【研究速報】2024年4月17日インドネシア・ルアング火山の噴火(2024/04/30更新)

ウェブサイト立ち上げ:2024年4月18日
最終更新日:2024年4月30日

4月17日21時00分頃に発生したインドネシアのルアング火山での大規模な噴火について、こちらで情報を更新してまいります。


*報道関係の皆さまへ:図・動画等を使用される際は、「東京大学地震研究所」と、クレジットを表示した上でご使用ください。また、問い合わせフォームより使用した旨ご連絡ください。


2024年4月30日
数理系研究部門 鈴木雄治郎 准教授

 
 日本時間2024年4月30日午前3:40―3:50(4/29 18:40―18:50UTC)頃にインドネシアの北スラウェシ州ルアング火山で爆発的噴火が開始した。火口から放出された噴煙(火山灰などのマグマの破片と火山ガス)は大気中を上昇し、噴火開始から2時間以上かけて水平に拡大した。 4月17日にも爆発的噴火が発生したが(4/17噴火)、噴煙の広がりは今回の噴火のほうが顕著に大きい(図1)。また、拡大の継続も4/17噴火に比べ長い。そのため、噴火規模・噴火強度ともに4/17噴火を超えるものと推定される。

図1:噴火開始から約2時間後の気象衛星ひまわり赤外光観測(11.2μm)画像。(左図)4/17噴火、(右図)4/30噴火。

謝辞:ひまわり画像データは千葉大学環境リモートセンシング研究センターから提供されました。


噴火強度の推定
2024年4月18日
数理系研究部門 鈴木雄治郎 准教授


 日本時間2024年4月17日午後9:00(12:00UTC)頃にインドネシアの北スラウェシ州ルアング火山で爆発的噴火が発生した。火口から放出された噴煙(火山灰などのマグマの破片と火山ガス)は大気中を上昇し、噴火開始から2時間以上かけて水平に拡大した。

図1:気象衛星ひまわりの赤外光観測(11.2μm)で得られた噴煙画像。(データは千葉大学環境リモートセンシング研究センターから提供された。)【画像をクリックして動画を再生】

 火口での噴出率kg/s(単位時間の噴出量)は噴火の強さを表すため、最も重要な指標である。ルアング火山噴火の噴煙の広がりと数値シミュレーション結果、また、過去に発生した他火山での噴火のデータと比較することで、今回の噴火の噴出率を推定した。噴出率を変えたいくつかの数値シミュレーション結果と人工衛星画像を比較したところ、噴出率が107 kg/sに設定したシミュレーション結果が実際の噴煙の広がりと類似した(図2)。

図2:人工衛星画像と数値シミュレーションの比較。上から見た噴煙拡大の様子。

 噴煙拡大の時間変化について、今回の噴火を過去に観測された他火山の噴火と比較した(図3)。ルアング火山噴火の噴煙面積は、噴出率が109 kg/s以上と推定されているフィリピン・ピナツボ火山1991年噴火やフンガ・トンガ火山2022年噴火より非常に小さく、噴出率4×107 kg/sよりやや小さかった。数値シミュレーション結果も合わせて比較すると、噴出率107 kg/sの噴煙面積とほぼ同じかやや大きかった。

図3:噴煙面積の時間変化。赤プロットが今回のルアング火山噴火。代表的な過去の噴火と数値シミュレーション結果も併記。

 以上から、この噴火の噴出率は1 – 4×107 kg/sという速報値が得られた。これは富士山宝永山の1707年噴火に相当する噴火強度で、比較的強い噴火であったことを示唆する。


参考文献
Koyaguchi, T. and Ohno, M. (2001). Reconstruction of eruption column dynamics on the basis of grain size of tephra fall deposits: 2. Application to the Pinatubo 1991 eruption, J. Geophys. Res., 106(B4), 6513–6533.

Miyagi, N. et al. (2011). High-resolution reconstruction of the Hoei eruption (AD 1707) of Fuji volcano, Japan, J. Volcanol. Geotherm. Res., 207, 113–129.

Suzuki, Y. J. and Iguchi, M. (2019). Determination of the mass eruption rate for the 2014 Mount Kelud eruption using three-dimensional numerical simulations of volcanic plumes, J. Volcanol. Geotherm. Res., 382, 42–49.


謝辞:ひまわり画像データは千葉大学環境リモートセンシング研究センターから提供されました。ここに記して感謝の意を表します。