3.10.4 北海道東部ひずみ集中域における地殻変動解析

 北海道東部屈斜路カルデラ周辺では,北海道でも内陸地震が比較的多く発生し,過去に被害も記録されている.この地域では,カルデラ特有の地下の不均質構造の存在が示唆されており,それによる応力集中によって地震が発生すると考えられている.

 この内陸地震発生ポテンシャルが高いと示唆される地域の周辺では,既存のGNSS観測網に加え,連続およびキャンペーン観測点も設置されており,より空間分解能が高い地殻変動場の推定とその変動場の理解が期待されている.これまでもGNSSデータの解析はされていたが,解析ソフトウェアや設定パラメタの更新,データの追加による再解析を実施した.連続観測点ではこれまでよりもばらつきの小さい座標時系列を得るとともに,キャンペーン観測点では2015年以降のデータが新たに解析されたことにより,概ねどの観測点でも約10年間線形的な変動が続いていることを確認することができた.連続点からは過去に屈斜路湖南部の北向きの局所変動が捉えられていたが,周辺のキャンペーン観測点の結果もそれをサポートし,ひずみ分布としてカルデラの中心部で1ppm/yrオーダーの大きい短縮変形の存在を裏付ける結果が得られた.この短縮変形が生じる要因として,球状圧力源の収縮,低粘性をもつマグマの粘性緩和,不均質構造の影響などが考えられるため,今後モデル計算等によってこれらを定量的に議論し,地震発生ポテンシャルについて検討する必要がある.