2023年2月トルコ・シリア地震による小津波の起源

胡桂1,2, 佐竹健治2, 李琳琳1,3, 杜朋1

1中山大学 地球科学与工程学院 2東京大学 地震研究所 3南方海洋科学与工程 広東省実験室

Hu, G., Satake, K., Li, L., & Du, P. (2023). Origins of the tsunami following the 2023 Turkey–Syria earthquake. Geophysical Research Letters, 50, e2023GL103997. https://doi.org/10.1029/2023GL103997

 

 2023年2月6日、トルコの東アナトリア断層付近でMw7.7と7.6の内陸横ずれ断層タイプの地震が発生し、トルコ南部とシリア北部を約9時間間隔で襲った(図1a)。最初の地震の後、地中海南東部で局所的な津波が記録された(図1b)。この地域で津波が記録されたのは、1953年のキプロス地震(M L 6.2)以来であった。
 海中での観測記録がないことから、この津波の発生メカニズムは謎のままである。発生メカニズムを理解するために、我々は近隣の4つの検潮所で記録された津波波形のスペクトルエネルギー(図1c)と波形(図1d)を解析し、津波の波線追跡の逆解析(図1e)を用いて発生源を特定した。次に、想定される津波源のパラメータ範囲についてフォワード数値モデリングを行った。その結果、イスケンデルン湾の内側と外側に、おそらく2つの津波源(図1f)が存在することがわかった。これらの津波源は、最初の本震時の強い揺れと、厚い沿岸堆積物に関連している可能性がある。湾の内側にある長さ7kmの沈降域は、引き波初動と10~30分の卓越的な周期を生じ、地すべりによって発生した可能性がある。湾の外側にある長さ6kmの隆起域は、押し波初動と2~10分の卓越的な周期をもたらし、液状化に関連している可能性がある。両方の波源を合わせると、観測された津波波形をよく説明できる(図1g)。

 図1 (a)2023年トルコ・シリア津波のテクトニックな背景。(b)震源近傍の観測点で検出された津波波形(c)とウェーブレット解析(d)。(e)本震後の津波源を特定するための逆波線追跡。 (f)イスケンデルン湾の内外で観測された最大地盤加速度(PGA)の分布。(g) 2つの津波源から計算した波形(赤色)と観測された津波波形(黒色)。図(d)(e)の観測波形は、10-30分のバンドパスフィルターをかけたもの。