木下正高1、白石和也2、橋本善孝3、濱田洋平2、仲田理映1,4
1東京大学地震研究所 2海洋研究開発機構3高知大学 4Lawrence Berkeley National Laboratory
Thermal and Structural Signatures Associated With Subducted Seamounts in Hyuga‐nada and Off Cape Muroto, Southwest Japan
Journal of Geophysical Research: Solid Earth, 131, e2026JB034209 https://doi.org/10.1029/2026JB034209
我々は、南海トラフの日向灘および室戸岬沖の前弧斜面における熱流量を、地震探査反射データから抽出したBSR(ボトム・シミュレーティング・リフレクター:ハイドレートの底面)深度から推定しました。日向灘では、九州–パラオ海嶺(KPR)が現在沈み込みつつあり、浅部スロー地震が頻発しています。海嶺東側では熱流量が50 mW/m²を超える一方、西側では40 mW/m²未満に低下し、沈み込んだ海山付近では約20 mW/m²の極小値を示します。室戸岬沖では、沈み込んだ海山の前方約4 kmの狭い帯状域で熱流量が60から30 mW/m²へ急減し、微動活動と一致しています。
三次元熱構造モデルにより、KPRを挟んだ広域的な熱流量の差は、若い四国海盆と古い西フィリピン海盆との年代差に起因することが示されました。一方、沈み込んだ海山周辺の局所的な低熱流量異常は、速度構造や熱伝導率の不確かさでは説明できません。むしろ、急速な堆積と断層活動、沈み込み前の海山内部の熱水冷却、あるいは断層に沿った間隙流体移動を反映している可能性があります。地震探査断面には逆断層様構造、正断層、ダイアピル状構造が認められ、海山沈み込みが変形や流体経路に強く影響していることが示唆されます。
これらの熱的・構造的観察結果は、沈み込む海山が前弧域の力学的強度や変形様式をどのように修飾するかに新たな制約を与えるものであり、日向灘における浅部スロー地震の分布を理解する手がかりとなります。

