自律式無人ヘリコプターを利用した繰り返し空中磁気測量 ―2011年霧島山新燃岳噴火後の事例―

Takao Koyama1, Takayuki Kaneko1, Takao Ohminato1, Takatoshi Yanagisawa2, Atsushi Watanabe1, and Minoru Takeo1

1Earthquake Research Institute, University of Tokyo/2IFREE, Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology

Earth Planets Space, 65, 657–666, 2013

自律式無人ヘリコプターを利用した繰り返し空中磁気測量

―2011年霧島山新燃岳噴火後の事例―

2011年新燃岳噴火後の5月と11月の2度、無人ヘリコプターを用いて空中磁気測量を実施しました。本観測の主目的は、1)新燃岳および周辺の磁化構造を推定すること。2)噴火後の磁化の変化を抽出すること。の2点です。 2011年5月の観測において、新燃岳の西側の領域、東西2km×南北3kmの範囲を100mの測線間隔で対地高度およそ100m一定のフライトで磁気測定をおこないました。その結果、全磁力値46500~47500nTという1000nTにおよび大きな全磁力異常が検出されました。その測定データを元に磁化構造を推定したところ、平均磁化はおよそ1.5A/mという値が得られました。玄武岩質の伊豆大島などが10A/mを超える平均磁化を持つのに比べると、非常に小さな値であると言えます。磁化鉱物をあまり含まないアンデサイトであったこと、ランダムに降り積もった火山灰による見かけ上の磁化の減少、鉱物変質による磁化の弱化などがその要因として上がられます。 およそ半年後2011年11月に再び同じ領域で空中磁気測量を実施しました。5月の測定との差に着目しますと、最大で±100nTという大きな全磁力の時間変化が見られました。特徴としては、新燃岳の火口で顕著であり、火口の南側が正、北側が負というパターンであり、このことは、火口においてなにかが帯磁したことを示唆しています。 今回の新燃岳の噴火に際して火口での現象に着目しますと、以前あった火口湖が消失し、溶岩によって火口が満たされました。上述の帯磁したものとはこの火口内にあらわれた溶岩が冷却し帯磁したものであると考えられます。 この火口内の溶岩が帯磁したと仮定して周囲に及ぼす全磁力異常を計算したところ、測定データと非常によい一致が見られ、この仮定はおおよそ正しいものであったことがわかりました。 本研究のように、危険が伴い人が近づけない場所においても無人ヘリを使った磁気探査を行えば、接触することなく地下の温度の状況を把握できるという点で火山の内部の様子を調査する非常に有効な手段であることが実証できたと言えます。 左図は5月と11月の全磁力測定データの差、右図は火口内溶岩が帯磁したとして計算された全磁力異常。両パターンが非常によく一致していることがわかります。