金曜日セミナー(2024年11月1日) 川口 允孝 (火山噴火予知研究センター)

題目:斑晶メルト包有物を用いた揮発性元素の研究:島弧マグマの硫黄の起源と脱ガス,そしてマグマ上昇過程の理解へ向けて

 

要旨:
島弧火山は多量の火山ガス放出と爆発的な噴火で知られ,マグマ中の揮発性元素の存在量や振る舞いは火山活動を理解する上で重要な要素の1つである.主な揮発性元素のうち,水素と炭素に次いで3番目に多い硫黄はマグマ中での挙動が特に複雑な上,沈み込み帯における輸送過程には未解決な点が残されている.今回話題にするメルト包有物と呼ばれる斑晶内の微小ガラスは,結晶成長時に捕獲されたマグマの欠片であり,硫黄のような揮発性元素を未脱ガスな状態で直接分析できる貴重かつ最適な分析対象として知られている.
本セミナーでは九州のかんらん石メルト包有物研究から得られた成果として,初生マグマの硫黄同位体組成とその起源,また阿蘇火山のマグマ供給系と脱ガス過程について,特に硫黄に着目した研究をご紹介する.そのほか,現在取り組んでいる岩石学的研究や地球化学的マグマ上昇速度計の応用など,今後の研究の展開についてお話する.