石島清宏 1,2,3 、綿田辰吾 1
1 東京大学地震研究所、 2 東京大学理学系研究科地球惑星科学専攻、 3 エム・アール・アイ リサーチアソシエイツ株式会社
The slip distribution of the 2025 Kamchatka earthquake determined from SWOT satellite dispersive tsunami images.
Earth, Planets and Space, 78, 176 (2026). https://doi.org/10.1186/s40623-026-02508-6
2025年7月29日、カムチャツカ半島沖で発生したマグニチュード(Mw)8.8の巨大地震は大きな津波を引き起こしました。人工衛星SWOT(Surface Water and Ocean Topography)は新たな合成開口レーダ技術を用いて衛星軌道に沿って海面高を幅120kmで面的に計測します。地震発生約70分後、震源付近をSWOTが通過し、海面を円弧状に広がる最大振幅70cmの先頭の津波(第一波)の内側に、小振幅の弧状後続波を多数観測しました(図a)。本研究では、SWOTが観測した海面高画像と、津波計算により得られるシミュレーション海面高画像を比較し、海底下の断層がどのように動いたか(すべり量)を推定しました。その結果、プレート境界の最も浅い千島海溝軸付近で断層が最大16m動いた場合に弧状後続波がよく再現されることがわかりました(図b)。得られた断層モデルを基に計算した津波波形は近隣の深海津波計記録とよく一致しています(図c)。海岸や海底の津波観測点データを用いる従来の津波解析では、最大波高を含む第一波の観測とシミュレーション津波波形の比較により断層滑りを推定します。一方、本研究で提案するSWOT画像を用いた波源推定では、広範囲に存在する小振幅の後続弧状分散波も解析対象とし、大すべり域の位置と深さを含め、断層すべりを衛星画像から精度よく推定します。今後、SWOTのような人工衛星データがリアルタイムで利用可能になれば、沖合衛星津波観測に基づいた迅速な津波予測が期待できます。

