金曜セミナー(3月27日、土屋卓久氏)

3月27日(金)16:00-17:00 第一会議室


講演者: 土屋卓久氏(愛媛大)


 


第一原理計算による結晶内原子拡散のシミュレーション手法開発の試み

マントル鉱物の原子輸送特性は、地球深部の物質移動を理解する鍵となる性質である。高
温高圧下では高精度測定がいまだ困難であるため、理論シミュレーションの果たす役割が
大きい。しかし単純な結晶構造を持つMgOであっても、従来の結果は計算方法によっ て大
きく異なっている。例えば、静止格子エネルギー計算に基づき空孔移動エンタルピーを求
めたIta & Cohen (1997)と、分子動力学(MD)法により空孔の運動を直接シミュレート
したIto & Toriumi (2007)では、高圧下において自己拡散係数の圧力 依存性が全く異
なっている。特に後者は高圧下で圧力と拡散係数の 正の相関を見出し、それにより深部
マントルの低粘性率モデルを提案した。
これら2つの方法は結晶内原子拡散を計算する代表的なものだが、それぞれに長所と短所
がある。特に、前者では原子が空孔にジャンプする試行頻度 を求める方法が明確で な
い、後者では、マントル温度では現実的なシミュレーション時間内に原子拡散が生じな
い、といった問題がある。また、両方のシミュ レーションともモデル化 された原子間力
を用いており、いわいる第一原理計算ではない。このようなことにより、どちらの計算結
果がより正しいかは、まだ明らかにされていない。
そこで我々は、密度汎関数理論に基づく第 一原理計算法を用い、従来の問題点を克服し
て結晶内原子拡散を計算する、新たな手法の開発を試みることにした。今回の発表ではプ
ロ ジェクトの現状について報告するとともに、可能であればMgO以外の鉱物、或は格子拡
散以外のシミュレーションへの拡張についても紹介する。