北海道で新たに発見された2004年スマトラ地震による誘発微動

小原一成
GEOPHYSICAL RESEARCH LETTERS, doi:10.1029/2012GL053339, 2012
北海道で新たに発見された2004年スマトラ地震による誘発微動

巨大地震によって生成された大振幅の表面波が通過した際に、火山等の地域で微小地震が誘発する現象が知られています。これと同様に、西南日本の沈み込みプレート境界で発生する深部低周波微動についても、表面波の各位相に対応した非常に明瞭な誘発現象が検出されてきました。微動現象は、ゆっくりすべりに伴って起きることから、日本の他の地域、たとえば活断層深部などでも発生している可能性がありますが、通常は振幅が非常に微弱でノイズに埋もれやすく、またいつ起きるかわかりませんので、検出が大変困難です。しかし、大地震の表面波が誘発する微動については、発生する可能性のある期間が限定されますので、検出は比較低容易です。そのため、本論文では、日本全国を対象として、2004年に発生したスマトラ地震の表面波によって誘発された微動の有無を調べました。その結果、北海道北部の中頓別町、及び中部の南富良野町付近で、新たな微動活動の検出に成功しました。南富良野町の微動源は火山付近で、深さは20km前後と、もともと発生している低周波地震の震源に非常に近く、火山活動に関連した現象である可能性があります。一方、中頓別町の微動源は非常に浅い可能性があり、周辺には既存の地震活動や活断層は存在していません。表面波によって生じたひずみ場と比較すると、圧縮のピークのときに微動が発生していることがわかりました。微動源付近には鍾乳洞が存在することから、一つの推論としては、鍾乳洞のひとつが水で満たされ、圧縮力が最大になったときに水圧がピークに達し、壁面のクラックで水圧破壊が生じたのではないかと考えられます。


図1.本研究で検出された微動の位置(黄色い星印)。赤三角は第4紀火山、橙色の丸は低周波地震、黒線は活断層の位置を表わす。観測点コードが記された□は、図2に示す波形を記録した観測点である。右下に、解析に使用したスマトラ地震の震央と北海道への経路を示す。 図2.防災科学技術研究所高感度地震観測網Hi-net の観測点で記録された中頓別町付近の微動に対応した波形記録。上から3本は近傍の1観測点における変位に変換した上下動、Radial、Transverse成分波形、下4本は近傍の4観測点における4-16Hz帯域のバンドパスフィルター記録