3月1日 霧島山(新燃岳)噴火

ウェブサイト立ち上げ:2018年3月5日
最終更新日:2018年4月19日

3月1日に霧島山(新燃岳)が噴火し、気象庁は警戒が必要な範囲を3kmに拡大しています。


2018年4月19日

霧島火山群新燃岳2018年噴火の火口観察(2)

概要: 2018年4月15-16日にドローンにより新燃岳火口内及び周辺を観察した。3月6日に流出を開始し、北西火口縁から溢れ出した溶岩は、舌状に山体北西斜面を覆い、150 m程度流下している。溶岩溢れ出し部の西縁付近からは大量の水蒸気が上がっている。火口蓄積溶岩の中央部には小火口(直径100 m程度の凹地、深さ不明)が形成されており、噴気が活発である。西側斜面にも複数の箇所に噴気活動が認められる。

  •         4月15日夕方と16日午前の2回に分けて、新燃岳南西側の新湯付近から、ドローンにより山頂火口内及び火口周囲の状況を観察した。ドローン飛行に関しては、鹿児島森林管理署をはじめとする関係機関と調整した上で実施した。
  •         北西火口縁からは溶岩が舌状に流出し山体斜面上部を覆っている。周辺地形との比較からその流下距離は150 m程度と推定される(図1)。溶岩表面はクリンカーで覆われており、多くの亀裂が生じている。溶岩溢れ出し部の西縁付近ではとくに噴気が活発である(図2)。
  •        火口蓄積溶岩の中央部には直径約100 mの小火口(凹地)が存在する(図3)。とくに小火口の西側は急崖となっており、噴気も活発なため深さは不明である。小火口周囲には火山灰や岩塊が厚く堆積し、溶岩表面の微地形ははっきりしないが、同心状に亀裂が発達している。小火口は、だいち2号のSAR画像(4月11日)1) で認められた凹地形に対応し、4月5日の爆発的噴火で形成されたものと推定される。
  •       火口蓄積溶岩の周縁部には所々噴気が活発な箇所がある(図4)。また西側斜面には複数の噴気活動が認められ、このうち中腹の噴気孔は活発である(図5)。

 

図1 新燃岳火口北西縁から溢れ出て舌状に広がる溶岩。周辺地形との比較から流下距離は150 m程度と推定される。溶岩の厚さは先端部にかけて徐々に薄くなる。
図2 新燃岳火口西縁の溶岩溢れ出し部ではとくに激しく水蒸気を上げている。溶岩破砕部分の灰色は火山灰の被覆による。
図3 新燃岳の火口蓄積溶岩中央部には凹地(小火口、直径100 m程度、深さ不明)が形成されており、活発な噴気活動が認められる。周囲は火砕物で厚く覆われており、数mの岩塊が散在している。小火口の北東側には同心状に亀裂が発達する。
図4 新燃岳北側火口縁付近の様子。火口蓄積溶岩の周縁部からは所々激しく水蒸気が上がっている。溶岩上面は火口壁の高さよりやや高い位置にある。

図5 新燃岳西側斜面の噴気活動の様子。斜面下位には複数の小噴気孔からなる噴気地帯、中腹にはやや大きい噴気孔が存在する(上、黄色点線)。中腹の噴気活動は活発である(下)。

参考資料:

1) 国土地理院 平成30年(2018年)霧島山(新燃岳)の噴火に関する対応: http://www.gsi.go.jp/BOUSAI/h30kirishima-index.htm

(火山噴火予知研究センター :前野 深)


2018年3月20日掲載

霧島火山群新燃岳直下の微動活動について

東京大学地震研究所が展開する新燃岳火口近傍の地震観測点データを主に用いて、2017年10月3日から2018年3月噴火に至る微動活動について解析を行った。その結果、以下のことが分かった。

  1.    2017年10月11日の噴火の後、噴火前のレベルに戻ることなく、次第に振幅が増加した。
  2.    多くの時間窓で、微動源は新燃岳直下の海抜ゼロ付近に集中して決められた。
  3.    期間中何度か、北西の海抜下1.5 km付近から新燃岳直下の間で微動源が移動した。
  4.    2018年3月1日の噴火発生以降、微動源は、新燃岳火口の北東縁直下に移動した。 溶岩流出位置(防災科研・だいち2号による新燃岳火口内の地形変化第1報)と整合的である。
  5. 爆発的噴火が発生するようになった、2018年3月10日以降、地震動振幅の下限が5カ月ぶりに、2017年10月噴火の前のレベル近くに戻った。
図1.新燃岳周辺の微動解析に使用した地震観測点(ERI、 JMA、 NIED)。赤文字が、2017/10/3–2018/3/3のデータ解析に使用した観測点。

※微動源解析方法 (Ichihara & Matsumoto、 2017、 GRL に準拠)
常時振動成分の見られる3.5-7 Hz帯域について、地震動3成分のパワーを計算し、時間窓内の中央値を取る。時間窓長さは5分とし、1分ごとにスライドさせた。10分の間の各観測点間のパワーの比の標準偏差が一定値より小さい時間窓について、観測点間のパワー比を用いて、微動源を推定する。事前に、明瞭な微動が安定して見られた2017年10月10日21:30–10月11日01:00 の振幅分布を用いて、各観測点の振幅値補正と領域の平均Q値の推定を行った。2011年噴火時の微動振幅分布と高密度地震計アレイのデータを用いて求めたQ値とほぼ同じ値に決められた。

図2.地震動の振幅変化。1-7 Hz の3成分パワーの1/2乗に、各観測点の振幅補正を施した値を表示。2017年10月の噴火後、一度低下したものの、微動は継続し、段階的に次第に振幅が増加して行った。
図3.微動源位置変化。上から、海抜高度、新燃火口中心から南北距離、東西距離、振幅比による微動源推定の残差。赤は残差が小さくよく決められているもの、青はそれよりやや悪いが採択可と考えられるもの。微動源が決められていない期間も、微動がないとは言えず、振幅比が安定せず微動源推定の対象にならなかったり、推定残差が大きく棄却されたことが原因である。下の地形図と新燃火口直下を通る東西断面には、各期間における微動源を色で表示した。
図4. 2017年10月噴火前の10月8日と、2018年3月10日の振幅分布の比較。振幅の下限値がこのレベルに低下したのは、5カ月ぶりである。
図5.2017年10月噴火時の微動源移動。異なる観測点のセットで推定した結果。今回の、長期間解析に用いた8観測点での推定結果は、●(赤丸)で示している。他の、より多くの観測点を用いた場合と同様の位置に微動源が決められている。10/14日の後半以降は、●(赤丸)の結果は得られていないが、これは、SMWのデータ断による。

(火山噴火予知研究センター:市原 美恵・大湊 隆雄)


新燃岳火口の様子(3月13日)

火口の様子をセスナ機により観察した(3月13日13時40~50分)

  • 火口を覆う溶岩層の周囲から水蒸気を主体とする白煙が上がっている(写真1)
  • 溶岩層は火口全体を覆っており,北西側から溶岩流が斜面上に溢れ出ている(写真1,2).
  • 溶岩層の表面はブルカノ式噴火で生じたと思われる岩塊や火山灰に覆われている.ただし,北~西~南の周辺部はこのような堆積物は薄く,表面のしわが明瞭に観察される(写真1).
  • 溶岩層の中心よりやや北東側の地域が浅い凹地となっており(直径100m程度.溶岩の湧き出し部付近? ) この付近から青白いガスが放出されている(写真1,3) .
  • 上記凹地の内壁には,一部に緻密な溶岩が露出している.また,リング状の割れ目や直径10m程度の孔地形が複数存在する(写真3).地形と噴出物の分布からブルカノ式噴火はこの凹地近辺で発生していると推定される.
  • 北西側に流れ出た溶岩は斜面上を流下し舌状に伸びている(幅170-180m,火口縁から先端まで80-90m程度と見込まれる).観察中,先端部の動きや転動岩塊,赤熱部等は見られなかったことから,溶岩流の動きは極めて緩慢と思われる.
写真1 火口域全体.南東側より撮影
写真2 北西側へ流れ出た溶岩流.北西側より撮影
写真3 溶岩層中心のやや北東側にある浅い凹地形.北側より撮影

(※ 観察には新日本航空のセスナ機を使用した.観察者:金子 隆之)


2018年3月15日

霧島火山群新燃岳2018年噴火の火口観察

概要: 2018年3月14日にドローンにより新燃岳火口内及び周辺を観察した。3月6日に流出した火口蓄積溶岩は9日には北西火口縁から溢れ出し,舌状に山体北西斜面を覆っている。その両脇の溶岩は大量の水蒸気を上げ,火口縁に迫っている。南東側溶岩末端崖では所々水蒸気が激しく上がり,溶岩が前進しているようである。火口蓄積溶岩の中央部はやや凹んでおり,凹地周縁からは弱い噴煙が時折発生する。ブルカノ式噴火の前には中央の複数の箇所から小規模な噴煙が発生する。

  • 3月14日に午前・午後の2回に分けて,新燃岳南西側の新湯付近から,ドローンにより山頂火口内及び火口周囲の状況を観察した。なお,規制区域のドローン飛行に関しては,火山噴火予知連絡会霧島(新燃岳)総合観測班のガイドラインに従うとともに,事前に鹿児島森林管理署をはじめとする関係機関と調整した上で実施した。
  • 溶岩表面はクリンカーで覆われており,多くの亀裂が生じている。北西火口縁からは,酸化して赤褐色になった溶岩が舌状に流出し,山体斜面上部を覆っている(図1)。舌状部溶岩の両脇では火口内溶岩が大量の水蒸気を上げ火口縁に迫っている(図2)。南東側の火口蓄積溶岩末端崖では所々水蒸気が激しく上がり,溶岩が前進しているようである(図3)。火口縁付近では溶岩は黒々としているが,中央付近では細粒の噴出物に覆われて表面は灰白色となっている。
  • 火口内溶岩の中央部はやや凹んでおり,周囲にはブルカノ式噴火に由来すると考えられる数mを超える岩塊が無数に散在する。凹地周縁からは白色又は褐色の小噴煙が時折発生した(図4)。さらに15時18分頃の噴火の前には,中央の複数の箇所から白色-褐色の噴煙が継続的に発生した(図5)。

ドローンによる撮影

図1 新燃岳火口北西縁から溢れ出て舌状に広がる溶岩。先端付近の所々から水蒸気が上がっている。溶岩の厚さは先端部にかけて徐々に薄くなっている。
図2 新燃岳火口北西縁の溶岩溢れ出し部の拡大。激しく水蒸気を上げている北側部分は火口内に留まっているが,溶岩の上面は火口縁よりも高い位置にある。
図3 新燃岳火口南西部に広がる溶岩。溶岩先端の所々から水蒸気が上がる。右下には火口壁を形成する溶岩(通称:うさぎの耳)が見える。
図4 火口蓄積溶岩の中央部はやや凹んでおり,その周囲からは時折弱い白色-褐色の噴煙が生じる。周囲には長径数mを超える大きさの岩塊が散在する。

 

 

 

 

 

 

図5 15時18分頃の噴火(下)と噴火前の火口内の状況(上)。火口からは複数の箇所から灰色〜褐色噴煙が生じている。このおよそ5分後に噴火が発生した。下写真は一眼レフカメラによる。

(火山噴火予知研究センター :前野 深)


2018年3月12日報告

【概要】
・溶岩は火口内で溶岩ドームとして成長拡大を続け、8日夜半までに火口をほぼ満たし、低くなっている北西側の火口縁に乗り上げた。
・ 溶岩ドーム拡大の様子は衛星SAR解析で正確に捉えられ、9日までに溶岩供給がほとんど停止したものと考えられる( 引用1、2)。
・成長をほぼ止めた溶岩ドームの中央部で、 9日午後からは爆発的な噴火が始まった。
・北西縁に乗り上げた溶岩は自重で斜面下方へゆっくり移動した。
・ 今回の溶岩流出から爆発的噴火の推移は2011年1〜2月噴火と類似 している。
1)防災科研、平成30年(2018年)3月新燃岳の噴火活動に関するレスポンスサイト(http://gisapps.bosai.go.jp/nied-crs/2018-0003/index.html
2)平成30年(2018年)霧島山(新燃岳) の噴火に関する対応(http://www.gsi.go. jp/BOUSAI/h30kirishima-index. htm

【新燃岳2018年噴火のマグマ組成】
2018年3月7日夕方までに採取した軽石質火山礫及び火山灰の全岩化学組成を決定した。(採取場所:新湯三叉路付近(前野採取)、採取日:3月7日)
・   今回のマグマは2011年噴火のマグマとほぼ同じ安山岩組成であ る。
・  先行した水蒸気噴火〜マグマ水蒸気噴火火山灰の組成は、2011年噴火と同様に、時間とともにマグマの組成に近づいていったことがわかる。 これは火山灰中の変質物質の量が次第に減少したことを反映してい る。(なお、分析に用いた試料は粗粒火山灰や数ミリの軽石片であるので、斑晶を含む正確な全岩組成からは若干ずれている可能性がある。)

Fig. 1:新燃岳2018年及び2011年噴火の溶岩の化学組成。 それぞれの噴火に先行した水蒸気噴火及びマグマ水蒸気噴火の火山 灰の全岩組成も比較のために示した。

【上空観測】
新燃岳の山頂火口を上空から観察した。 以下のようにまとめられる。
・新燃岳の山頂火口に蓄積した溶岩(溶岩ドーム) には同心円状の成長模様がよく発達している。
・ 溶岩ドームは中央部がほぼフラットかやや全体が窪んだ形状を示し , 爆発的噴火によって降り積もった部分が褐灰色の火山灰で覆われて いる。灰で汚れている部分の中央部が爆発点で、溶岩が現れた広がった供給口と思われる(Fig. 2)。
・3月9日午後5時頃の観察では溶岩は北西縁に乗り上げて、先端部から水蒸気の白煙を上げていた。 翌日10日午後3時半頃には先端部が斜面に向かって前進し、表面は酸化して赤茶けている(Fig. 3, Fig. 4)。
・約1日で溶岩の先端は数十m前進したと思われるが、前端から特に大きな崩落は起きていない。
・3月10日午前10時15分頃の爆発の10分ほど前から、火山灰にまみれた中央部で火山灰が全体から弱く放出され始め、さらにその中央部で隆起が認められ、甘食のような形状となり、噴火に至った(Fig. 5)。
(観察には新日本航空チャーター機、及びKYTとUMKのヘリコプターを利用した。中田撮影)

Fig. 2. 3/9 午後の新燃岳山頂火口北西縁の様子
Fig. 3. 3/10午後の新燃岳山頂火口北西縁の様子
Fig. 4. Fig. 2のクローズアップ
Fig. 5. 10:15頃の爆発的噴火約5分前の溶岩ドーム中央部の隆起

(報告者:火山噴火予知研究センター 中田 節也)


新燃岳火口の様子(3月3日)

 2018年3月1日午前8時半頃に始まった新燃岳の噴火は, 2日経っても火山灰の放出を続けている。 新燃岳の山頂火口の状況, 3月3日9時半過ぎから約30分間セスナ機(新日本航空) で上空からを調査した。
(主な点)
・火山灰噴煙は山頂火口の東端から勢い良く上がり, その周囲には2017年10月中旬と今回の噴火でできた火砕丘が できている。
・火山灰放出火口は, 2017年10月中旬噴火とほぼ同じ場所と考えられる。また, その火口径はより大きくなっているように見える。
・山頂火口では,火山灰放出火口以外にも水蒸気が多くの場所( 穴)から噴き出しており, その数や噴気量からは昨年10月より激しい活動であると考えられ る。
・山頂火口内には, 2011年の蓄積溶岩の境界部や蓄積溶岩上のくぼみの多くに水た まりができている。これは細粒火山灰が山頂火口全体を覆い, 水はけの悪い凹地が生じたためと思われる。
・3月1日から3日昼過ぎにかけて, 新燃岳の南東から北側にかけて広く降灰した。
・噴出した火山灰は, 2017年10月中旬噴火と同様に極細粒のものであり, 新たな軽石(よく発泡したマグマ片) 等の関与はまだ認められない。

(報告者:火山噴火予知研究センター 中田 節也)

写真1:新燃岳山頂火口からは,火山灰が激しく放出されている。火山灰火口以外からも多くの水蒸気噴煙が上がっている。3月3日午前10時前。
写真2:新燃岳の火山灰放出口の周囲には火砕丘が成長している。3月3日午前10時前。
写真3。新燃岳火口の様子。立ち上る火山灰噴煙から,すぐに落ち始める火山灰が風で火口側に戻されながら降灰している。3月3日午前10時前。