日本海粟島沖に設置した新規開発の小型ケーブル式海底地震観測システム

篠原雅尚・金沢敏彦・山田知朗・町田裕弥・真保敬・酒井慎一
Marine Geophys. Res., doi:10.1007/s11001-013-9197-1, 2013
日本海粟島沖に設置した新規開発の小型ケーブル式海底地震観測システム

日本は沈み込み帯に位置しており、プレート境界である海溝付近では、度々大きな地震が発生しています。海底での地震観測は、地震発生を研究する上において、重要なことです。ケーブル式海底地震観測システム(以下、OBCS)は、データをリアルタイムで陸上に伝送できることなどから、海底における地震観測としては、最適な方法です。しかしながら、現在、海域に常設してある地震観測点の数は十分ではありません。そこで、地震研究所では、新しい小型のOBCSの開発を継続して行ってきました。 地震研究所が開発したOBCSは、インターネット技術を用いた通信回線の冗長化による信頼性の向上、最新半導体技術を用いた地震計部の小型化などが特徴です。データは、光ファイバーを用いて伝送され、1本のケーブルに複数の地震計が直列に接続できます。通信部は、イーサネットスイッチを持っており、通信路に障害が発生したときには、スイッチを切り替え、他の通信路を確保します。最新の半導体技術を用いることにより、地震計部は、従来に比べて、体積比で10分の1に小型化されており(図1)、地震計、通信部、および電源は、直径が約15cm、長さ約50cmの円筒形のカプセルに収納されています(図2)。海底ケーブルの埋設と同時に、容易に地震計本体を海底下に埋設することができます。埋設により、観測データの品質向上が期待されると共に、漁業活動などとの干渉を避けることができるようになりました。 図1今回新規に開発したOBCSの内部ユニット 図1今回新規に開発したOBCSの内部ユニット 図2 日本海に設置したOBCS地震計部の外観 図2 日本海に設置したOBCS地震計部の外観 日本列島の日本海側及び日本海東縁部には「ひずみ集中帯」が形成されていて、これまで大きな被害地震が発生しています。開発したOBCSの1号機は、2010年8月に新潟県岩船郡粟島浦村(粟島)の南方、1964年新潟地震の震源域直上に設置されました(図3)。設置されたOBCSは、全長は25kmであり、海底地震計ユニット4台が約5km間隔で接続されています。また、水深が20mより深い部分では、地震計、ケーブル共に、海底から約1mの深さに埋設しました。海底ケーブルの一端は、粟島に陸揚げされており、データはインターネットを用いて、粟島から、地震研究所に伝送されています。2010年の設置以来、観測が継続しており、システムを埋設した効果により、質の高い地震データが蓄積されています(図4)。 図3 設置したOBCSの位置 図3 設置したOBCSの位置 図4 2011年3月11日24時間の連続記録 図4 2011年3月11日24時間の連続記録 なお、本論文は、Open Accessであり、http://link.springer.com/article/10.1007%2Fs11001-013-9197-1から自由にダウンロードできます。また、著作権は著者らが所有しております。