火山活動の評価のためのミュオグラフィと地盤変動の統合モニタリングに向けて

László Oláh,  Hiroyuki K. M. Tanaka
Toward joint muography and ground deformation monitoring for volcanic unrest assessment
J. Appl. Phys. 138, 060701 (2025)
https://doi.org/10.1063/5.0275038


 ハンガリーのウィグナー物理学研究センターのLászló Oláh高エネルギー地球物理学グループリーダーと東京大学地震研究所は、宇宙線に含まれるミュー粒子を用いた地球内部透視技術であるミュオグラフィと衛星データを組み合わせることで、ミュオグラフィを組み込んだ火山活動指数を世界で初めて提示しました。この統合的なアプローチは、噴火の原因を特定に繋がり、中期的なハザード評価の改善に役立つことが期待されています。

 
 火山活動指数(VUI)は、過去の火山活動レベルと比較した火山活動の強度を半定量的に評価するために導入された活動指数です。VUIは、通常観測される活動レベルと比較した活動のレベルとして定義されます。VUI 自体は噴火予測ツールではなく、複雑で大規模な監視データを社会に伝える役割を持ち、特にハザードレベル評価に適用されるイベントツリーモデルへの入力情報を提供します。世界で最も活発な火山の一つである桜島火口直下で測定された月次ミュオグラフィデータ、隣接する2つの火口周辺で測定されたSARデータ、そして両火口で収集された気象庁のガス観測データを利用して、20189月から20237月までの期間に観測された密度、地表の隆起沈降、および火山ガス流量を定量的に関連付けました。

 この表では、3種類の監視データレートが最大に達した時点(20199月~202012月)で、軽微な活動(VUI 2)が設定されました。VUI 2は、噴火頻度が最も高かった期間と関連付けられています。無視できるほどの活動 (VUI 1) と無活動(VUI 0) は、それぞれ VUI 2 に対して直線的に設定されました。この指標は確率論的ハザードモデルに組み込むことで、噴火予測とリスク軽減戦略の改善に役立つことが期待されます。

 
 本研究成果は、米国物理学協会AIPが発行する雑誌「Journal of Applied Physics」に2025年8月14日(現地時間)に掲載されました。また、本雑誌のFeatured Article (Journal’s Best)に選出されただけでなく、AIPが発行する全体の論文の中で最も顕著な研究成果のみを特集するScilight (Science Highlight)にも選出されました。


Toward joint muography and ground deformation monitoring for volcanic unrest assessment
https://www.aip.org/scilights/cosmic-rays-provide-penetrating-insight-into-volcanic-activity

Cosmic rays provide penetrating insight into volcanic activity
https://www.aip.org/scilights/cosmic-rays-provide-penetrating-insight-into-volcanic-activity