3.10.3 相似地震

 ほぼ同じ場所ですべりが繰り返し発生する相似地震は,断層面のすべりの状態を示す指標として注目されている.また,地震の再来特性を考える上で重要な地震である.そこで,日本列島全域に展開されているテレメータ地震観測点で観測された地震波形記録を用いて,日本列島および世界で発生している小規模~中規模相似地震の検出を継続的に行っている.その結果,沈み込むプレートの上部境界では,長期間にわたって繰り返す相似地震群が多数検出されている.作成した相似地震カタログを用いて世界の沈み込み帯におけるすべりの空間分布を調べたところ,得られた平均すべり速度はプレート間巨大地震とその余効すべりの影響が見られる地域では,プレート間の相対運動速度よりも速く,それ以外の地域で遅い傾向を示した.また,プレート間巨大地震の発生サイクルにおいて,プレート間すべり速度が長期的に変化する傾向を明らかにすることができた.すべり速度は地震発生直後に急激に増加し,その後10年程度かけて徐々に減少する一方,地震発生から30年以上経過すると徐々に増加していく傾向が見られた.これらは余効すべりの発生および応力レベルの上昇と関連していると示唆される.さらに,2011年東北地方太平洋沖地震発生から10年経過した後の東北日本地域におけるすべり状況について調査を進めた.2021年に大すべり域周辺で発生したM6~7クラスの地震後には,いずれも小規模な余効すべりが発生したことを確認した.