金曜日セミナー(2023年4月14日)小寺哲夫(東工大)

題目:半導体量子コンピュータの研究動向と展望

要旨:

量子コンピュータは、量子力学の原理に基づく超高速次世代コンピュータとして期待されている。通常のコンピュータが「0」もしくは「1」のいずれか(ビット)を情報処理に用いるのに対し、量子コンピュータでは、「0と1の重ね合わせ状態」である量子ビットを計算に使用する。大規模に集積した量子ビットを操作することで、超並列的な高速計算が可能となることが知られており、その応用探索も進んでいる。

集積量子ビットを実現するための研究は、様々な物理系で精力的に行われている。超伝導体を用いる方式が進んでおり、超伝導体の国産量子コンピュータの稼働が話題となったばかりである。半導体中のスピンを用いる方式も、将来の高性能な量子コンピュータの有望な方式の1つとして期待されている。半導体技術による素子の集積化が可能であり、また情報の保持時間に相当するコヒーレンス時間が長いという利点がある。我々も、量子コンピュータの基盤独自のシリコン量子構造を開発し、スピンの閉じ込めなどを実現してきた [1, 2]。また、高精度なスピンの回転操作などを東大・理研グループと連携して実現してきた [3-5]。

本講演では、量子コンピュータに関する背景とシリコンスピン量子ビットの研究動向及び展望について述べる。可能であれば、地球科学分野に対しての応用可能性も議論したい。

 

[1] G. Yamahata, TK, et al. Phys. Rev. B 86, 115322 (2012).

[2] R. Mizokuchi, TK, et al., Appl. Phys. Lett. 114, 073104 (2019).

[3] K. Takeda, TK, et al., Sci. Adv. 2, 8, e1600694 (2016).

[4] J. Yoneda, TK, et al., Nat. Nanotechnol., 13, 102 (2018).

[5] M. Tadokoro, TK, et al., Sci. Rep. 11, 19406 (2021).