スロー地震の巨大地震との関連性

小原一成・加藤愛太郎 (東京大学地震研究所)

Science, 353(6296), 253-257. Doi:10.1126/science.aaf1512
14 July 2016 (Online publication) http://science.sciencemag.org/content/353/6296/253

スロー地震は、断層破壊がゆっくりと進行する地震現象であり、強い揺れを伴いません。しかし、スロー地震の多くは沈み込むプレート境界面上で巨大地震発生域に隣接し、巨大地震と共通の低角逆断層型のメカニズムを有することから、巨大地震との関連性が示唆されてきました。スロー地震は、発見されてから20年も経っていませんが、巨大地震に対して以下の3つの役割を担う可能性があることが、これまでの観測研究により明らかになってきました。

①Analog(類似現象):スロー地震の活動様式が巨大地震と類似し、さらに高頻度で発生することから、巨大地震の発生様式を理解するためのヒントを与える可能性。

②Stress meter(応力状態を反映するインジケーター):スロー地震は周囲の応力変化に敏感であるため、巨大地震震源域における応力蓄積の状況に応じて、スロー地震の活動様式が変化する可能性。

③Stress transfer(周囲への応力載荷):スロー地震の発生によってその周囲に応力を載荷することがあるため、隣接した巨大地震震源域における断層破壊を促進する可能性。

今後もスロー地震の活動を継続的にモニタリングし、その活動様式や発生原因の解明を進めることにより、巨大地震の発生過程に関する理解の進展にも繋がることが期待されます。

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