金曜日セミナー (2021年6月11日) 辻健 (九州大学)

微動とアクティブ震源を用いた地殻モニタリング

GNSS等の測地データの蓄積により、地震や火山噴火に伴う地表変動が明らかになってきた。しかし地震に伴う地殻応力の変化や、火山噴火に伴うマグマ溜まりの変動は、地殻深部で生じる現象である。つまり地震や火山噴火に伴う動態を正確に理解するには、地殻内部の変動を観測するのが好ましい。本研究では、日本列島全域に設置されている地震計で記録された微動データに対して地震波干渉法等を適用し、地殻深部を伝わる弾性波速度(S波速度)の時空間変化を推定した。モニタリングで得られた弾性波速度変化は、地殻の間隙水圧の変化を反映しており、その変化のパターンは岩石の種類や浸透率に依存することが分かってきた。同様の手法は、海溝付近に設置されている海底地震計にも利用できる。紀伊半島沖のDONETに適用したところ、プレート沈み込みに伴う歪の蓄積と、地震に伴う歪の解放といった断層の動態を捉えることができる可能性が示された。近年は、さらに精度良く(高い時空間解像度で)モニタリングを実施するために、定常モニタリング震源とDASを用いたシステムの開発を行っている。本発表では、これらのモニタリングの結果と課題、将来に向けた取り組みについて紹介する。