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2015年5月29日、鹿児島県屋久島町 口永良部島 新岳で噴火が発生し、気象庁より噴火警戒レベル5が発表されました。
(東京大学地震研究所・京都大学防災研究所)
無人ヘリによる口永良部島地震観測の暫定結果
口永良部において、無人ヘリを用いて山頂付近4か所に地震計を設置し、4/17から5/29 9:59の噴火により破壊されるまでの山頂付近での地震データが得られた。図1にヘリコプター離発着場所(■)と観測点位置(●)を示す。
地震計(図2)は太陽電池で駆動され、センサー部は4.5Hzの短周期速度計(上下動)である。
これを、ヘリコプターで設置位置上空まで運び、ウインチで地表まで降下させて設置する(図3)。
携帯電話通信網を用いて10分おきにデータを送信する。各観測点の最終データの時刻は、9:47~9:52であるが、この時間帯に機器が破損したわけでなく、噴火前に行った最後の通信時刻を反映している。
地震計の設置は、ヘリからウインチで降下し地面に置くだけなので地面とのカップリングが十分でない。更に、風によるノイズやフレームの共振の影響もあり、高周波側のデータはSNが悪い。
2つの観測点EV.E1とEV.E2のフィルター無し記録を比較すると、地震数に大きな差があるように見える(図4)。しかし、8Hzのローパスフィルターを掛けると、ノイズの多くが除かれて両者の地震発生状況は概ね一致する(図5)。
5/1から、噴火前までのデータに対し、8Hzのローパスフィルターを掛け、STA/LTA=5 を超えたイベントを自動検出した結果を下に示す(図6)。
5/4~5/7 と 5/19~5/22 には山頂での地震数がやや増加した。5/23は島内で震度3となる有感地震が発生したが、山頂観測点での計測数はそれほど増えていない。5/25以降噴火前までは地震数が大きく増加している。
5/29の計測数が減っているのは、噴火により機器が壊れたことにより噴火時以降のデータが無いことと、地震数が急増すること無く噴火に至ったことが一因と推定される。
山頂付近の地震活動は、5/24まではあまり変化していなかったが、噴火が近づくにつれて活発になっていることは、熱源が浅部へ接近したことを反映している可能性がある。
なお、この結果は自動検測結果に基づく暫定的なものであるから、今後の詳細な検討によって結果が変わる可能性があることに留意する必要がある。