすことができました.


UC Davis地球惑星科学学科

UC Davisはカルフォルニア州の州都であるサクラメント市から車ですぐのDavis市にあり,治安が良いことで有名な静かな町の中にあります. 受け入れ研究者のDonna Eberhart-Phillips博士は,現在の所属であるUC Davisに来る前にNZのGNSに長く所属していたこともあってNZの速度構造および減衰構造の推定に関して経験豊富な研究者です. 最近はNZの地下構造とスロー地震との関係について詳しく調べており,観測環境の充実した日本との比較研究に大変興味を持っています. 私は,Donna とは6年前から共同研究をしており,今回の彼女のところでの在外研究は3回目でした. 今回は日本列島の速度・減衰構造とスロー地震についての議論を進める共同研究を行いましたが,リラックスしつつ研究活動に集中することができました. 約1週間強という短い滞在期間でしたが,できるだけ効率的に仕事が捗るように協力していただきました. 大学訪問初日には,日本でのスロー地震研究の動向についての話や彼女が現在執筆中のNZでの解析結果についての議論,日本とNZの比較についてを,丸1日たっぷりかけて議論をしていただきました. また滞在中にはセミナー発表も行わせていただき,名著Geodynamicsの著者であるDonald Turcotto 名誉教授との昼食会も開いていただきました.


ワシントン大学地球惑星科学科における
Heidi Houston教授とJohn Vidale教授の
居室で撮影

シアトルにあるワシントン大学では,スロー地震の研究者として有名なHeidi Houston教授と共に スロー地震の発生間隔に関する研究を行いました. Heidi Houston教授は,スラブ内地震の研究についての実績も持ちつつ,近年はスロー地震と潮汐に関する研究でも成果も出されている研究者です. 元々カルテクの金森先生のもとで学位取得をしており,何人かの日本人学生との共同研究の経験もあるためか,日本人との研究活動や議論も慣れているようでした. 彼女との共同研究内容はHeidiと知り合った3,4年前に開始し,細々と続けていたテーマであったのですが,今回の渡航により効率的に進めることができました. こちらでも約1週間だけの滞在を有意義に過ごせるように配慮いただいたおかげで,解析を予想よりも進ませることができました. ワシントン大学でもセミナー発表をさせていただき,何人かの地震学者から極めて有益なコメントをいただき,研究内容の改善につながる知見を得ることができました. ワシントン大学のキャンパスには外観が美術館のような建物が多く,その1つである図書館はその景観だけでなく中身も充実しており,計算プログラムのコーディングなどは図書館で行ったりもしていました. 大学周辺の環境も暗くなるまでは安全かつ快適であり,日本食のレストランもそれなりにあり,研究活動に集中することができました.


ワシントン大学の図書館

上記のような海外渡航により開始・推進できた共同研究は,帰国後も解析を所属先の広島大学で行うことで継続し,またメールにて共同研究者と議論等を行って進めております. それらを通して,スロー地震と地下構造との関係や,スラブ内地震とスロー地震との関係についての理解を深め,B01班の研究目的である「スロー地震の発生環境の地下構造解析による把握」について少しでも貢献できれば,と考えております. 最後になりましたが,上記のような在外研究は,スロー地震学若手海外派遣事業による旅費支援により可能となりました.記して深く感謝いたします.