工学的応用のためのメキシコ市における短周期地震動の解析的評価

Masahiro Iida

Bulletin of Seismological Society of America, 106(6), 2831-2842 (2016).

DOI: 10.1785/0120150305

地震動は、深い構造に比較して、相対的に柔らかい表層地盤において増幅します。表層地盤が軟弱地盤であると、地震動の増幅がきわめて大きくなり、地震被害が発生します。表層地盤における増幅は、重要なテーマです。強い(振幅が大きい)地震動を強震動と呼びますが、強震動はS波だとみなされてきました。けれども、軟弱地盤においては、強震動をS波だと仮定すると、実際に観測される大きな増幅を説明できません。

そこで、表面波、特にラブ波の基本モード(表面波には複数の振動モード(様式)があります)を考える必要があることを示してきました。強震動の主な波動は、S波と基本モードのラブ波だと思いますが、波動の割合は、観測地点毎にかなり異なり、同じ観測点でも地震によって異なります。

メキシコ市のかつて湖であった地盤区域において、表層地盤において観測される地震動の大きな増幅を調べてきました。図は、各周期において、増幅が時間ともに激しく変化することを示す1例です。現在の研究では、1つは、これまで未解決だった、この時間とともに変化する増幅を説明しました。

もう1つは、表層地盤における地震動の増幅を体系的に理解するために、各種の地震波動の増幅、伝統的に使用されてきた慣性力による増幅を、地震動の増幅とともに、同じ条件下で表示しました。こうした表示は、これまでなされていないものです。

メキシコ市のRoma-C観測点における、地表と深さ102mの地震動の振幅比の時間変化。5秒毎にシフトされる、40秒間の地震動に対して評価されている。