金曜セミナー(6月5日)大槻道夫氏
6月5日16:00−17:00 第一会議室(2号館5階)
局所滑りに基づいたマクロなアモントン則の破れの理論解析
大槻道夫氏(島根大総合理工)
滑り摩擦に関しては古来より様々な研究があるが、多くの基本的問題が未解決のまま残されている。例えば、滑り摩擦の基本法則として、摩擦力が物体加えられた垂直荷重に比例するというアモントン則が知られているが、この法則の成立機構や条件については、未だに確固たる理解がなされていない。近年、これらの研究において大きな進展がある。その1つは、摩擦のきっかけとなる摩擦界面での局所滑りの発生とその伝搬、そしてそれがマクロな運動につながる過程を実験的に見ることができるようになったことである。
このような滑り摩擦の素過程を理論的に理解するために、我々は弾性体の解析計算を行い、そうした局所滑りの挙動が、ある種の安定性解析から理解できることを発見した。さらに、局所的な滑りの大きさによってマクロな摩擦力がスケールされることも発見した。このことから、摩擦の基本法則として知られているアモントン則が、ある条件で系統的に破れることが予言される[1]。この予言の成立は最近の実験とも整合的である[2]。講演では、こうした実験との対応についても詳細に議論したい。
[1]. Otsuki, M. & Matsukawa, H., Systematic Breakdown of Amontons’ Law of Friction for an Elastic Object Locally Obeying Amontons’ Law.
Sci. Rep. 3, 1586
[2]. Katano, Y., Nakano, K., Otsuki, M. & Matsukawa, H., Novel
Friction Law for the Static Friction Force based on Local Precursor Slipping. Sci. Rep. 4, 6324