スロー地震の断層滑りを規定する地下構造の要因

悪原 岳, 白石 和也, 辻 健, 山下 裕亮, 杉岡 裕子, Atikul Haque Farazi, 大柳 修慧, 伊藤 喜宏, 新井 隆太, 荒
木 英一郎, 藤江 剛, 中村 恭之, 利根川 貴志, 東 龍介, 日野 亮太, 望月 公廣, 武村 俊介, 山田 知朗, 篠原 雅尚


Structural barriers control the spatial extent of slow earthquake slip

Nature Communications (2026)
https://doi.org/10.1038/s41467-025-68179-1


 沈み込み帯の浅部で発生するスロー地震は、発生頻度が数年に一度と高く、また、震源近くの地下構造を調査しやすいことから、断層すべりと構造の関係性を明らかにするための重要な手がかりになると期待されます。一般に、断層すべりの分布を精度よく求めることは容易ではありません。本研究では、大規模なスロースリップイベントに伴って発生する小さなテクトニック微動の震源分布に着目し、断層すべりの端を決める、すなわち断層すべりを止める地下構造の要因を調査しました。
 
 本研究では、まず微動分布の端が、海底地形にあらわれている地質構造の境界とよく対応することを確認しました(図1a)。これは、断層すべりの広がりが、観測できない小さな不均質によって決まるのではなく、観測可能なより大きなスケールの地質構造によって支配されることを示唆しています。そこで本研究では、地下構造の反射断面を用いることで、断層すべりが地質境界で止まる仕組みをさらに詳しく検討しました(図1b)。その結果、断層すべりの浅い側の端は断層面の折れ曲がりによって、また深い側の端はプレート境界の上盤側の性質によって制御されているという解釈を提案しました。加えて、地下に存在する流体や、海山の沈み込みといった要因についても、断層すべりに影響を及ぼす可能性があることを示しました。

 本研究はスロー地震に伴う断層すべりを対象としていますが、得られた知見は巨大地震発生時の断層すべり過程の理解を深める上でも有用であると期待されます。

 (a)微動の分布と海底地形の対応。青色の等高線は微動がその場所で起こった確率を表す。(b)
反射断面図の例(下)と断面図に沿った微動の分布(上)。
図1. (a)微動の分布と海底地形の対応。青色の等高線は微動がその場所で起こった確率を表す。(b)
反射断面図の例(下)と断面図に沿った微動の分布(上)。