パナヨトプロス ヤニス、平田 直、橋間 昭徳、岩崎 貴哉、酒井 慎一、佐藤 比呂志 (東大地震研)
Tectonophysics 679, 15-28, doi:10.1016/j.tecto.2016.04.019, 2016
2014年11月22日、長野県北部を震源とするマグニチュード6.7(MJMA6.7)の地震が発生した。この地震の余震域の西側には、糸魚川-静岡構造線の一部である神城断層の北部区間が位置しており、地表で確認されている活断層との関係を明らかにすることは,活断層の活動評価を行うにあたって重要である。そこで、震源域とその周辺に位置する41ヶ所の定常点のデータを用いて、2014年長野県北部の地震の前震、本震、余震の震源を詳細に調べて、震源断層の形状把握を試みた。用いたデータは、2014年11月18日から11月30日までの期間に観測された2,118個の地震であり、3次元速度構造(Panayotopoulos et al., 2014)を用いてDouble differential法によって震源を決めた(図1)。得られた震源分布から震源断層を推定した。震源断層の浅部は神城断層の地表トレースと一致し、南東方向に30°~45°で傾斜する。一方、震源断層の深部は小谷-中山断層の深部と一致し、南東方向に50°~65°で傾斜する。神城断層は小谷-中山断層から深部で分岐したFootwall Shortcut Thrustとして 更新世に形成されたと考えられる。断層の中央部では、地震時の滑りが大きく余震活動が少ない。一方、断層北部では余震活動が活発で、地表変位が少ないため、地震時の滑りが少ないと考えられる。本研究で提案した断層モデルを使用して半無限質弾性体モデルを用いて地表変位を求めたところ、得られた地表変位分布はInSARによって観測された地表変位分布と調和的な分布が得られた(図2)。