デコルマの形状が超低周波地震をコントロールする

橋本善孝・佐藤茂行(高知大学)・木村学(JAMSTEC)・木下正高(東京大学地震研究所)・宮川歩夢(産業技術総合研究所)・グレゴリー・ムーア(ハワイ大学)・中野優(JAMSTEC)・白石和也(JASMTEC)・山田泰広(九州大学)

Décollement geometry controls on shallow Very Low Frequency Earthquakes, Yoshitaka Hashimoto, Shigeyuki Sato, Gaku Kimura, Masataka Kinoshita, Ayumu Miyakawa, Gregory F. Moore, Masaru Nakano, Kazuya Shiraishi and Yasuhiro Yamada, Scientific Reports (2022) https://doi.org/10.1038/s41598-022-06645-2

 
 沈み込みプレート境界において、スロー地震の観測が多く報告されています。スロー地震は巨大地震に比べて著しく遅く、一般的なプレート運動よりも速いすべりによる地震です。スロー地震の発生メカニズムを理解することは巨大地震のメカニズムの理解にもつながると考えられており、将来の地震の予測や減災に役立つものとして注目されています。一つの仮説として、沈み込みプレート境界上の物質や圧力の不均質な分布がスロー地震を引き起こすと提案されていますが、その天然における不均質分布を高解像で示した例はありませんでした。

 本研究では、紀伊半島沖南海トラフにおける3次元地震波反射断面を用いて浅部沈み込みプレート境界の地形を立体的に表し、広域的な圧力の向きに応じて面のすべりやすさ及び開きやすさの分布を検討しました。その結果、すべりやすい領域が北北東―南南西方向に配列していることが明らかとなりました。同地域には浅部超低周波地震(スロー地震の一種)が観測されており、この浅部超低周波地震の配列が上記のすべりやすい領域とほぼ平行に分布していることが分かりました。これは、すべりやすい領域で超低周波地震が発生していることを示唆します。

  沈み込みプレート境界上のすべりやすさ・開きやすさの分布は地形と広域的な圧力にのみから推定されるもので、物質の性質は全く考慮していません。このすべりやすさの分布と超低周波地震の分布に関係があることから、超低周波地震は沈み込みプレート境界の地形に第一義的にコントロールされていると考えられます。

左図:赤線は紀伊半島沖南海トラフ3次元地震波反射断面の領域、赤領域は超低周波地震の分布、黒線の四角は中央図の解析範囲を示します。中央図:浅部プレート境界面上のすべりやすさの分布。赤がすべりやすい領域を、青がすべりにくい領域を示します。右図:同地域における超低周波地震の分布。北北東―南西方向への配列が見られます。