日本海盆の海洋プレート内部に見つかった予期せぬ不連続面

艾 三喜1,2, 悪原 岳2, 森重 学2, 吉澤 和範3, 篠原 雅尚2, 中東 和夫4

1.中国地質大学(武漢) 2. 東京大学地震研究 3. 北海道大学 4. 東京海洋大学

Layered Evolution of the Oceanic Lithosphere Beneath the Japan Basin, the Sea of Japan
Journal of Geophysical Research: Solid Earth 
https://doi.org/10.1029/2023EO230057

 日本海の北部に位置する日本海盆は、およそ2000万年前に日本列島がユーラシア大陸から分かれる過程で誕生しました。その詳細な形成史を明らかにするために、浅部の地殻構造や地磁気など、様々なデータに基づいた研究が行われています。本研究では、2017年から2019年にかけて日本海盆に設置された広帯域海底地震計のデータを用いて、日本海盆下の地震波速度構造を、現代的な統計解析(ベイズ解析)によって求めました。

 推定された速度構造は、海底に積もった堆積層、地殻・硬いマントルからできている海洋プレート、柔らかく流動するマントルといった、よく知られている特徴でおおむね説明がつくものでした(図1)。一方で、海洋プレート内部に予期せぬ不連続面も見つかりました。詳細に調べると、不連続面より浅い部分では、地震波が伝わる速度が方向によって異なる(強い異方性をもつ)こと、反対に深い部分では異方性が弱くなっていることが明らかとなりました。


 海洋プレートは、海嶺で生み出されたマグマが柔らかいマントルの上を流されながら、浅い部分から順番に冷えて固まることで誕生します(図2の左側)。このとき、プレートの動く向きに沿った異方性が海洋プレート内部に作られます。日本海盆では、およそ2000万年前に海洋プレートの形成が始まりましたが、約1500万年前にその活動が急に止まったことが知られています。この急激な変動によってマントル内の流れが乱され、その後に冷え固まった海洋プレートの深部では、異方性が失われたと考えられます(図2の中央~右側)。

 本研究はJournal of Geophysical Research: Solid Earth誌のエディターハイライト論文として選出されました(https://doi.org/10.1029/2023EO230057)。