2011年東北沖地震の地震波到達前に観測された重力変化

木村将也・亀伸樹・綿田辰吾(東大地震研)・大谷真紀子(産総研)・新谷昌人・今西祐一(東大地震研)・安東正樹(東大物理)・功刀卓(防災科研)

Earthquake-induced prompt gravity signals identified in dense array data in Japan.

Earth, Planets and Space, 71:27, https://doi.org/10.1186/s40623-019-1006-x, 2019.

地震の断層運動によって放射される地震波は地殻中を6—8 km/sの速さで広がります。一方この地震波は地殻の岩石の密度変化を引き起こし、これに伴い重力が変化します。重力変化は地震波より速く光速 (~300,000 km/s) で空間全体に伝わるので、この性質を利用することで、地震発生を地震波到達前に検知することが可能となります。

我々は2011年Mw 9.0東北沖地震の際の広帯域地震計アレイ (F-net) 記録中の重力成分を調べ、地震波到達より前に重力が変化していることを示す信号を7シグマの有意性で見つけました(図1)。これは従来の検出報告に比べはるかに確度が高く、地震発生が重力変化で捉えられることを確実にしました。

現在、重力で地震を検知するための新型の計測装置 (TOBA) の開発が東大物理で進められています。この装置が地震計のように日本列島全体に設置されれば、緊急地震速報をこれまでより早く出せると期待されます。

図1 (a) 2011年東北沖地震による揺れが到達する前の地震計記録の一例。波形を一本ずつ見ても、背景ノイズを超える信号はほとんど見られません。
(b) 左図で用いた観測点(F-net広帯域地震計アレイ)。
(c) 27観測点での波形をスタッキング解析(波形同士を足し合わせて背景ノイズを低減する手法)することで発見された、地震波到達時刻 (t=0) 前の重力変化。

【本研究は英文プレスリリースされました】
UTokyo Focus – “Sensing shakes”
https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/en/press/z0508_00032.html