金曜日セミナー(2024年3月29日)川村太一(Institut de Physique du Globe de Paris)

題目:近年の惑星地震学の進展と将来月震探査構想

要旨:
アポロで月面に地震計が設置されて以来、地震学は地球にとどまらない分野となった。その後、地球外での地震観測は長らく実現しなかったが2018年にInSightが火星に着陸し、地球外で初の広帯域地震計により地震観測を実現した。InSightでは4年間の観測から地殻/マントル/核という火星の一次元内部構造を初めて推定することに成功した。InSightの成功を受け、NASAが月の裏側に地震計を設置するFarside Seismic Suiteが採択され、土星探査機Dragonflyでも地震計が搭載予定であり、惑星地震学はますますの広がりを見せている。日本でも近年の月探査の進展の中で日本が優先的に取り組むべき科学課題として月震計ネットワークが挙げられるなど、惑星地震学が注目を集めている。現在ISAS/JAXAと東大、地震研、IPGPが連携して月に広帯域地震計を設置し、将来のネットワーク構築の第一歩とするべく、検討が進められている。本講演ではまずアポロ、InSightで明らかになった月、火星の内部構造を概観し、将来月探査で目指すべきサイエンスについて議論する。特にInSightの最新の成果であるSKS, Pdiff の検出によって得られた火星の新たな内部構造の描像について触れ、広帯域地震計が月で実現しうる新しい課題について議論する。