日本海における確率論的津波ハザード評価

Iyan E. Mulia, 石辺岳男(地震予知総合研究振興会), 佐竹健治, Aditya Riadi Gusman (GNS Science), 室谷智子(国立科学博物館)

Earth Planets Space 72, 123 (2020). https://doi.org/10.1186/s40623-020-01256-5

 日本海東縁部では、過去100年間に1940年積丹半島沖の地震、1964年新潟地震、1983年日本海中部地震、1993年北海道南西沖地震といった大地震(M>7)によって津波が発生し、日本海沿岸に大きな被害をもたらしてきました。

 文部科学省受託研究「日本海地震・津波調査プロジェクト」の一環として、日本海沿岸における津波の高さを確率論的に評価しました。すなわち、日本海で大地震を起こすと考えられるすべての断層からの津波を考慮し、各沿岸においてある期間内に想定される津波の高さを求めました。

具体的には、「日本海における大規模地震に関する調査検討会」(国土交通省・内閣府・文部科学省)によって同定されている60の活断層を対象に、断層面上のすべりの不均質性を考慮した7万通り以上のシナリオを想定し、それらによる沿岸での津波高さをシミュレーションしました。過去の津波との比較からシミュレーション結果の不確定性を見積もり、地震活動カタログに基づいて、それぞれのシナリオの発生確率を計算し、それらを足し合わせることによって、日本海沿岸の約150の市町村ごとの津波高さを確率論的に求めました。 結果の図を見ると、想定される津波の高さは東北地方~北陸地方で高く、西南日本では低いことがわかります。今後100年間に想定される津波高さ(図下)は最大3.7mですが、500年(図中)だと最大7.7m、今後1000年間(図上)では最大11.5 mと高くなります。さらに、各沿岸での津波高さに寄与する断層を調べると、西南日本における津波は遠方の活断層による寄与が大きく、北海道~北陸地方では近傍の活断層による寄与が大きいことがわかりました。