霧島山新燃岳の噴火と関連した深部低周波地震

栗原亮・小原一成・竹尾 明子・田中優作 東京大学地震研究所

Journal of Geophysical Research: Solid Earth, 124, 12, https://doi.org/10.1029/2019JB018032

火山の地下深部(20–30 km)では、深部低周波地震と呼ばれる通常の地震に比べて低周波の地震波を放出する地震が発生していることが知られています。この深さは通常の火山性地震が発生する深さ(数km程度)と比べて深く、地下深部から地表までのマグマの供給に関係していると考えられています。日本では気象庁が通常の地震と合わせて深部低周波地震の観測を行い地震カタログに登録されています。しかし、深部低周波地震は一般的にマグニチュードが小さく、検出および震源決定が難しいため、霧島山では深部低周波地震と噴火を含む火山活動との関係は知られていませんでした。

                   我々は深部低周波地震と噴火の関係を調べるため、過去に観測された深部低周波地震の波形と似た波形を探すマッチドフィルタ法という手法を用いて、2004年4月から2018年12月までの期間で深部低周波地震の網羅的な検出を行うとともに、深部低周波地震の震源位置の再決定とグループ分けを行いました。

                   その結果、2011年1月の霧島山新燃岳での準プリニー式噴火の前後の期間に、深部低周波地震の数が増加していることがわかりました。その増加は2009年12月頃に開始し、2011年9月頃に終了しており、地殻変動の推移とよく対応していました(図)。グループ分けの結果、この期間内に増加した深部低周波地震は、別の期間に発生している深部低周波地震と比べて震源位置がやや深く、その波形はより低周波の成分が卓越していることがわかりました。さらに、深部低周波地震の震源位置が噴火の推移と対応して変化していることもわかりました。また、2017年から2018年の霧島山新燃岳および硫黄山で発生した噴火の際にも深部低周波地震が増加していることがわかりました。

                   これらの結果から、2011年の霧島山新燃岳の噴火の約1年前から地下深部よりマグマの供給が行われていたことがわかりました。本研究で明らかになった、噴火前後における深部低周波地震の震源位置は、地下深部からのマグマの供給ルートの解明の手がかりとなることが期待されます。

図(a) 国土地理院GEONETの2観測点間で計算された地殻変動 (b) 気象庁の地震カタログでの霧島山付近での深部低周波地震の累積個数 (c) 本研究で検出した深部低周波地震の累積個数。矢印は深部低周波地震が増加した期間を示す。