部門・センターの研究活動」カテゴリーアーカイブ

3.4.2 強震動予測手法の国際展開

地震災害軽減のための強震動予測では,頻発する被害地震の強震記録に基づき,地震学,特に震源物理に裏打ちされた最先端の手法開発を目指すと共に,地震工学分野で利活用価値の高い応答スペクトルの客観的評価指標を積極的に導入することにより,国際的に受け入れられる検証活動にも注力する必要がある.近年,標準化の意義が強く認識されるようになり,その流れは規格や技術性能にとどまらず,研究開発にも及んでいる.強震動評価に関しては,Verification and ValidationV&V:検証と妥当性確認)による品質管理基準を堅持することにより,過去の地震の観測波形再現と将来の地震の予測波形の双方に対して定量的根拠を明確にし,オープンソースとして強震動予測の開発コードを国際的なプラットフォームにおいて公開することが重要とされている.

米国南カリフォルニア大学に本部を置く南カリフォルニア地震センターSCECでは,断層面と地下構造モデルを入力情報として,複数の強震動予測手法によるValidationを行う場として広帯域地震動プラットフォーム (SCEC Broadband Platform) が構築されている.特徴は,時刻歴波形ではなく工学的利活用を目的とした5%加速度疑似応答スペクトルによる評価,地震動の再現度合を判断する客観的評価指標の導入,そして計算コードの公開である.本研究では,このプラットフォームに米国や韓国で開発された手法に加え,日本で開発された強震動予測手法を実装すると共に,国際展開を図っている.

また,強震動予測に関する国際共同研究を米国・トルコ・インドネシア等と行い,各国の被害地震への適用と強震動評価を進めている.

2011年東北地方太平洋沖地震の地震動,地殻変動,津波の発生伝播シミュレーション(地震発生から17分後)

2011年東北地方太平洋沖地震の地震動,地殻変動,津波の発生伝播シミュレーション(地震発生から17分後)

開発した地震波伝播シミュレーションコードの並列計算性能.地球シミュレータ(ES)と京コンピュータでの計算性能の比較.

開発した地震波伝播シミュレーションコードの並列計算性能.地球シミュレータ(ES)と京コンピュータでの計算性能の比較.

想定東海地震に対する周期5秒の速度応答スペクトル(左)と地動継続時間(右)の分布地図(「長周期地震動予測地図」2009年試作版より).

想定東海地震に対する周期5秒の速度応答スペクトル(左)と地動継続時間(右)の分布地図(「長周期地震動予測地図」2009年試作版より).

Fig_3.4.4左Fig_3.4.4中

2013年水理破壊実験(港湾空港技術研究所).(左)高強度試験体(弾性応答),(中)標準強度試験体(傾斜),(右)低強度試験体(転倒).

2013年水理破壊実験(港湾空港技術研究所).(左)高強度試験体(弾性応答),(中)標準強度試験体(傾斜),(右)低強度試験体(転倒).

震源過程インバージョンによって求められた国内の被害地震の震源モデル(すべり分布).北東から南西に向かって,2003年十勝沖地震,2008年岩手・宮城内陸地震,2003年宮城県北部の地震,1978年宮城県沖地震および2005年宮城県沖の地震,2007年新潟県中越沖地震,2004年新潟県中越地震,2007年能登半島地震,1923年関東地震,2005年福岡県西方沖の地震.

震源過程インバージョンによって求められた国内の被害地震の震源モデル(すべり分布).北東から南西に向かって,2003年十勝沖地震,2008年岩手・宮城内陸地震,2003年宮城県北部の地震,1978年宮城県沖地震および2005年宮城県沖の地震,2007年新潟県中越沖地震,2004年新潟県中越地震,2007年能登半島地震,1923年関東地震,2005年福岡県西方沖の地震.

遠地・強震・測地・津波データセットの単独インバージョン(左4図)と合同インバージョン(右1図)による2011年東北地方太平洋沖地震の震源モデル(すべり分布).

遠地・強震・測地・津波データセットの単独インバージョン(左4図)と合同インバージョン(右1図)による2011年東北地方太平洋沖地震の震源モデル(すべり分布).