自立型無人潜水機に搭載した海中重力計測システムの開発と実海域における高分解能測定

Shinohara, M., T. Kanazawa, H. Fujimoto, T. Ishihara, T. Yamada, A. Araya, S. Tsukioka, S. Omika, T. Yoshiume, M. Mochizuki, K. Uehira, and K. Iizasa
Development of a high-resolution underwater gravity measurement system installed on an autonomous underwater vehicle
IEEE Geoscience and Remote Sensing Letters, 15, 12, 1937 – 1941, doi:10.1109/LGRS.2018.2863261, 2018.

Ishihara, T., M. Shinohara, H. Fujimoto, T. Kanazawa, A. Araya, T. Yamada, K. Iizasa, S. Tsukioka, S. Omika, T. Yoshiume, M Mochizuki and K. Uehira
High-resolution gravity measurement aboard an autonomous underwater vehicle
Geophysics, 83, 6, G119 – G135, doi:10.1190/GEO2018-0090.1, 2018.

日本周辺海域には海底熱水鉱床が存在しており、その分布や規模の詳細を明らかにすることが期待されている。また、活断層などの海底下の活構造を明らかにすることも重要である。海底近傍での分解能が高い重力異常のマッピングは、これらの目的のための地下構造の解析に有益である。そこで、重力異常を高精度で探査できる海中移動体搭載型の重力探査システムを開発した。

重力探査システムのうち、海中重力計システムには海中測定用に改良した海上重力計を採用し、重力計は高精度ジャイロを用いたレベリング機構に搭載して鉛直を保持する。レベリング機構とそれを制御するエレクトロニクスは、直径約50 cm のチタン合金製耐圧球に収納した。また、海中移動体には、海洋研究開発機構が運用している深海巡航探査機「うらしま」を採用し、電源供給や音響による支援母船との通信などの各種機能の強化と共に、重力測定に適した安定した航行が可能な技術の開発も行った。さらにデータ解析方法についても、海中測定のための開発・改良を行った。2012年に相模湾において実海域実証試験を実施し、探査に必要である0.1mGalの精度が得られた。2015年に、鉱床の存在が推定されている中部沖縄トラフ伊是名海穴にて、「うらしま」による実証観測を実施した。その結果、高重力異常を検出し、これらの異常が周囲との密度差1.5g/cm3の鉱床に起因するとすれば、直径300m程度、厚さ数十mの鉱床の存在が推定される。また、ベヨネーズ海丘においても実海域実証試験を実施して、高精度な重力異常分布が得られた。

開発した海中重力計システムにより得られた沖縄トラフ伊是名海穴南部の高分解能ブーゲー重力異常図。点線円は高密度体の推定位置。
開発した移動体搭載型海中重力計システムの内部