馬場慧1・竹尾明子1・小原一成1・松澤孝紀2・前田拓人3・ 1: 東京大学地震研究所、2: 防災科学技術研究所、3: 弘前大学理工学研究科
Journal of Geophysical Research, Solid Earth, https://doi.org/10.1029/2019JB017988
巨大地震が発生するプレート境界面の固着域の周辺部では、通常の地震のほかに、スロー地震と呼ばれる、通常の地震よりも遅いすべり速度で断層破壊が起こる現象が発生しています。スロー地震は巨大地震と共通の低角逆断層のメカニズム解を持つことから、巨大地震の発生と関連している可能性が指摘されています。スロー地震の中には、低周波微動、スロースリップイベント、超低周波地震(Very Low Frequency Earthquake; VLFE)があり、本研究で解析を行ったVLFEは、0.02-0.05 Hzの周波数帯で観測されています。本研究では、VLFEを用いて北海道〜東北地方の太平洋沖におけるプレート境界面のすべりを明らかにすることを目的にVLEFの検出を行いました。解析では、3次元速度構造モデルを用いた理論波形をテンプレートとし、これとF-net波形データの相関係数を計算するマッチドフィルター法を用いました。この手法は、任意の位置にスロースリップの仮想震源を設定できるという利点があります。
その結果、十勝沖、及び岩手県沖と茨城県沖では、それぞれ2003年9月26日の十勝沖地震(Mw 8.0)と2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震(Mw 9.0;以下、東北地震)の後に、それらの地震のアフタースリップによると考えられるVLFEの発生数の急激な増加が見つかりました。一方、宮城県沖〜福島県沖では東北地震後にVLFEの活動の静穏化が見られました。これは、宮城県沖〜福島県沖が東北地震の断層面の大すべり域の縁にあたり、東北地震によって蓄積していた歪みが解消されたためと考えられます。また、十勝沖地震後の十勝沖〜青森県沖および東北地震前の宮城県沖では、数ヶ月〜1年程度の間隔でVLFEがバースト的に発生する活動が見られ、これはプレート境界面のわずかなすべりを反映している可能性があります。