日本海のプレートの厚さ

悪原 岳, 中東和夫(東京海洋大学), 篠原雅尚,山田知朗, 塩原 肇, 山下裕亮(京都大学防災研究所), 望月公廣, 植平賢司(防災科学技術研究所)
Lithosphere–asthenosphere boundary beneath the Sea of Japan from transdimensional inversion of S‑receiver functions
Earth, Planets and Space (2021) 73:171 DOI: 10.1186/s40623-021-01501-5

 今から2300–1500万年ほど前、日本列島はユーラシア大陸から引き離されるようにして誕生し、日本海も一緒に形成されました。日本海は、北部に位置する日本海盆、南東部および南西部に位置する大和海盆と対馬海盆、そして中央部に位置する大和堆に大別することができ、それぞれの形成過程が議論されてきました。日本海盆の地殻は典型的な特徴を示し、よくある海洋底拡大のプロセスで形成されたと考えられています。一方で、大和海盆や対馬海盆の地殻は異常に厚いことが知られており、その成因は議論の的となっています。本研究では、地殻より深部の上部マントル構造に、海盆の形成プロセスの手掛かりを探しました。
 日本海ではこれまでに、海底地震計による地震観測が行われており、地震波形記録が取得されています。地球内部を伝わる地震波は、物質の境界層を通過する際に、S波からP波(あるいはその反対)へと波の性質が変化します。本研究では,海洋プレートの底部でS波からP波へと変換する波を解析することで、プレートの厚さを求めました。その結果、日本海盆と大和海盆では、地殻の厚さが大きく異なるにもかかわらず、プレートの厚さ自体はほとんど変わらないことが分かりました。このことは、大和海盆も日本海盆と同じように、海洋底の拡大によって誕生したことを示唆します。また、大和堆の下ではプレートの厚さが顕著に厚くなっていることが明らかになりました。これは、大和堆がユーラシア大陸の名残であるためと考えられます―大陸プレートは一般的に海洋プレートよりも厚くなっています。
 日本海のプレート構造を明らかにすることは、日本海の成り立ちを知るためだけでなく、日本海の東縁部に沿った大地震の発生帯(いわゆる、ひずみ集中帯)の機構を理解するためにも役立ちます。今後、海域地震観測のさらなる充実により、より詳細なプレート構造を明らかにする必要があります。
 本研究(海域地震観測も含む)は、文部科学省「日本海地震・津波調査プロジェクト」の一環として行われました。