スロー地震学

スロー地震学 - 低速変形から高速すべりまでの地震現象の統一的理解に向けて

集会等トピックス新任者紹介

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  4. 新任者紹介
  5. 若手海外報告

2017/10/2〜2017/10/6
"EARTHQUAKES: nucleation, triggering, rupture, and relationships to aseismic processes"
東京大学地震研究所 修士1年 馬場 慧


ポスター発表で議論する様子。

2017年10月2日から、2017年10月6日まで、フランスのコルシカ島Cargeseで行われた研究集会” EARTHQUAKES: nucleation, triggering, rupture, and relationships to aseismic processes”に参加しました。
私はポスターセッションで発表および参加者との議論を行うとともに、世界各国から参加した研究者による講義や口頭発表を聞き、地震学に関する知識の習得に励みました。5日間という短い期間でしたが、世界中の研究者の方々の話を聞くことができ、時には議論したりアドバイスをいただけたりして、大変貴重な経験ができました。 参加者はヨーロッパの方が多かったのですが、講義およびポスター発表を通じ、ヨーロッパの参加者は理論・モデルの研究をしている方の割合が多いと感じました。日本は沈み込み帯の近くに位置し、地震が頻繁に起きるため、観測に力を入れている印象がありますが、ヨーロッパでは地中海沿岸東部を除くと地震の発生は多くないため、理論やモデルに力を入れている方が多いという話を聞きました。私自身は地震波データの解析を行っており、理論・モデル面の知識は浅く、話についていくのに苦労しましたが、地震学について自分とは異なるアプローチを行なっている方々の話を聞くことができ、大変有意義でした。


Institut d'Études Scientifiques de Cargèse
の全景。庭の奥に、講義や口頭発表が行われた
講義室が存在する。

また、日本で行われる学会や研究集会では、日本近辺の地震および沈み込み帯の話を聞くことがどうしても多くなります。今回、参加者の方々が研究対象として扱っている地域は、チリ・メキシコ・カスケード・ニュージーランドなど多岐にわたり、日本以外の地震の研究についても見聞を広めることができました。 コルシカ島スクールに参加した感想として、多くの論文を読んで地震学に関する知識を広げる必要があると思いましたが、それだけではなく英語力の向上にも励まねばならないと感じました。 初めて多くの日本人以外の方々を相手にポスター発表を行ったため、相手の言っていることが聞き取れず何回か聞き返してしまったり、自分の思っていることをうまく英語で伝えられなかったりした場面が多々ありました。 食事の場面での雑談も基本的には英語なので、大変苦労しました。


ポスター発表の会場の風景。ポスター発表は
このように庭にポスターを吊り下げて行われた。

今後は日常生活でも英語に触れる機会を増やし、英語の力も上げていきたいと思います。 最後になりますが、この度はこのような貴重な機会を与えてくださり、ありがとうございました。スロー地震学の関係者の皆様に深く感謝いたします。


2017/10/2〜2017/10/6
"EARTHQUAKES: nucleation, triggering, rupture, and relationships to aseismic processes"
東京大学地震研究所 修士1年 疋田 朗

2017年10月2日から10月6日までの5日間、フランスのコルシカ島で”EARTHQUAKES: nucleation, triggering, rupture, and relationships to aseismic processes”をテーマとして開催されたサマースクールに私は参加しました。このサマースクールでは、各国からの教授陣の講義に加えて学生の口頭発表やポスター発表があり、私はポスター発表を行いました。 今回のスクールで一番痛感したことは、自身の英語の拙さと、知識の浅さ、幅の狭さでした。例えば口頭発表を聞いているとき、私が専門として研究を行なっているスロー地震の観測についての話題にはついていけても、シミュレーションの話題になるとフレーズが聞き取れず、スライドに書いてある単語の意味を調べているうちに、次のスライドへ移ってしまうようなこともしばしばありました。もっとこれから、多様な論文を読み英語に慣れ親しむ必要があると感じました。 理解しきれない発表が続いた時には自信を無くして落ち込んでしまいそうなこともあったのですが、コルシカの美しい海を見ながらそこで知り合った学生の人達と学問に止まらない多様な話をすることで、気持ちを奮い立てることができました。

私のポスター発表では多くの人が見にきてくださり、日没後も多くの議論を行いました。様々な人から貴重な意見をいただくことができ、非常に有意義な時間となりました。 今回のサマースクールに参加することで、日本で会うことが難しい方々からお話を伺うことができたほか、英語を使わざるを得ない状況に放り込まれることで、自身の英語の弱さと向き合うことができました。このような貴重な体験ができたのも、ひとえにスロー地震学関連の皆様のおかげです。心より感謝を申し上げます。誠にありがとうございました。


2017/10/2〜2017/10/6
"EARTHQUAKES: nucleation, triggering, rupture, and relationships to aseismic processes"
東京大学 大学院理学系研究科 博士3年 佐藤 大祐

10月2日から10月6日にかけて、フランスコルシカ島Institut d'Etudes Scientifiques de Cargèseにて、サマースクール: EARTHQUAKES: nucleation, triggering, rupture, and relationships to aseismic processesに参加しました。


Baoning Wuと議論

世界中の地震研究者総勢約80名が一同に会して地震発生の観測、実験、理論、さらには地震検出アルゴリズムまで様々な研究成果が示されていくなか、日本勢としては7名が参加し、恥ずかしながら私も自分の低速摩擦やシミュレーションアルゴリズムに関する研究について議論する機会を得ました。滞在時は朝の8時半から発表が始まり、日の暮れ始める6時ごろに発表が終わるやいなや、夜は0時を回ってもsante!を掛け声にひたすらに議論を続ける毎日でした。
滞在中は様々な研究者(質問を含めるとほぼ半数)と研究について議論を重ね、幅広い知見を得ることができました。まず、折しも摩擦実験の第一人者であるChris Maroneが参加していたため果敢に議論を挑みましたが、完敗しました。私の提案した速度状態依存摩擦則の発展則と実験との整合性のアピールについて、結果が通じなかった悔しい思い出です。他方、同様の路線で摩擦の研究を進めていた(そして先を越された!)Hugo Perfettiniには結果の内容についてかなりエンカレッジングな言葉をいただき、大きく勇気付けられました。また、PMMAを用いた室内実験をしているPaul A. Selvaduraiには是非パブリッシュ時には俺のデータを使ってくれとの熱いメッセージをもらい、実験との比較についてかなり立ち入った議論ができました。現在は博士論文に追われていますが腰を落ち着けたら、先方から持ちかけられた共同研究にとりかかれたらなと思っています。世界的には思っていたよりシミュレーション人口が多いようで、そちらについてもNadia LapustaグループのValère Lambert、北京大学出身のBaoning Wuなど年の近い人たちと突っ込んだ(口を悪くした)良い議論ができました。特に、以前来日していたHarsha S. Bhatの学生のPierre RomanetとはFMM, H-matrixベースのBIEMアルゴリズムについてかなり建設的な議論ができました。


Paul A. Selvaduraiと

また、境界積分方程式法(BIEM)では広く知られたRaul Madariagaと議論する機会を得ました。非平面断層のシミュレーション、特に地表断層はシミュレーションの次の乗り越えるべき課題の一つのようです。他にも、世界的にはすでに断層の細部(たとえばマイクロサイズミシティ、断層ダメージ、断層形状)の研究が始まっているようで、興味深い研究をいくつも聞くことができました。ただ、議論の詳細を詰めていくにはもう少し僕の英語の練習が必要なようです。
会自体のテーマの都合で発表内容が非常に幅広く、研究の似た者同士で詳細を詰めるというよりは様々な方面から今後の研究の全体的な展望を議論し合うという感じで、個人的には大変新鮮な体験でした。あとで井出さんに聞いたところでは今回のスクールの発表レベルは世界トップクラスだったとのことです。このような貴重な会に参加する機会を与えてくださった本プロジェクト「スロー地震学」関係者のみなさまに心より感謝致します。


2017/7/12〜2017/9/13
海外派遣報告 2017年度前期海外若手派遣者
京都大学後期博士課程1年 片上 智史

知識、経験、技術を取得し、困難、戸惑い、焦りを感じた2ヶ月でした。
石油採掘で誘発される低周波微動の可能性。
第一の訪問先Miami Universityでお世話になったMike Brudzinski博士とは理学的な研究内容のみならず、上記のような工学的な内容についても議論を行いました。


Mike Brudzinski
at Miami Univ.

現段階ではまだ、石油発掘に伴う流体注入のノイズが大きく低周波微動の発見には至っていないとのことでしたが、私が修士課程で目指したノイズレベルの低周波微動の検出に近い目標を持つ本話題で、今後の研究の進歩に大いに役立つ議論を行えたと感じています。University of California, Riverside (UCR)では、Cascadiaにおけるスロー地震に関する研究に携わりました。日本ではやったことのなかった解析手法に携わり、なかなか理解できないところも多々ありましたが、Abhijit Ghosh博士と彼の大学院生の助けもあり、帰国後もこの研究を続けていくことができています。 今回のアメリカの滞在で最も印象に残っていることは、日本との研究環境の違いでした。特に、計算サーバやデータのストレージに関しては日本の研究機関がどれほど恵まれているかを実感しました。私が日本で研究している際は、研究成果を保存するときにストレージの容量に悩まされることはほとんどありません。しかしUCRの学生たちは、学生が共有して使用するlinuxの計算サーバやストレージの容量を日々気にしており、容量をできるだけ使わないコードの作成を常に心がけている様子でした(コードを最適化することを”sexy”と呼んでいましたのも印象に残っています)。そのような環境でも後世に残る重要な知見を報告している彼らと比べると、恵まれた環境にいる私はより多くの成果を残す必要があると強く感じました。 さらにMiamiでもUCRでも感じましたが、これらの機関に所属する学生は自分が行う研究内容に関して誇りを持っていました。


UCR geology department

もちろん日本の学生も持っているのですが、彼らはその誇りや考え、信念を臆することなく同大学の教員や学生に話し、飲み屋での雑談が一転急に議論へと発展します。その意見のすべてが筋が通っているわけではありませんが、臆することないその姿勢や自らの考えを知らしめようとする意識の高さに驚きを隠せませんでした。結果として、彼らとの交流が自らの研究姿勢や研究の最終目標を見直す良い機会になりました。また議論をする上で英語力の乏しさを痛感しました。いくら議論したくても話せない、聞けないでは意味がない。特に彼らの話すスピードは議論が盛り上がるにつれ速くなります。この悔しい気持ちを忘れずに英語力を向上させる努力を続けていきます。 最後になりましたが、「スロー地震学」海外若手派遣より、大変貴重な経験を得ることができました。このような貴重な機会を与えてくださったスロー地震学の関係者の皆様に心からお礼申し上げます。ありがとうございました。


2017/8/9〜2017/9/8
「スロー地震学」 海外渡航レポート
東京大学地震研究所 博士1年 栗原 亮

2017年8月9日から2017年9月8日にかけてアメリカ合衆国ジョージア州アトランタ市にあるジョージア工科大学に一ヶ月間滞在してZhigang Peng 教授と共同研究を行いました。


8月25日にGeorgia Institute of technologyで
行なわれたセミナーの風景

1ヶ月という短い期間でしたが,教授を含め多くの方と議論ができ,今後の研究活動に応用可能な様々な知見を得ました。 研究内容は遠地地震の表面波によって誘発される深部低周波微動 (誘発微動)についてであり,これは私の研究テーマであるとともにPeng 教授は誘発微動研究において世界的な研究者の一人です。 滞在前半は,主に自分の今までの研究の紹介や最近の興味深い誘発微動の観測例などについての議論を行いました。特に8月17日・18日はPeng 教授の研究室の卒業生であるNorthwestern university の Kevin Chao 博士が来てくださり,研究室の他のメンバーも含めて丸2日濃密な議論をすることができました。この時に発見した興味深い観測例もあり,今後も共同で研究を進めていく予定です。 滞在後半では,誘発微動を自動で検出する方法の開発に取り組みました。

実はこのテーマは2年前の研究集会で私が発表していた内容でその後は別のテーマの解析を行っていたためしばらく触れていませんでしたが,Peng 教授はその集会での発表を覚えてくれていたようで,この手法開発について取り組みました。 ここでは,機械学習などのコンピューターサイエンス関連の出身の方などとも議論を行い,機械学習の技術を使用した検出法開発の検討を行いました。滞在期間は短かったので,これらの研究内容に関しては日本に戻ってからも時々メールや学会等で連絡を取りながら進めていく計画です。 この度はこのような貴重な機会を提供してくださり、ありがとうございました。
「スロー地震学」に関係する皆様へ感謝申し上げます。


2017/3/4〜2017/3/20
「スロー地震学」若手海外派遣事業による海外渡航報告
広島大学大学院理学研究科 北 佐枝子

2017年3月4日から3月20日にかけて,カルフォルニア大学デービス校(UC Davis)およびワシントン大学(University of Washington)にて在外研究を1週間ずつ行いました. 先方とのスケジュール調整などの理由から,当初の予定より短い滞在となりましたが,受け入れ研究者の協力で有意義に過ごすことができました.


UC Davis地球惑星科学学科

UC Davisはカルフォルニア州の州都であるサクラメント市から車ですぐのDavis市にあり,治安が良いことで有名な静かな町の中にあります. 受け入れ研究者のDonna Eberhart-Phillips博士は,現在の所属であるUC Davisに来る前にNZのGNSに長く所属していたこともあってNZの速度構造および減衰構造の推定に関して経験豊富な研究者です. 最近はNZの地下構造とスロー地震との関係について詳しく調べており,観測環境の充実した日本との比較研究に大変興味を持っています. 私は,Donna とは6年前から共同研究をしており,今回の彼女のところでの在外研究は3回目でした. 今回は日本列島の速度・減衰構造とスロー地震についての議論を進める共同研究を行いましたが,リラックスしつつ研究活動に集中することができました. 約1週間強という短い滞在期間でしたが,できるだけ効率的に仕事が捗るように協力していただきました. 大学訪問初日には,日本でのスロー地震研究の動向についての話や彼女が現在執筆中のNZでの解析結果についての議論,日本とNZの比較についてを,丸1日たっぷりかけて議論をしていただきました. また滞在中にはセミナー発表も行わせていただき,名著Geodynamicsの著者であるDonald Turcotto 名誉教授との昼食会も開いていただきました.


ワシントン大学地球惑星科学科における
Heidi Houston教授とJohn Vidale教授の
居室で撮影

シアトルにあるワシントン大学では,スロー地震の研究者として有名なHeidi Houston教授と共に スロー地震の発生間隔に関する研究を行いました. Heidi Houston教授は,スラブ内地震の研究についての実績も持ちつつ,近年はスロー地震と潮汐に関する研究でも成果も出されている研究者です. 元々カルテクの金森先生のもとで学位取得をしており,何人かの日本人学生との共同研究の経験もあるためか,日本人との研究活動や議論も慣れているようでした. 彼女との共同研究内容はHeidiと知り合った3,4年前に開始し,細々と続けていたテーマであったのですが,今回の渡航により効率的に進めることができました. こちらでも約1週間だけの滞在を有意義に過ごせるように配慮いただいたおかげで,解析を予想よりも進ませることができました. ワシントン大学でもセミナー発表をさせていただき,何人かの地震学者から極めて有益なコメントをいただき,研究内容の改善につながる知見を得ることができました. ワシントン大学のキャンパスには外観が美術館のような建物が多く,その1つである図書館はその景観だけでなく中身も充実しており,計算プログラムのコーディングなどは図書館で行ったりもしていました. 大学周辺の環境も暗くなるまでは安全かつ快適であり,日本食のレストランもそれなりにあり,研究活動に集中することができました.


ワシントン大学の図書館

上記のような海外渡航により開始・推進できた共同研究は,帰国後も解析を所属先の広島大学で行うことで継続し,またメールにて共同研究者と議論等を行って進めております. それらを通して,スロー地震と地下構造との関係や,スラブ内地震とスロー地震との関係についての理解を深め,B01班の研究目的である「スロー地震の発生環境の地下構造解析による把握」について少しでも貢献できれば,と考えております. 最後になりましたが,上記のような在外研究は,スロー地震学若手海外派遣事業による旅費支援により可能となりました.記して深く感謝いたします.