2018年 M6.7北海道胆振東部地震前後の地震活動の特徴

熊澤貴雄・尾形良彦・鶴岡 弘

1 東京大学地震研究所,統計数理研究所

Earth, Planets and Space (2019) 71:130 https://doi.org/10.1186/s40623-019-1102-y

2018年6月に発生したM6.7北海道胆振東部地震の前震、余震活動の特性を統計モデルで詳細解析した。この地震の余震地域の地震活動は2003年M8.0十勝沖地震を境に統計的に有意に減少していたが、震源分布は余震地域の浅い方に移動しながら、M5.1地震を含む群発地震が胆振東部地震本震(M6.7)の約一年前にその深部で発生した。本震に続く余震活動は、本震の数日後から2019年2月の最大余震(M5.8)まで有意な静穏化を示した。これらの活動変化は十勝沖地震および胆振東部地震による応力変化で説明できる。前述のM5.1地震と本震後の群発地震の期間には地震活動の上昇傾向が検出され(図1)、これらの活動が通常の(ETAS地震活動モデルが想定する)、先行する地震からの誘発の連鎖とは異なる因果関係で発生したことが示唆される。余震活動全体のb値の変化は、余震期間全体を通して経過時間とともに増加傾向を示したが、これは余震が空間的に異なる特性を持つことを意味する。