Chunjie ZHANG, Hikaru IWAMORI
(Earthquake Research Institute, The University of Tokyo)
Title: A Hybrid Probabilistic Framework for Mixed Discrete-Continuous Subsurface Parameter
Estimation from Multi-Physics Geophysical Data: A Case Study for Quantifying the Geofluid
Mapping in the Crust and Upper Mantle
Journal: Journal of Geophysical Research: Solid Earth
Article DOI: 10.1029/2025JB032854
地球の内部構造を調べるとき、推定しなければならない情報には大きく2種類あります。ひとつは「岩石の種類」や「地下にどんな流体(例:水やマグマ)があるか」「いくつの断層がどこにあるか」といった区分的な情報(離散パラメータ)。もうひとつは、「流体がどれくらいの量で、どんな形で存在しているか」「マグマだまりの大きさや位置」「断層がどれだけずれているか」といった連続的に変化する情報(連続パラメータ)です(図1)。
この2種類の情報は互いに影響し合うため、観測データから同時に推定するのは容易ではありません。例えば、岩石の種類が違えば流体の量が同じでも観測される地震波速度は変わり、逆に流体量が変われば同じ岩石でも観測値が変わります。このように「様々な組み合わせで説明できてしまう」状況が起こり、複数の“あり得る答え”が共存することも珍しくありません。
従来の手法では、離散パラメータと連続パラメータを別々に扱ったり、不確実性を単純化したりすることが多く、複数のモデル解釈を公平に比較することが難しいという課題がありました。そこで本研究では、離散パラメータと連続パラメータをまとめて扱い、観測データから両者を同時に推定するための新しい確率論的フレームワークを提案しました。この方法は次の3つのステップで構成されており、地下の岩石や流体の推定例を用いて説明します。
– 離散的な候補モデルや領域を絞り込む段階:まず、様々な岩石種や流体の組み合わせを調べ、その中から観測データと整合する“有望な候補や領域”を特定します。
– 連続パラメータを詳しく推定する段階:“有望な候補や領域”に着目しつつ、モンテカルロ法を使って流体量や形状などの連続パラメータの分布を高精度に推定します。
– 連続パラメータの推定結果を踏まえて離散パラメータを再評価する段階:岩石種や流体タイプなどの離散パラメータを確率的に判断します。 この手法を実際のデータに適用したところ、ノイズの多い状況でも安定した推定が得られ、不確実性を明確に示しながらパラメータ間の関係性を高い解像度で捉えることができました。
この手法は、複数の“あり得る答え”が存在する複雑な逆問題に対して、計算効率を保ちながらその構造を正しく扱える点が大きな特徴です。岩石種と流体の推定に限らず、離散と連続が混在するさまざまな地球物理学的問題に応用できる、実用的で拡張性の高いアプローチです。

