着任セミナー (2021年4月23日) 大邑潤三(地震予知研究センター)

講演者:大邑潤三

タイトル:歴史地震事例にみる被害の発生要因と地域性

アブストラクト:
近代的な地震観測がなされる以前に遡って,過去に発生した地震の実態を明らかにすることは,分析可能な地震事例を増やすという点で意義のあるものである.地震災害における被害の発生要因を明らかにするという観点でも,現代社会は科学技術の進歩や社会構造の多様化により,被害とその諸要因の関係が複雑かつ見えにくくなっているとされ,過去に遡って多くの事例を収集し分析せねばならない.
発表者はこれまで,1830年京都地震,1925年北但馬地震,1927年北丹後地震の主に3例の地震について,地理学的な視点から地震現象や被害状況の復原,および被害の発生要因について分析してきた.自然災害は自然的な外力(誘因)が人間社会の脆弱性(素因:自然素因・社会素因)に作用して生じるものである.これら3件の地震被害の分析では,自然素因に加え地域の歴史や生業,建物や街並みなど,社会素因が大きく関わることを明らかにした.本発表ではこれらの成果を簡潔に紹介するとともに,今後の研究の抱負について述べる.