Florent Brenguier (1), Michel Campillo (1), 武田哲也 (2),青木陽介 (3),Nikolai M. Shapiro (4), Xavier Briand (1), 江本賢太郎 (2, 5),三宅弘恵 (3)
(1) ジョセフ・フーリエ大学地球科学研究所 (2) 防災科学技術研究所 (3) 東京大学地震研究所(4) パリ地球物理学研究所 (5) 現・東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻
Science, vol. 345, 80-82, doi:10.1026/science.1254073
地震波速度の時間変化による火山性流体のマッピング
地震と火山はどのように相互作用するのでしょうか?火山の地下にある火山性流体の広がりや状態はどうなっているのでしょうか?その疑問に答えるために、本研究では2011年東北地方太平洋沖地震が日本列島の火山の地下構造に与えた影響を明らかにしました。
本研究では、主に海洋で励起される地震波の雑微動を用いて、日本列島に密に設置された防災科学技術研究所Hi-net高感度地震観測網のデータから、東北地方太平洋沖地震の前後各6ヶ月の1日ごとの地震波速度を求めました。その結果、東北地方太平洋沖地震に伴う地震波速度変化は火山地域で特に大きいことが明らかになりました。この結果は、地震波の通過や地面の変形によって火山地下に存在する高圧の火山性流体が地下を破砕したものと解釈されます。
とりわけ、震源から500キロメートル離れた富士山で大きな地震波速度異常が明らかになりました。このことは、富士山には高圧の火山性流体が分布しているということを示しています。
本研究の結果は、地震観測から火山性流体の分布を知ることができるということを示しています。つまり、今後地震観測によって噴火をもたらす危険のある火山をより正確に特定できる可能性を示唆しています。
図:応力変化に対する地震波速度変化の感度の空間分布。東北地方太平洋沖地震にともなう地震波速度変化と、全地球測位システム(GNSS)による観測により求められるひずみ変化から求められています。黒い三角形は第四紀火山の分布を、赤線は火山フロントを表します