カテゴリー別アーカイブ: 部門・センターの研究活動

3.8.3 国際活動

Muographers towards SDGs

 2019年9月9日,東京大学,国際連合大学共同主催,駐日イタリア大使館,駐日ハンガリー大使館後援,駐日欧州連合代表部その他国内外機関協力により,国際シンポジウム「Muographers towards SDGs」を国連大学本部エリザベス・ローズ国際会議場で主催した.日本,イタリア,ハンガリー,インドから産学官民60名程度の参加があった.

日伊ハンガリー国際協定

 2019年9月9日,東京大学,ウィグナー物理学研究センター,カターニャ大学はハンガリー大使並びにイタリア大使代理科学担当参事官臨席のもと,国連大学本部レセプション・ホールに於いてCollaborative Research Agreement「Development of the muography monitoring system with an Italy-Hungary-Japan effort toward SDGs」の調印式典を主催した.

Muographers 2019

 2019年9月24日-9月25日の日程で,駐日チリ大使館,駐日イタリア大使館,駐日ハンガリー大使館後援,駐日欧州連合代表部その他国内外機関協力により,チリ大使公邸及び都内ホテルに於いてMuographers 2019 General Assemblyを主催した.日,英,仏,伊,ハンガリー5か国12機関から60名程度の参加があった.

MAGMAワークショップ

 2019年9月26日,国際ワークショップ「Multi-Aspect Geo-Muography Array」を開催した.会議には,5か国から産学官民15機関が参加して,第24期学術の大型研究計画に関するマスタープラン「地球惑星科学・諸科学・社会とのミュオグラフィ連携研究基盤構築」に関する議論を行った.

Horizon 2020

 欧州科学技術基本計画Horizon2020において国際スタッフ交流事業(RISE)(総予算1億7500万ユーロ81事業)が採択され,ミュオグラフィ分野の日欧ネットワーキングにおいて東京大学は重要な一翼を担う. 2019年度は8月と3月にそれぞれ,欧州からの若手研究者を受け入れ,桜島ミュオグラフィ観測所(SMO)の強化業務,社会基盤保全に関する産学連携研究業務等に参画した.

3.8.2 ラジオグラフィー解析による研究

(a) 深層学習による画像認識技術を用いたミュオグラフィ画像解析

 東京大学医学部附属病院コンピュータ画像診断学/予防医学講座と共同で画像認識で威力を発揮するconvolutional neural network(CNN)を用いた深層学習の手法を用いた,火山の噴火予測への適用可能性を探索するスタディを開始した.同講座では医用画像データをもとにした画像診断AIソフトウェアおよびそのプラットフォームの開発を行っている.医学領域では医用画像を表示,解析する技術が高度に発達しており,特に近年ではディープラーニングを用いた画像解析により,AIソフトウェアが人間の目以上の画像識別能力を示すに至っている.一方,今後膨大な数の時系列的画像が生成されることが予想されるミュオグラフィ分野においても,医学分野において高度に発達してきた画像解析技術を応用し,ミュオグラフィによる火山内部構造の新たな解析技術の確立を目指す研究は意義深い.火山のミュオグラフィは素粒子の飛跡情報を火山内部の異常の有無の判断や質的な評価につなげる事を最終目的としており,医用画像の解析と共通する点が多い.

 2019年度は,2016年から2017年にかけて桜島におけるミュオグラフィ観測で得られたデータに対して,画像認識で威力を発揮するconvolutional neural network(CNN)を用いた深層学習の手法の適用可能性を探るパイロットスタディを行った.直前の連続する7日間のミュオグラフィの画像データから翌日の噴火予測を後方視的に試みたところ,ROC曲線の下方面積(AUC)で0.726というある程度の確率での予測が可能であった.この研究結果によりミュオグラフィのデータが火山噴火の前に系統的な変化を示している可能性が示唆された.機械学習による予測を理解できるように工夫されたinterpretable machine learning(解釈・説明可能な機械学習)の手法等を活用して,ミュオグラフィによる火山噴火予測が成功している場合の主な要因を分析することで,火山噴火前のミュオグラフィに表れている火山の内部構造の変化の研究へとつなげていく.

(b) 全方位ミュオグラフィによる火山観測研究

 火山体の内部構造は,火山噴火のダイナミクスを反映すると共に,火山活動の推移や歴史を記録している.噴火現象を理解する上で重要な情報の一つは,マグマを地表に供給するシステムである火道の形状,特に浅部の形状である.例えば噴火様式を決定する最重要なパラメータのひとつである噴出率は浅部火道形状に支配されている可能性が指摘されている(Costa et al., J. Volcanol. Geotherm. Res., 2007) .爆発的噴火の時に噴煙が噴煙柱として上空にあがるか,火砕流として地表面を流れ下るかは,浅部の火口・火道形状に依存するという最新報告もある (Koyaguchi et al., J. Geophys. Res. : Solid Earth, 123, 2018, page7461–7482 & 7483–7508).地震波などを用いたこれまでの観測方法では浅部における火山体の詳細な内部構造を知ることは難しい.
 これを可能にするのがミュオグラフィである.ただし,これまで行われてきた1方向からの観測による投影画像では,ミューオンの経路に沿った山体の積分密度しか得られず,2~3方向からのステレオ観測では火道を三次元的に解像できる空間分解能に達することができない.
 一方で近年,1)ミューオン観測装置の大量生産体制が進み,観測方位をこれまでと比べて10倍以上に増やす目処が付いた.2)人体におけるX線CT撮像のように火山山体をぐるりと囲むようにミューオン観測器を設置し,高解像度での3次元密度イメージングを可能にする「全方位ミュオグラフィ」の三次元密度画像再構成解析手法と実現可能性の検討が行われた(Nagahara and Miyamoto, 2018).1),2)のような技術的基盤を元に,現在静岡県伊東市に位置する大室山スコリア丘の全方位ミュオグラフィの実証観測が進行中である.
 大室山が観測対象として選ばれた理由は,最初の実証観測を行うにあたって次に記すような理想的な条件が揃っているからである.大室山は外見上,ほぼ軸対称な形状をしている.しかしながらこれまでの地質学・地形学的な研究調査から形成された噴火過程から,山体の内部構造に関わる以下のことが推測されている:a)噴火が進行して大型の山体と火口が成長した後,荷重と熱によって山体内の一部が溶結し,周囲より密度の高い層を形成した.b)噴火の末期に火口内に溶岩湖が形成され,その溶岩が火口底を突き抜け山体内部を通って西側の山麓に流れ出た.c)噴火の最終段階に至って主火口が閉塞した際に,ガスが逃げ場を求めて爆発したと見られる小火口が南側中腹に存在する.すなわち密度構造に異方性があり,かつ10メートルオーダーの空間スケールで溶岩・スコリア堆積部で0.5~1.0g/cm3 程度の密度コントラストが期待される.これをイメージングすることができれば,本研究の目指す火道形状・密度構造の詳細な3次元イメージングが,一般的な活火山においても可能であることを実証することにつながる.
 その他の理由として,ミュオン観測器を設置する場所へのアクセスが容易であること,地形の観点からどの方向から大室山を見ても他の山などが影にならないこと,及び山体がそれほど大きくなく十分なミューオンシグナル量が見込めること,などのメリットもある.
 以上の計画・シミュレーションによる実現可能性評価の結果に加え,小型装置による3方向からの試験観測の結果について,2018・2019年度火山学会秋季大会などをはじめとする会議で発表された.2019年には有効面積を倍にした観測器を8つ追加した.回収後,現像・膨潤・飛跡読み取りを経て現在データ解析中である.2020年春にはさらに有効面積とミュオン露出時間を増やした観測器8つが回収される予定である(図 3.8.4).2020年秋に設置予定である16方向からの観測データを追加すれば,一つの火山について計35方向からのミュオグラフィ画像が得られる予定である.

(c) 宇宙線電磁成分の減衰を用いた土壌水分量の測定

 マグマの移動に伴う質量移動を検出する方法として,ミュオグラフィの他には,地表面での重力の時間変動を追う方法がある.重力計によって得られた重力値の時系列データを眺めていくと,降雨に追随した明瞭な変動が見られることがある(振幅にして約10マイクロgal).これは,雨水の質量による万有引力の効果を重力計が受けるために生じる.このような雨水擾乱の効果を正しく補正しなければ,マグマの質量移動を正しく議論できない.宇宙線に含まれる電磁成分(電子・陽電子・ガンマ線の総称)は,ミュオンと比べると物質の貫通能は乏しいものの,その分,雨水による僅かな質量変動に応じて大きく減衰されることが期待されるため,土壌水分量の測定が可能で,雨水擾乱の補正に効果的である.このアイデアは2011年頃に提案され,小型検出器(有効面積~0.1m2)と水深を変えることができる小型プールを用いた実証試験によって実現可能性が確認された.また検出器は,京都大学防災研究所と国土交通省大隅河川国道事務所の協力の下,桜島の有村観測坑道に移され,断続的に観測が続けられていた.
 そこで2018年10月に,桜島の電磁成分検出器(有効面積~1 m2)を再稼働させ,絶対重力計による連続測定と並行させる形でデータ取得・解析を行った.まず,2018年10月から2019年3月にかけた雨量の比較的少ない時期のデータを見ると,電磁成分の到来頻度(フラックス)と観測点での大気圧に明確な負の相関が認められた.大気圧が増加すると,大気自体による宇宙線の減衰が強まるからである.気圧の変動は,我々の関心があるところの土壌水分量とは無関係であるため,地表での大気圧データおよびラジオゾンデによる高層大気の気圧データを用いて大気減衰の効果を補正する方法を確立した.次に,2019年6月28日~7月3日の豪雨(降水量は合計約600mm)時のデータを調べた.重力では5マイクロgal程度減少の後,数日で上昇に転じるという明瞭な降雨による擾乱のパターンが検出されたものの,大気減衰の効果を正しく補正した電磁成分データでは有意な変動が検出されなかった.電磁成分検出器の設置された坑道の土被りが薄く(1~2m 程度),雨水がすぐに地下へ流れてしまったために,電磁成分フラックスの有意な減衰が見られなかったと推測される.そこで,土被りの分厚い他の地点に移設し,実証試験を行うことを検討している.

(d) ニュートリノ振動を用いた,地球深部の化学組成・密度構造測定

 低エネルギーのニュートリノは,断面積が極めて小さく,地球を容易に貫通するため,物質密度の測定には適さない.しかし,大気中で生成されたニュートリノの観測などにより,ニュートリノは質量を持ち,その結果,ニュートリノは伝播中に別のニュートリノに変化することが分かっている(ニュートリノ振動).なお,この現象はスーパーカミオカンデによって発見され,その功績によって本学宇宙線研究所の梶田教授が2015年にノーベル賞を受賞したことで,広く知られるようになった.
 ニュートリノが他の種類のニュートリノに変化する割合は,ニュートリノと他のニュートリノの質量の差,エネルギー,伝播距離,及び媒質中の電子数密度で決まる.したがって,電子ニュートリノが他のニュートリノに変化する割合を,エネルギー毎に測定すれば,地球内部の電子数密度分布を測定できる.ニュートリノ振動測定で得られた電子数密度と,地震波測定等で得られている物質密度とを組み合わせることにより,地球内部の平均的な化学組成を測定することが可能となる.この手法を,既知の地球の物質密度分布と組み合わせることで,原子番号(Z)と原子量(A)との比(A/Z比)をイメージングすることも可能である.

 ハイパーカミオカンデは,次世代のニュートリノ観測装置であり,スーパーカミオカンデの8倍もの巨大な有効体積と,高いエネルギー・角度分解能を備える.これを用いることで,地球液体核やマントルの化学組成に制限を与えられることが,これまでの研究から明らかとなっている.ハイパーカミオカンデは,2020年度より建設を開始することが既に決定されており,2019年度補正予算,2020年度予算も閣議決定され,現在,建設準備が急ピッチで進められている(図 3.8.5).
 地震研究所では,ハイパーカミオカンデの主要構成要素である,光検出器の研究開発を,宇宙線研究所ほかと共同で行ってきた.今年度は特に,光検出器の高感度化と雑音低減にとりくんだ.研究の結果,光検出器のガラスバルブに含まれる放射性不純物を3割,鉄分量を3割,チタン量を5割低減させることができた.放射性不純物は,崩壊の際にガラス内部で,ある時間構造を持って発光し,ニュートリノ信号の雑音源となる.また,高エネルギーのガンマ線を放射し,壁際でニュートリノと区別できない信号を発生する.また,鉄やチタンは,ガラスの紫外透過率を悪化させる.これら不純物の低減は,ハイパーカミオカンデ検出器の感度向上に大きな意味を持つ.これらの成果を得るうえで,地震研究所の微量元素分析装置が大いに貢献した.加えて,低雑音・高感度光検出器の試作を行い,放射性不純物の低減によって,ガラスの発光に起因する雑音量が2割程度低減したことを確認した.
 2020年度は,ハイパーカミオカンデの最終デザインを用いた,地球深部の化学組成分布測定の感度見積もりを行う.同時に,光検出器の大量生産に向けた準備と,さらなる不純物低減に取り組む.

(e) 地球ニュートリノ流量モデリングの高度化を目指した茨城県稲田花崗岩体での高密度サンプリングによる化学組成変化の評価

 近年地球ニュートリノを用いて核・マントル中のウラン・トリウム(U-Th)量を推定する研究が急速に進展している(The KamLAND Collaboration, 2011).ただし,現在推定されるU-Th 量は大幅な不定性を持つ状況であり(Takeuchi et al., 2019),大きな原因して,単一の岩体内での化学組成のばらつきの度合いが定量的には理解されていないことが挙げられる.そこで,単一の岩体での化学組成のばらつきを様々な空間スケールで理解するために,茨城県笠間市に分布する稲田花崗岩を研究フィールドとして,「単一の岩石サンブル内」「単一の露頭内」「岩体内の複数の地点間」と距離スケールをcm単位からkm単位まで変えた,元素分布や化学組成の距離依存性の検討を行った.稲田花商岩は領家帯に属し (Ishihara, 1977),約60Ma に貫入し,固結したと推定されている(Arakawa and Takahashi, 1988),粗粒普通角閃石黒雲母花崗岩体である(高橋他, 2011).サンプリングは,1kmほど離れた2箇所の採石場のそれぞれから,10mから数10m間隔で約500gの岩石サンプルを複数点から採取した.これらのサンプルを8個または9個の一辺約2cm(約25g)の立方体に細分して,全岩化学組成の分析を行った.分析は地震研究所の蛍光X線分析装置,「RIGAKU ZSX Primus II」を用い,SiO2, TiO2, Al2O3, FeO, MnO, MgO, CaO, Na2O, K2O, Ba, Ce, Co, Cr, Cu, Ga, La, Nb, Ni, Pb, Rb, Sc, Sr, Th, V, Zn, Zrを分析した.うち,定量限界以下の濃度のデータが多いMgO, Co, Cr, Cu, Ni以外の23元素を解析対象とした.
 分析結果から,例えばSiO2は,単一の岩石ブロックを分割した9個の立方体試料間で,73~77wt% の幅が見られた.他の元素も比較した結果,結果から,10cm 程度といった非常に小さな空間スケールで,これまで指摘されていたような広域の組成バリエーションに匹敵するような組成のばらつきが複数元素から見出された.これらの分析データを基に,各元素濃度のcmからkmオーダーに渡る「距離相関」を計算し,確率密度分布を計算した結果,距離に応じた密度分布がほぼ同じ傾向を示す,すなわち,元素濃度分布が広域でも均質性が高い元素と,密度分布のパターンが異なる,すなわち,不均質性が高い元素が見出された (図 3.8.6).前者は,SiO2とAl2O3が典型的で,後者は,MnO,P2O5,Sc,Y,Ceが典型的である.2つのグループの違いは,各々の元素の移動が,深成岩体を形成するマグマだまりの冷却過程内での,「マグマの流動性の変化」に基づくと考えられる.すなわち,前者は,マグマだまりが高温で,晶出鉱物量が少なく,マグマだまり全体に渡る大規模な対流が起こり,混合が活発な段階で,元素分布が形成された,と考えられ,後者は,マグマだまりの結晶化が進み,マグマが流動しにくくなり,代わって晶出鉱物間からの「メルトの絞り出し」が起こる段階で,局地的な鉱物量比の違いが元素濃度の違いを生み出した,と解釈される.

3.8 高エネルギー素粒子地球物理学研究センター

教授 相原博昭(兼任), 田中宏幸
助教 宮本成悟,武多昭道,西山竜一(兼任)
特任研究員 保科琴代,OLÁH László,池田大輔,原口悟
学術支援専門職員 市川雅一
外来研究員 上木賢太
大学院生 南 一輝(M3),長原翔伍(D3)

 本センターの設置目的は,宇宙線ミューオンやニュートリノ等の高エネルギー素粒子を用いて,これまでにない高い分解能(10-100m程度)で断層や火山などの固体地球内部を透視し,地震・火山現象の解明と防災・減災に貢献することである.そのためには素粒子透視技術(ラジオグラフィー)の一層の高度化が必要となる.とくに素粒子検出デバイス開発に対しては,小型・軽量・低消費電力という野外観測からの要求に応えつつ,一方で空間的にも時間的にも高い解像度を確保することが,世界の中でのリーディング・エッジを今後も確保することが欠かせない.また,一方でこれまでは火山に限定されてきた応用分野を,地震断層等にも広げていくことが望まれてきた.これらのことを念頭に,当センターで進めてきた研究活動を以下に述べる.

3.7 海半球観測研究センター

教授 川勝 均,塩原 肇,清水久芳(センター長)
准教授 馬場聖至,竹内希
助教 一瀬建日,竹尾明子(観測開発基盤センター兼務)
特任研究員 歌田久司
外来研究員 入谷良平,原田雄司,松野哲男,多田訓子
大学院生 LI Ruibai (D3),LONG Xin (D3),川野由貴 (D1),KIM Hyejeong (D1),丸山純平 (D1)
技術支援員 横山景一
地震研特別研究生 WAN Xiaoli

3.6 火山噴火予知研究センター

教授 大湊隆雄(センター長),森田裕一(兼),上嶋 誠(兼)
准教授 市原美恵,前野 深,鈴木雄治郎
助教 金子隆之,及川 純,小山崇夫(兼)
客員教員 相澤広記,青山 裕,鈴木由希
外来研究員 長岡 優,桑野 修,嶋野岳人,吉本充宏
大学院生 蘭幸太郎(D3),大橋正俊(D3),山河和也(D2),池永有弥(D1),池田 航(M1),水野 樹(M1)

3.4 災害科学系研究部門

教授 古村孝志(部門主任), 纐纈一起, 楠浩一
准教授 三宅弘恵(兼務)
助教 飯田昌弘
特任助教 原田智也
特任研究員 鈴木舞, Diao Hongqi, Vladimir Vukobratovic, Trevor Zhiqing Yeow
外来研究員 Bhattarai Mukunda, Rami Ibrahim, 司宏俊
共同研究員 伊藤嘉則, 大石裕介
学術支援職員 齊藤麻実
大学院生 王杰惠, (D2), 劉齊(M2), 棟田隆元(M2), 大峡充巳(M2), 王澤霖(M2), 呉康銘(M2) , 井出彩葉(M1), 岩井創(M1), KIM Kyungjin (M1), 木下俊輝(M1), 楊萌(M1)
 研究生 崔允範, Aditya Kadiyan, Jyoti Lamsal, Lorenzo, 黄漢轅, 鄒雨洋
インターンシップ研修生 Lorenzo Amico, Sankha Subhra Mahanti

災害科学系研究部門は,地震による強震動や津波などの現象の解明と予測を行い,それらによる災害を軽減するための基礎研究を理学と工学の視点から行う.観測,実験,解析,理論,シミュレーション,被害調査,資料分析などの手法によって,強震動地震学・津波地震学や耐震工学・地震工学などの分野の基礎的あるいは応用的な研究を行っている.本部門における最近の主な研究対象は,大地震の震源過程と強震動の生成過程の研究,高密度強震観測,地震波伝播・強震動のコンピュータシミュレーション,古地震・歴史地震研究,構造物の被害調査,耐震性能評価に関する研究などである.

3.5 地震予知研究センター

教授 平田直(センター長),加藤愛太郎,佐藤比呂志,上嶋誠,山野誠,加藤尚之(兼任),小原一成(兼任),篠原雅尚(兼任)
准教授 石山達也,加納靖之,望月公廣,飯高隆(兼任),酒井慎一(兼任)
助教 福田淳一,蔵下英司,仲田理映,西山昭仁,山田知朗,五十嵐俊博(兼任)
特任准教授 PETRELIS Francois
特任助教 橋間昭徳,吉光奈奈
特任研究員 CLARINGBOULD Johan,畑真紀,片桐昭彦,加藤直子,水野嶺,大邑潤三,大塚浩二,椎名高裕,TAO Ye,VAN HORNE Anne,吉岡誠也
学術支援職員 柳澤恭子
外来研究員 濱元栄起,今村尚人,伊藤谷生,岩崎貴哉,岩﨑友理子,笠原敬司,川北優子,川村喜一郎,南拓人,PANAYOTOPOULOS Yannis,REN Hengxin,臼井嘉哉
大学院生 山名祐輝(M1),横谷直人(M1),佐々木肯太(M2),福田孔達(M2),上田拓(D1),山谷里奈(D1),池口直毅(D3),米島慎二(D3)
地震研研究生 JIANG Meiling
日本学術振興会外国人研究員 LI Shaoyang
インターンシップ研修生 AMIR FAISAL BIN HAMDAN Muhammad,DEGRANDE Jensen,DIBA Dieno,HSIEH Michelle,KUSUMAWATI Dian,NASUHA FIZAWAN BINTI AHMAD MAZHAR Aina

3.3 物質科学系研究部門

教授 岩森光, 中井俊一(部門主任),武井(小屋口)康子
准教授 平賀岳彦, 安田敦
助教 三部賢治, 三浦弥生, 坂田周平
特任研究員 Subhajit Ghosh, 小泉早苗, 山内 初希
技術補佐員 今野沙世
大学院生 谷部功将(D3), 岡本篤(D2), Nahyeon Kim (D1), 安藤 照浩(M2), 岩橋 くるみ (M2), 諸澤 直香(M2), 角田明博(M2), 猪狩一晟(M1), 三ツ出唯利(M1)
インターンシップ研究生 劉 青雲,小澤 恭弘, 唐 文詩,呉 培倫

本部門では,物質や物性の研究を通じて,固体地球内部の構造やダイナミクスの素過程を明らかにすることを目指している.地球に留まらず,太陽系内外での諸現象も研究対象にしている.理論,室内モデル実験,超高圧実験,元素・同位体分析など様々な方法に基づいて研究を行っており,その 内容は多岐にわたる.本年度における概要を以下に示す.

3.2.5 高度な観測機器を開発するための研究

(a) 長基線レーザー伸縮計の開発(観測開発基盤センターと兼務)

  神岡鉱山地下に建設した全長1.5 kmの基線をもつレーザー伸縮計の研究開発を継続している.また,気象研との共同研究として静岡県浜松市船明トンネルに設置された400 mレーザー伸縮計に導入した周波数安定化レーザーを用いた観測も継続している.これらの伸縮計を用いて実際に地震イベントなどの観測を行うとともに,昨年度に続き光源の周波数安定度の評価のため、レーザーの詳細なノイズ解析を行うとともに船明の観測サイトで周波数安定度の評価試験および安定度の向上に取り組んでいる.引き続き神岡の1.5 kmひずみ計でも同様の評価と改良を行う計画である.

(b) 反磁性を利用した小型傾斜計の開発

  反磁性体と組み合わせることによって,受動的に浮上させた永久磁石を基準とした傾斜計の研究開発を行っている.これは一昨年度までの重力計の研究を発展させたものである。傾斜計では浮上体(参照振り子)にはたらく水平面内での復元力を小さくすることによって傾斜に対する感度を高めることができる.これまでの研究で,磁石と浮上体の形状や配置を工夫することによってこのような状態は容易に実現可能であることがわかった。今年度は新たに科研費を取得して研究を継続している.山梨県立産業技術短期大の研究者と連携して浮上体の理論モデルの精度を高め,実際に10秒程度の周期をもつ浮上振り子を製作した.今後はこれを元にして高感度傾斜計を実現するための位置センサーや制御系の研究開発を行う予定である.

(c) 精密機械工作技術を用いた小型傾斜計の開発

  海底ボアホールや陸域の深部ボアホール,あるいは海底面など,観測例の乏しい「観測フロンティア」での傾斜観測を目的とした小型傾斜計の研究開発を行っている.開発した小型・長周期の折りたたみ振り子を核とした傾斜計を製作し,実際に坑内ボアホールでの観測を継続している.これまでに得られたデータを分析することにより,長期ドリフト特性について良好な結果を得た.今年度は観測能力を維持するための機器整備を行った.

 

3.2.4 観測や室内実験と理論を結びつける研究

(a) 小さなSSEのリズムへの大地震サイクルの引き込み同期現象

  SSEによる載荷が地震をトリガする効果の基礎的な見通しをえるために,数理部門および産総研と協力して,実験から得られている,ごく低速のクリープから高速の地震性すべりまでを記述できる摩擦則にしたがう1自由度バネブロックモデルを用いて,SSEを模した小さなステップ的な載荷が,定常的なプレート運動からの載荷に周期的に重畳する場合のふるまいを調べた.総体的にみれば定常載荷に近い,頻繁に繰り返す小さなSSEの場合ですら,地震の発生サイクルがSSEのサイクルに完全に同期してしまう「引き込み現象」がおきることが見いだされた.同程度の大きさの摩擦ブロック間での引き込み現象は既に知られているが,大きな地震のリズムが小さなSSEのリズムに引き込まれてしまうのは意外な発見である.この引き込み同期は非常に広い条件範囲で普遍的におきるが,その仕方は、SSE周期の整数倍の一定周期で地震がおきる単純なものから,地震数回をひとつの単位としてSSE周期の整数倍になり,そのあいだ地震発生間隔がきまったパターンで平均から増減する複雑なものまでさまざまである.基本的には,1回のSSEが大きなインパクトをもち頻度が少いほど単純な同期パターンになりやすい傾向があり,SSEはそのインパクトの大きさに応じて,地震発生間隔を平均周期からずらす力をもつように見える.ただし,どのような同期パターンでも,地震の発生がとりわけSSEの発生後短期間に集中する傾向は見られなかった.また,SSEが瞬間的なステップではなく,現実のSSEのように有限の期間をもって滑るものであっても引き込み同期は同じようにおこることが確認された.